コラム

CTC自社導入システム

全社共通基準でSI案件を一元管理 新プロジェクト管理システム「PJNAVI」を構築

更新

CTCが全社共通基準でSI案件を一元管理する新システムを構築しました。

  • PJNAVI

従来のプロジェクト管理は、個々のプロジェクトマネジャーへの依存度が高いため、全社としてタイムリーな状況把握やノウハウの共有が困難だった。この課題を解決するべく構築したのが、新プロジェクト管理システム「PJNAV(ピージェイナビ)」である。プロジェクトの現状と今後を“見える化”し、進捗や採算の一元管理を実現する。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 情報システム部 児嶋 裕

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 情報システム部
児嶋 裕

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 食品・卸システム部 天辰 哲朗

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 食品・卸システム部
天辰 哲朗

プロジェクトが、「今どうなっているのか」「今後どうなるのか」を“見える化”し、作業の進捗状況ならびにコストの予実管理を容易に

テクノロジー・リーディング・カンパニーを標榜するCTCにとって、コンサルティングから技術・製品の調達、インフラ構築からシステム開発、データセンターの運用・保守まで、トータルソリューションを提供するSI(システム・インテグレーション)ビジネスは、自社のあらゆる事業を牽引する中核的な位置づけにある。

このSIビジネスをさらに加速すべく着手したのが、プロジェクト管理体制の強化だ。情報システム部 アプリケーションシステム第2課の課長を務める児嶋 裕は、その背景として抱えていた課題を次のように語る。

「ITシステムに対するお客様の要求が高度化・複雑化するなか、CTCではシステム開発プロセスやプロジェクト管理手法の標準化を進めてきました。ただ、それをどういう“やり方”で遂行するのかは、個々のプロジェクトマネジャーに任されており、ノウハウが属人化していたのです。また、ラインの管理者がプロジェクトの現状をリアルタイムに把握することも困難でした」

こうしてCTCが2012年4月より要件定義を開始し、同年10月より開発を進めてきたのが、新プロジェクト管理システム「PJNAVI」である。

「プロジェクトが、『今どうなっているのか』『今後どうなるのか』を“見える化”し、作業の進捗状況ならびにコストの予実管理を容易にすることを狙いとするシステムです」(児嶋)

もっとも、CTCは当初から自社開発を前提としていたわけではなく、パッケージ導入も視野に入れて様々なベンダー製品の比較検討を行ってきた。しかし、WBS(Work Breakdown Structure:作業分割構成)まではサポートしていても、SI案件全体やプロジェクト単位、WBSで分割されたタスク単位で採算や進捗をリアルタイムに管理するための機能や人事システムや受発注システムとの連携など、総合的な要求に応えるパッケージはなかなか見当たらなかった。こうした経緯からCTCは、プロジェクト管理システムを自社開発する道を選んだのである。

システム構築コスト抑制とスケジュールの巻き返しに大きく貢献した「Red Hat JBoss Enterprise Application Platform」「Oracle Database Appliance」

自社開発を行うとなれば、そのシステムはある意味で、お客様に対してCTCが推奨するベストプラクティスを示す“ショーケース”にもなる。そこでCTCは、SI開発基盤としてのフレームワークやナレッジベースの整備による標準化推進、品質管理活動などを通じて各事業グループの支援を行っているSIビジネス企画推進室を、PJNAVI構築プロジェクトのオーナーに任命。データベースや仮想化技術などのインフラ構築に関する社内の専門組織を初期段階から巻き込むとともに、お客様の間で関心が高まっているOSS(オープンソースソフトウェア)や海外オフショアなども積極的に活用していくという基本方針を打ち立て、構築に臨んだ。

特に大きな課題となったのが、システム構築コストの抑制である。「システムに必要とされる機能を、有償ソフトウェアを次々に積み重ねる形で実装していくと、コストはどんどん膨らんでしまいます。社内プロジェクトとして限られた予算の中で、スモールスタートする必要がありました」と児嶋は振り返る。

そこで着目したのが、「JBoss Enterprise Application Platform」である。Java EE 6に準拠し、標準でクラスタリング機能、メッセージング機能、キャッシュ機能、開発フレームワークなどを備えた、OSSベースのエンタープライズ向けアプリケーションサーバだ。

「一般的にOSSは無償もしくは低価格のライセンスで使えるというメリットがある反面、商用ソフトウェアと比べてサポートが手薄になるのがネックです。その点、JBoss Enterprise Application PlatformはOSSをベースとしつつも、RedHatによるベンダーサポートやコミュニティを通じた情報提供が充実しており、なおかつCTC社内にも実績に基づいたナレッジが豊富に蓄積されています。この人的リソースを含めた基盤を活用することで、オフショアを含めた開発体制を確立することができました」(児嶋)

もっとも、いかなるプロジェクトであれ、常に思い描いた理想どおりに物事が進んでいくわけではない。実のところCTCも、PJNAVI構築プロジェクトがスタートした時点から、多くの困難に直面してきたという。

「お客様の新規SI案件が年間で最も集中するのは1~4月であり、そのタイミングを逃さないためには、2014年1月までの短い期間でPJNAVIをカットオーバーする必要がありました。しかし、多くのSI案件を抱えている現場のプロフェッショナルを社内プロジェクトにアサインするのは容易なことではなく、インフラ構築作業に着手出来たとき、すでに2か月のスケジュール遅れが生じていたのです。」と児嶋は振り返る。

