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IT Terminology

eスポーツ

昨年、日本は「eスポーツ元年」と言われました。eスポーツという言葉を聞く機会は増えているのではないでしょうか。
しかし、各種調査によれば、言葉自体は知られるようになっているものの、詳細はあまり知られてはいないようです。
eスポーツとは一体何か。どこまで盛り上がっているのか。海外の驚くべき最新事情と共に、その現状を概説します。

文/近藤 雄生

予選参加者4,000万人、優勝賞金3億円

2019年7月、『フォートナイト』という人気バトルロイヤルゲーム(複数人が最後の一人になるまで闘うゲームのジャンル)のワールドカップの決勝戦がニューヨークで開かれました。

この大会、オンラインでの予選に参加したのは4,000万人にも上り、その中から勝ち上がった100名がニューヨークでの決勝戦に参加しました。30ヵ国以上にも及んだ決勝戦進出者の中で、優勝を勝ち取ったのはアメリカ出身の16歳の少年。その賞金が300万ドル(約3億円)であることにも驚かされますが、決勝に進んだ100人が皆、最低5万ドルは手に入れられることや、決勝戦の観戦者が優に数百万人にも上ったことからも、その規模のすさまじさが伺えます。

イギリスの有力紙『The Guardian』でもこの大会については報じられ、その記事によれば、2位になったのはイギリス出身の15歳の少年で、彼はゲームをやり過ぎだと母親の注意を受けながらもひたすらゲームをやり続け、その結果として、約1.2億円の賞金を手にしたとのことでした。

40代である筆者にも少年の母親同様、ゲームばかりやっていては…という気持ちがあります。しかし、そんな考えは時代遅れだと言われても仕方ないほど、今やゲームは、世界が注目する“競技”としての様相を呈してきているのです。
2022年に開催される第19回アジア競技大会では、既に正式種目となることが決まっていて、2024年のパリオリンピックでも正式種目になることが目指されている―。それが、eスポーツの現状なのです。

“ゲーム=eスポーツ”ではない

では、改めて「eスポーツ」とは何なのでしょうか。

(ビデオ)ゲーム=eスポーツとも思われがちですが、実際はそれほどシンプルではありません。例えば「一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)」は、あるゲームがeスポーツとして公認されるための条件として次の4点をあげています。

  1. ゲーム内容に競技性が含まれること(競技性)。
  2. ゲームとして3ヵ月以上の運営・販売実績があること(稼働実績)。
  3. 今後もeスポーツとして大会を運営する予定があること(大会の継続)。
  4. eスポーツとしての大会の興行性が認められること(興行性)。

つまり、数あるゲームの中でも、競技性があり、観戦目的の客が集められ、継続的に大会が開ける、といった条件をクリアしたものだけがeスポーツという範疇に入れます。そして、同様な条件から国際的にもeスポーツと認められたゲームについてのみ、大会が開催され、オンライン上、または実際の会場に観戦者が集うことでeスポーツが成立するのです。

現在eスポーツとしてプレイされるゲームの中で最もプレーヤー人口が多いとされるのは『リーグ・オブ・レジェンド』(5人ずつのチームで戦い合う対戦型のゲーム)で、2016年には月間アクティブユーザーが1億人を超えました。簡単に比較はできませんが、全世界のテニスの競技者人口が1億人とされることを考えると、eスポーツの広がりの大きさがイメージできるかもしれません。

技術の発展と共に環境が整った

現在行われているeスポーツの大会は、90年代後半にアメリカのサンフランシスコなどで始まりました(プロフェッショナル・ゲーマーズ・リーグ(PGL))。それはちょうど、インターネットが普及し始めた時代に当たり、通信技術の発達とも相まって、ゲームは空間を超えて世界中の人が一緒にプレイできるものになっていきました。「eスポーツ」という言葉も、2000年頃から使われるようになったと言われています。

更にeスポーツが競技として発展する上で大きな意味を持ったのが、オンライン観戦のためのプラットフォームTwitchの登場でした。Twitchが2011年に設立され、eスポーツの試合やイベントを、インターネットを通じて観戦・視聴する環境が整ったことで、eスポーツの人気は一気に拡大し、“スポーツ”らしさを獲得していったのです。アメリカでは、現状で既にeスポーツは一つの産業と言えるレベルにまで発展しています。スポーツ専門チャンネルESPNでもeスポーツは他の競技と並ぶコンテンツになっていて、チームの動向などが報じられているのです。

また、大会の規模も急激に拡大を続けています。特に成長が目覚ましいのが、『Dota2』という対戦型のチームゲームの大会「Dota2-The International」です。賞金総額は2013年の時点で既に約3億2,000万円に達していましたが、年々上昇を続け、2018年の大会では28億円を超え、優勝賞金はなんと約12億円にも上っているのです。

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