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|特集|リーダーとして、今求めるべきもの

【特別対談】西本 智実 × 菊地 哲

一人ひとりと向き合うリーダーに

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西本さんは大阪音楽大学をご卒業後、ロシア国立サンクトペテルブルク音楽院オペラ・シンフォニー指揮科に留学され、キャリアを積まれました。
菊地
ロシアをはじめとしたいくつもの楽団で指揮をつとめられ、現在は、ご自分のオーケストラを率いられる立場かと思います。同じ指揮をするのでも、どのような違いがあるのでしょうか?
西本
海外のオーケストラ公演に客演の指揮者として招かれる時は、一つの短期的なプロジェクトとしての仕事をします。一方、ポストが付きますとその組織の中長期的な目標を見据えて取り組みます。また芸術監督という現在のイルミナートの立場になると、よりオーガナイザーの役割が強くなります。指揮をする上で常に一人の演奏家として音楽に向き合うのは同じですが、指揮以外の仕事も増えます。例えば、人事の最終決定も行いますのでとても難しい仕事です。
菊地
ある教えに、10人の組織があると、1人はあなたに反発し、2人はあなたのことをよく思っている、あとの7人はどちらでもない、という話があります。実際、組織を率いてみるとそういうところがあると感じます。そうした中で、トップの重要な仕事の一つは、方向性を示すことだと思います。私であれば、3年後、5年後に会社がどこに向かうのかを示さなければならない。まさに西本さんのおっしゃる中長期的な計画ですね。それははっきりさせないといけないし、間違ったら大変です。
そして、その計画を実現させるためには、社長である自分の考えと社員の思いを一つにすることが重要です。社員には、こちらの考えを理解してもらった上で、この会社で働きたいって思ってもらわないといけません。そのために私は、できるだけ社員一人ひとりと直接話すということを意識し、心掛けています。
菊地 哲

菊地 哲

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 代表取締役社長。1976年に伊藤忠商事に入社後、エネルギー本部、ロンドン、オマーン駐在を経て、金属・エネルギー経営企画部長、業務部長、常務取締役、生活資材・化学品カンパニープレジデントなどを歴任。2012年より、現職。

──
菊地社長は、以前、社員の方々の誕生会をされたというお話を伺っています。
菊地
はい、総人数にすると、2,500人程度でしょうか。その月が誕生月の人を一回に50人ぐらいずつ集まってもらって月2回、2年間かけて行いました。管理職にはそれとは別に話す機会を設けています。というのも、私が新入社員として会社に入った時、社長の姿など全く見えなかったんです。それに違和感を覚えたことをよく記憶しています。だから自分が社長になったら、自分がどういう人間か、何を考えているのかを社員の皆さんに知ってもらって、思いを一緒にしていきたいなという気持ちがありました。それには誕生会っていいんじゃないかなと思ったんです(笑)。音楽の場合も、全員の意識を一つにして本番に臨まないといけないですよね。
西本
お誕生会は、素晴らしいですね。作品を創る時、意識を一つにすることは大切です。指揮者と楽団員は一緒に演奏をしていますから、お互いの仕事ぶりには直面していますが、関係性はどうしても1対100という感じになってしまいます。それをなるべく1対1で向き合えるよう、お互いの意思を理解し合えるような関係でいることを心掛けています。一人ひとりの技術がより生き、奏者自身が自発的に「こうしたい」という明確な音楽的プライドを持ち続ける、そんな個々の集団を目指しています。

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