こうした危機的な状況を“巻き返す”うえで、大きな貢献を果たしたのが、「Oracle Database Appliance」である。

Oracle Database Appliance は、オラクルのデータベースとハードウェアを一体化したエンジニアドシステムであり、シンプルかつ低コストで高可用性&高性能なデータベース基盤を実現する。CTCは、注力製品のひとつであったこのOracle Database Applianceを、PJNAVIでも活用することにしたのである。そのメリットを実際に構築に従事した食品・卸システム部第2課の天辰 哲朗に聞いた。

「最初からパラメータが最適化された形で提供されるため、通常では高度な専門知識が要求されるデータベースの構成設計がほとんど手間いらずに済み、RAC(Real Application Cluster)環境まで容易に構築することができました。仮にOracle Database Applianceを利用せず、個別にデータベースを構築していた場合、サーバ構成からネットワーク、ストレージまで含めた設計、インテグレーション、テスト、チューニングが必要となり、相当な時間とコストを費やしていたと思います」(天辰)

さらに、CTCがクラウドインフラサービス「cloudage(クラウデージ)」の提供を通じて培ってきた仮想化技術や、ミッションクリティカルな大規模システム向けのマネジメントサービスを事業とするCTCテクノロジーの保守・運用ノウハウなどもそこに加わり、安定したシステム運用を実現することができた。

各プロジェクトの進捗状況や採算などをタイムリーに共有することが可能となり、プロジェクトに起こっている問題点の早期発見を実現

予定どおり2014年1月に稼働を開始したPJNAVIは、プロジェクト管理の計画フェーズにおける「WBS作成・登録」「採算原価見積登録」、実施フェーズにおける「モバイル対応の稼働実績入力」「進捗登録機能によるタイムリーな状況把握」「EVM分析によるプロジェクトの定量評価」「計画とずれが生じた場合のアラート発信」といった機能を実装。プリセールスからプロジェクト開始/終了、瑕疵にいたるまでを網羅した、全社共通の基準によるSI案件の一元管理を実現した。

「PJNAVIは、プロジェクト管理の標準を定め、その基準に沿ってSI案件を可視化します。これによって各プロジェクトのマネジャーからラインの管理者まで、関係者全員が進捗状況や採算などの情報をタイムリーに共有することが可能となり、プロジェクトに起こっている問題点を早期に発見しやすくなりました。また、報告書作成などの現場の負荷軽減にも貢献しています」(児嶋)

もちろん、PJNAVIの使い勝手そのものも非常に良好だ。

「PJNAVIがカットオーバーしてからの1か月間で、すでに800~900件の新規SI案件が登録され、毎日30件以上のプロジェクトが追加されている状況です。このように一気に利用が加速したのですが、性能面でも問題はまったく起きていません。現場のプロジェクトメンバーからも『稼働実績登録のレスポンスは、これまで使ってきたツールよりも格段に速く、快適になりました』といった評価の声が寄せられています。JBoss Enterprise Application PlatformがOSSに期待されるコストパフォーマンスだけでなく、IT基盤の安定稼働に貢献できるプロダクトであることや、スモールスタートでありながら高性能なデータベース基盤であるOracle Database Applianceを採用した効果と考えています」(天辰)

入力や確認作業を終えると、次に行うべき工程をプッシュするなど、プロジェクト管理そのものをガイドする仕組みを組み込む

こうした成果を踏まえ、CTCはPJNAVIのさらなる拡張を進めていく考えだ。

より粒度の細かいWBSならびにEVMによるリアルタイムの進捗管理を追求し、そこで不足している機能があればどんどん追加していく。

PJNAVIというシステム名称にも込められているナビゲーション機能を充実させていくことも、今後に向けた大きなテーマである。

「1つの入力や確認作業を終えると、次に行うべき工程をプッシュするなど、プロジェクト管理そのものをガイドする仕組みを組み込んでいきたいのです。私たちは現在、プロジェクトマネジャーや営業担当者、プロジェクトメンバー、アシスタント、プロジェクトを管轄するSE部署のライン長など、それぞれの役割に応じた操作教育を行っています。この活動とナビゲーション機能を複合することで、プロジェクト管理のナレッジとノウハウの共有化をさらに前進させていきます。これにより、例えば初めてプロジェクト管理を任された若いマネジャーであっても、CTC標準の高品質のサービスをお客様にスムーズにお届けできるようにしたいと考えています」(児嶋)

また、操作・運用面の改善として、PJNAVIと基幹システムの連携強化に向けた検討を開始している。

「PJNAVIを操作しているプロジェクトマネジャーが、例えば基幹システムの発注機能を利用したいという場合、現時点では2つのシステムに別々にアクセスして使い分けなければなりません。これをPJNAVIに統合し、シームレスにオペレーションできるようにできないかと考えています。基幹システム自体も次の更新時期に向けた拡張プロジェクトが進行中にあり、その動きと同期をとりながら、具体的な実現方法を固めていきます」(天辰)

「ぜひ自社でもPJNAVIを使わせてほしい」という要望がグループ会社からも寄せられており、CTCは機能と規模の両面からPJNAVIの拡張を進めていく計画だ。

PJNAVI システム構成図

PJNAVI システム構成図

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