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|特集|リーダーとして、今求めるべきもの

【特別対談】西本 智実 × 菊地 哲

既にあるものに新しい命を吹き込む

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おふたりは、今リーダーとしてどういったお気持ちでお仕事に取り組まれ、今後どのようなことを目指されていますでしょうか。
西本
芸術を通して表現することに身を捧げたいという気持ちは年々増しています。2007年からスイスのダボス会議※3を始め、各国の様々な分野の方々とお会いする機会を与えていただき、もう少し自分個人の目標というものを超えて社会に貢献したい、という考えが強まりました。
その後、これまで一緒に仕事をした奏者たちからオーケストラを作って欲しいと話があり、それがイルミナート立ち上げの発端でもありました。重責に戸惑いもありましたが、芸術や文化を通して、社会に貢献できることがあるなら、自分を捧げたいとの思いが高まり、決心に至りました。
やるからには世界的に独創的に!そのような思いが強まった結果、音楽という枠組みを超え、総合芸術としての舞台創りにも着手しました。クラシックが私のベースですので、オペラ・バレエ・オーケストラを軸に、最新工学や科学を含む様々な分野の方々とも共創しながら総合芸術を生み出す団体として積極的に新しい試みを重ねています※4
菊地
CTCグループは「明日を変えるITの可能性に挑み、夢のある豊かな社会の実現に貢献する」ことを使命として、変化の激しいIT業界の中で存在感を高め、社会貢献をしながらイノベーティブなものにチャレンジを続けています。総合芸術への思いと共通するものを感じています。
西本
まさにイノベーションです。イルミナートフィルでは今"INNOVATION OPERA"と銘打って、「ストゥーパ ~新卒塔婆小町~」という舞台に取り組んでいます。この舞台は「卒塔婆小町」※5の物語をもとに私自身で脚色台本を書いたものです。題材は仏教色の濃い古典作品ですが、原作を読み込んでいくうちに、これはキリスト教をはじめ、様々な宗教の教えと重なる感覚になりました。日本でいう"幽玄"の観念は、表現としての"通訳"ができさえすれば、より広く世界と共有できるという思いがあります。その一つのアプローチとして、ヨーロッパの楽器を使って、アジアの観念をうまく伝えられないかと考えました。例えば西洋では、音はより正確に奏でるという指針で、楽器の改良が進み、音楽もより多声的に展開的に大編成となり、複雑に入り組みながらも調和を目指しました。和楽器の場合は、例えば尺八なら、大きさ太さも一つひとつ異なる生の竹です。他に一つとしてない。息づかい一つで精神世界を表現し、より内面的な世界を与えてくれます。
菊地
ITの世界では今は"オープンイノベーション"という言葉が飛び交っていて、日本の多くの会社で、「イノベーション」という言葉を冠した組織が次々に立ち上がっています。そして皆さん、IoT※6や人工知能を使って何か新しいことをやろうと考えています。
しかし、イノベーションというのは本来、手品のように何か全く新しいものを作り出すことではないんですね。既にあるものを分解し、新たな技術や視点を入れて再構築することです。そういう意味で西本さんの舞台はまさにイノベーションですし、そのように、これまであったものにしっかりと目を向けて、新たな命を吹き込むような仕事こそがとても重要になっていると感じます。
西本氏
  1. スイス・ダボスで行われる、世界経済フォーラムの年次総会のこと。各国各分野のトップリーダーが集まり、様々な問題について議論する場となっている。西本さんは、2007年にヤング・グローバルリーダーに選出され参加している。
  2. 西本さんは、玉置浩二さんや高見沢俊彦さんといった歌手と度々共演をしている。また、脳科学者の中野信子さんとは、音楽を科学的に解明しようというコンサートをシリーズで行っている。
  3. 「卒塔婆小町」
    絶世の美女といわれた小野小町が年老いて自らの人生を振り返るという観阿弥作の能楽作品。
  4. IoT
    Internet of Things (モノのインターネット)の略。家具や家電から産業機械まで、あらゆる「モノ」がインターネットに接続され、そのネットワークを通じて情報交換や制御が可能になる仕組みのこと。

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