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「クラウドネイティブ」で進化し続ける組織へ
「SRE」の導入のためにCTCの「C-Native」を活用

  • C-Native

持続可能な上下水道事業の実現を目指したICTサービス「WBC(ウォータービジネスクラウド)」を提供するメタウォーター株式会社。ここではそのクラウドネイティブ化に向け、顧客視点のサービスレベル管理アプローチである「SRE」の導入が進められている。そのために活用されているのが、CTCが提供するクラウドネイティブ技術支援サービス「C-Native」だ。採用のポイントは、SRE導入支援を明確に打ち出したサービス内容と、全体の中から一部のサービスだけを切り出して利用できること。SREに関する共通認識を社内で醸成できたのはもちろんのこと、方法論の定着化によってその後の「自走」にも、大きな貢献を果たしている。

課題と効果

課題
  • WBC(ウォータービジネスクラウド)を提供開始してから10年以上が経過し、基盤として利用しているICT技術を刷新し、最新技術を活用したより高度なサービスの提供を求められていた
  • 変化への柔軟な対応を実現するためにクラウドネイティブ化が検討されていたが、そのためには運用方法も変える必要があった
  • クラウドネイティブ環境の運用においてはSREの導入が求められるが、その知見が社内にはなかった
効果
  • SRE導入のために、CTCが提供するクラウドネイティブ技術支援サービス「C-Native」を活用
  • その一連のセッションの中で、SREの基礎知識のレクチャーから、目指すべき姿やクリティカルユーザージャーニーマップの明確化を経て、SLI/SLOを決めていった
  • これに異なる役割を持つ担当者が参加することで、SREに対する共通認識を醸成。方法論を定着させたことで、その後の自走にも貢献している

導入事例インタビューデータ

所在地
東京都千代田区神田須田町一丁目25番地 JR神田万世橋ビル
設立
2008年4月
URL
https://www.metawater.co.jp/新しいウィンドウで開く
  • 浦谷 貴雄氏

    メタウォーター株式会社

    事業戦略本部
    WBCセンター
    WBCサービス部
    副部長

    浦谷 貴雄氏

  • 池田 匠氏

    メタウォーター株式会社

    事業戦略本部
    WBCセンター
    WBCサービス部
    ソリューション開発グループ

    池田 匠氏

持続可能な上下水道事業の実現を目指し先進のICTサービス「WBC」を提供

生活やビジネスに必要な水を安定供給すると共に、都市環境や住環境の衛生維持にも欠かすことができない上下水道。2020年から始まった新型コロナウイルス感染症拡大の後は、公衆衛生の要としてこれまで以上に重要な役割を担うようになっている。しかし昨今では、人口減少に起因する自治体の財政難や技術者不足によって、その整備維持が難しい状況になりつつある。また高度成長期に整備された設備の老朽化や、気象変動による自然災害の増加への対応も、重要な課題となっている。

このような問題に対処するため、多岐にわたる技術とノウハウを融合し、国内外の上下水道や資源リサイクル施設に対する先進ソリューションを展開しているのが、メタウォーター株式会社だ。そしてその1つとして提供しているのが、WBC(ウォータービジネスクラウド)である。

このWBCについて「いつでも・どこでも・だれもが水と共に安心して生きていく社会の実現に向けて、先進のICTサービスをクラウド環境でご提供するものです」と説明するのは、メタウォーター株式会社 事業戦略本部 WBCセンター WBCサービス部で副部長を務める浦谷 貴雄氏。水環境に存在する全てのデータを収集・加工・分析できるようにすることで、持続可能な上下水道事業の実現を目指している、と言う。

WBCの提供がスタートしたのは2011年。まだクラウドそのものが黎明期だった時期に、いち早くクラウド型サービスを提供していたことは注目に値する。しかしWBCで注目すべきポイントは、これだけにとどまらない。他にも大きく3つの特徴があるのだと浦谷氏は説明する。

第1は「水環境プラットフォームを提供」していること。特定の自治体や業者だけではなく、水業界全体の関係者の共通基盤として、情報やノウハウの共有・利活用が可能になっている。

