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能動的サイバー防御とは?|関連する法律や必要な対応などを解説

本記事では、能動的サイバー防御の概要や現在政府が検討している法律、具体的に取るべき対応などを解説します。自社での対応方法が気になっている方はぜひ最後までご覧ください。

- 能動的サイバー防御とは
- 能動的サイバー防御関連法が制定された背景
- 能動的サイバー防御を導入するメリット
- サイバー攻撃を受けるリスクを抑えられる
- 事業継続性や信頼性の向上につながる
- サイバー対処能力強化法及び同整備法(能動的サイバー防御関連法)とは
- サイバー対処能力強化法
- サイバー対処能力強化法整備法
- 能動的サイバー防御関連法を遵守するために必要な対応
- 特定重要電子計算機の導入に関する届出
- 特定重要電子計算機のインシデントに関する報告
- 政府への通信情報の提供
- 政府からの情報に基づくセキュリティ対応
- 能動的サイバー防御関連法に対応する際のポイント
- 社内のセキュリティ対策を見直す
- サイバー攻撃の動向を踏まえた社員教育を行う
- 罰則規定に注意する
- 改正情報がないか確認する
- 能動的サイバー防御に関するよくある質問
- 能動的サイバー防御関連法はいつから施行される?
- 能動的サイバー防御のデメリットは?
- 能動的サイバー防御関連法に対応してリスク低減につなげよう
能動的サイバー防御とは

能動的サイバー防御とは、サイバー攻撃の予兆を事前に検知して、あらかじめ対策する防御法です。2025年5月には、政府が進める能動的サイバー防御の取り組みに関連して、サイバー対処能力強化法及び同整備法(以降、本記事ではこれらを総称して「能動的サイバー防御関連法」と記載)が成立・公布されました。
政府と基幹インフラ事業者が情報を共有し、能動的サイバー防御を実現する取り組みが進められています。
そのため、基幹インフラ事業者は関連法を事前に確認し、必要な対応を取る必要があります。
能動的サイバー防御関連法が制定された背景
能動的サイバー防御関連法が制定された背景には、サイバー攻撃による被害が年々増加している状況があります。内閣官房が発表した「サイバー対処能力強化法及び同整備法について」という資料の以下のグラフからも、サイバー攻撃の被害が増大していることがわかります。