第2は「上下水道に最適なソリューションを提供」していること。上下水道の運営・経営に貢献できるICTサービスを、最適な組織・予算・技術で提供している。

そして第3は「民・官・学パートナーシップを提唱」していること。主なサービス利用主体である自治体のみならず、企業や学術研究機関などのパートナーの参画を募り、知見やノウハウの収集・提供を行っているのだ。

そのサービスラインアップは、大きく2系統に分類できる。1つは「管理系コンテンツ」。これは、設備機器管理、機器の性能劣化シミュレーション、点検業務の効率化などの機能を提供するものだ。「近年では上下水道が劣化しているにも関わらず、大規模な予算や人員の確保が難しいために、すぐには直せないという状況が増えています。このような問題をできるだけ回避するため、アセットマネジメントによって更新計画を平準化すると共に、現場の負担を軽減することが、このサービスの大きな目的になっています」(浦谷氏)。

もう1つは「監視系コンテンツ」。これはIoTとスマートデバイスを活用した遠隔監視を実現するものであり、各施設をクラウド上で監視すると共に、関連する機器のデータの相関関係から異常を検出する相関監視や小型カメラによる画像監視などを可能にしている。

柔軟性に限界があったサービス運営、クラウドネイティブな環境の整備へ

これらのサービスは、上下水道が直面する様々な問題を解決する上で、大きな貢献を果たし続けている。しかし運営から10年以上が経過したことで、新たな課題にも直面していると浦谷氏は指摘する。その1つが、サービス基盤として利用している技術が、昨今のDXの進展に伴う、新たな技術への追随を難しくしている事だ。

「WBCは運営当初から国産クラウド上で稼働しており、現在では300近くの仮想マシンで20以上のコンテンツを提供しています。しかし最近ではPaaSやコンテナなどのクラウドネイティブな技術を活用することが一般的になってきました。クラウドネイティブな技術を活用すれば、これまでで必要だったインフラ管理が不要になり、市場環境やお客様ニーズの変化にも柔軟に対応しやすくなります」。

もう1つは、サービス運営開始当初に想定していたよりも、ユーザー要件が多種多様であることがわかってきたことだ。

「WBCは共通基盤であることをコンセプトに、全ての利用者様に共通のサービスをSaaSとして提供してまいりましたが、自治体様の要件は地域によって多種多様で、管理項目やデータを表示するためのグラフの種類などに関しても、かなり細かいご要望をお持ちだということがわかっています。これまでは多くのお客様に共通するご要望に対しては最大公約数的に機能を決めてバージョンアップを実施し、それ以外は全体に影響を与えない範囲で対応させていただいていました。しかし現状のようにアプリケーションがモノリシックのままでは、お客様の細かい要望に対応し続けることは困難です。この問題を解決する上でも、クラウドネイティブ化は必須だと考えました」。

そこでメタウォーターでは今後WBCのあるべき姿の1つとして、クラウドネイティブの思想を取り入れたプラットフォームの検討を開始した。

運用面で必須となる「SRE」のアプローチ、その円滑な導入のため「C-Native」を活用

左:浦谷氏、右:池田氏

ここで新たな課題として浮上してきたのが、運用管理をどうするかである。クラウドネイティブな環境へと移行するのであれば、運用管理のあるべき姿も、これまでとは大きく異なってくる。短いサイクルで柔軟なリリースを継続的に行うには、DevOpsへの取り組みが必須となるのだ。そしてDevOpsを実現していくには、サービスレベルに対する考え方も変えていかなければならない。従来のように、システム的な観点から可用性を提示する「SLA(Service Level Agreement)」の考え方から、顧客の観点でサービスの信頼性を評価する「SLI(Service Level Indicator)」や「SLO(Service Level Objective)」の考え方にシフトすることが求められるのである。つまり、Google社が提唱する「SRE(Site Reliability Engineering)」を導入する必要があるのだ。

「以前の可用性監視は、CPU使用率やメモリ使用率といったシステム面での指標を対象にしており、SREの考え方は持っていませんでした」と言うのは、メタウォーター株式会社 事業戦略本部 WBCセンター WBCサービス部 ソリューション開発グループの池田 匠氏。そのためSREが必要だと言われても、具体的にどうすべきなのか、皆目検討がつかなかったと振り返る。
「しかしSLIやSLOをうやむやにしたままクラウドネイティブ化を進めてしまうと、その投資がムダになる可能性があります。SRE的な考え方をきちんと理解し、必要な要素を整理すべきだと考えました」。

そのために採用されたのが、CTCが提供するクラウドネイティブ技術支援サービス「C-Native」である。これは、クラウドネイティブ化に必要な「信頼性(SLI/SLO)の定義」「Observability(可観測性)の実現」「自動化推進/Toil(労苦)の削減」「素早い復旧/ポストモーテム」という4つのステップを、段階的に支援するというものだ。メタウォーターはこのうち、最初のステップを支援する「信頼性の定義」を活用したのである。

SREの導入に際してC-Nativeを採用した理由について「SRE導入支援をはっきりと打ち出したサービスは他になく、ステップバイステップの支援を切り出して提供してくれることも魅力的でした」と浦谷氏。またSREについて明確に整理して説明してくれたことも、納得感が高かったと説明する。CTCからC-Nativeの提案・説明が行われたのは2023年6月。その翌月には採用を決定している。

異なる役割の担当者が参加し共通認識を醸成、方法論の定着化で「自走」にも大きく貢献

C-Nativeでまず行われたのは「SREとは何か」に関するレクチャー、目指すべき姿の明確化、そしてSLI/SLOを設定する対象サービスの絞り込みである。ここで共通認識を醸成した上で、対象サービスの「クリティカルユーザージャーニーマップ」を、複数回のワークショップで明確化。さらにこのジャーニーをベースに、具体的なSLIやSLO、それらの評価期間の検討が進められていった。これら一連のセッションは2023年9月に完了。メタウォーターからは、インフラ担当者、アプリ開発担当者、サービスオーナーが一堂に介し、3つの対象システムに対するSLI/SLOが合計15種類設定されたと言う。

「C-Nativeを利用してよかったのは、SREの基礎的なところから積み上げて教えてもらえたことです」と池田氏。またCTCのコンサルタントがWBCを実際に利用した上で、対象サービスの絞り込みやクリティカルユーザージャーニーに関する考え方を示してくれたことも、高く評価していると語る。
「そのため、自社サービスにどのようにSREを適用すべきなのか、明確にイメージできるようになりました」。

その一方で「インフラ担当者やアプリ開発担当者、サービスオーナーといった、異なる役割を持つ関係者が一緒に参加したことで、DevOps実現に向けたチームビルディングにも役立ちました」と言うのは浦谷氏。このようなアプローチは、これまでのITプロジェクトの常識では、考えにくいものだったと指摘する。「これによって異なるロールを持つ人たちが、SREを共通言語として使えるようになり、意識の統一を図ることが可能になりました。またSLI/SLOそのものをコンサルタントが提示するのではなく、その考え方や方法論を定着させてくれたことで、その後の『自走』にも大きな貢献を果たしています」。

下図にてご提供サービス全体の流れを示します。お客様はInputのご対応(必要資料のご提出、QA確認対応、ワークショップへの参加、トライアル環境のご用意など)が必要となります。ご協力の程、お願い致します。

C-Nativeの満足度は非常に高いと浦谷氏。ワークショップ形式のコンサルティングには「後に残りにくい」ものも少なくないが、今回は十分な成果が残されており、現在も継続してSLI/SLOの検討が社内で進められていると言う。「クラウドネイティブ化は段階的に進めていく計画ですが、その度にC-Nativeで実施した内容を社内で行い、新たなSLI/SLOを決めていくことになるでしょう。現時点で既に、30~40程度のSLI/SLOが見えています」。

次のステップとして計画されているのは、SREの実現に必要な「Observabilityの仕組みの実装」と「自動化の推進」だ。ここでもCTCの支援を期待していると言う。

「C-Nativeを利用して得られた最大の気づきは、SREは決して特別なことではなく当たり前のことなのだ、というものです。クラウドネイティブ化でシステムが複雑化すれば、従来型の発想では管理が複雑になりすぎてしまいます。しかしお客様が何を求めているのかに立ち戻れば、よりシンプルに管理を行うことが可能になる。今ではそれが、関係者の共通認識になっています」。

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