出典:「サイバー対処能力強化法及び同整備法について」(内閣官房ホームページ)
また、ランサムウェア(データの復元と引き換えに身代金を要求するソフトウェア)の埋め込みや、重要インフラへの侵入など、サイバー攻撃の手口も高度化しています。攻撃を受けてから対処しようとした場合、すでに被害が広がっている可能性があります。
そこで欧米主要国では、攻撃の兆候を把握し、被害発生前に対処する「能動的サイバー防御」の考え方が進展し、関連する取り組みが進められました。こうした国際動向とともに、日本国内でも脅威認識があったことから、対処能力の強化を目的に能動的サイバー防御に関する法律が制定されました。
能動的サイバー防御を導入するメリット
ここからは、能動的サイバー防御を導入するメリットとして、以下の2つを解説します。
サイバー攻撃を受けるリスクを抑えられる
事業継続性や信頼性の向上につながる
メリットを把握することで、能動的サイバー防御に関する法律への対応を単なる義務ではなく、自社の価値を高める前向きな施策として考えられるでしょう。
サイバー攻撃を受けるリスクを抑えられる
能動的サイバー防御は、攻撃を受けてから対応するのではなく、攻撃の兆候を早期に検知し、被害が発生する前の段階で対処します。これにより、マルウェア感染や不正アクセスの拡大を防ぎ、システム停止や情報漏えいといった重大インシデントのリスクを低減できる点がメリットです。
万が一攻撃を受けた場合でも、事前に検知・分析体制が整っていれば、原因特定や復旧までの時間を短縮でき、被害を最小限に抑えられます。
事業継続性や信頼性の向上につながる
能動的サイバー防御の考え方を取り入れることは、自社のセキュリティ体制を平時から強化することにつながります。
脅威情報の収集・分析、ログ監視の高度化、インシデント対応フローの整備などを進めることで、組織全体のレジリエンスが向上します。
その結果、サイバー攻撃による事業停止リスクを抑え、顧客や取引先からの信頼確保にもつながります。
サイバー対処能力強化法及び同整備法(能動的サイバー防御関連法)とは
ここからは、政府が推進する能動的サイバー防御の実現に向けて整備された、サイバー対処能力強化法及び同整備法について解説します。
法律の内容を把握することで、自社が法的に求められる対応を理解できます。法対応の漏れがないよう、あらかじめ確認しておきましょう。
サイバー対処能力強化法
サイバー対処能力強化法は、国と基幹インフラ事業者との連携の内容を規定した法律です。大きく分けて、以下の3つの項目について定めています。
項目 | 内容 |
|---|---|
官民連携の強化 | 基幹インフラ事業者による、重要設備の導入・インシデントに関する報告や、国と事業者の情報共有などについて定めている。 |
通信情報の利用 | 国が基幹インフラ事業者から通信情報を取得し、分析できる旨を定めている。 |
分析情報・脆弱性情報の提供等 | 基幹インフラ事業者から取得した情報の分析結果を、関係行政機関に提供できる旨を定めている。 |
基幹インフラ事業者が対応すべき内容が定められているため、入念に確認しましょう。
サイバー対処能力強化法整備法
サイバー対処能力強化法整備法は、サイバー攻撃の無害化や、各種体制の整備について定めた法律です。具体的には以下の2つの項目について定めています。
項目 | 内容 |
|---|---|
アクセス・無害化措置 | サイバー攻撃の被害を阻止するため、警察や自衛隊が可能な措置の内容を定めている。 |
組織・体制整備等 | 国家サイバー統括室の設置や、政府を挙げた取り組みなど、能動的サイバー防御の促進について定めている。 |
基幹インフラ事業者に直接関係する内容は少ないですが、能動的サイバー防御の全体像を理解するため、概要は把握しておきましょう。
能動的サイバー防御関連法を遵守するために必要な対応
ここからは、能動的サイバー防御関連法を遵守するために必要な対応として、以下の4つを解説します。

必要な対応を把握しておかないと、関連法に違反するリスクがあるため、必ず確認しておきましょう。
特定重要電子計算機の導入に関する届出

基幹インフラ事業者が特定重要電子計算機を社内に導入した場合、製品名や製造者名などについて、事業所管大臣への届出が必要です。特定重要電子計算機とは、サイバー攻撃を受けた際に、重要な設備の停止につながり得る機器です。該当する具体的な機器は、政省令の策定を通じて明確化するとされています。
また、特定重要電子計算機の製品名や製造者などに変更があった際も、その旨を届け出る必要があります。
基幹インフラ事業者は、あらかじめ社内の機器のリストを作成し、特定重要電子計算機に該当する際にすぐ届け出られるよう準備しましょう。
特定重要電子計算機のインシデントに関する報告
導入した特定重要電子計算機に異常があった場合、事業所管大臣及び内閣総理大臣への報告が必要です。サイバー攻撃の明確な被害があった場合だけでなく、不審なアクセスを観測した際も報告する必要があります。
インシデントの報告を迅速に行うには、手順をあらかじめマニュアル化することが大切です。マルウェアの感染や、不正アクセスの痕跡などを発見したケースを想定し、現場のシステム担当者がどのように対応すべきかを決めておきましょう。
政府への通信情報の提供

基幹インフラ事業者は、政府と協定を結んでいる場合、国外からの通信情報を提供するように求められた際は応じなければなりません。また、内閣総理大臣から協定締結のための協議を求められた際は、正当な理由がない限り応じる必要があります。
協定を締結するかは任意であるため、協議を打診された際に備えて、どう対応するかを話し合っておきましょう。
政府からの情報に基づくセキュリティ対応
基幹インフラ事業者は、政府から危険な通信先に関する情報が提供された場合、自社のセキュリティの強化が求められます。
事業所管大臣は、国外からの通信の分析結果を、必要に応じて基幹インフラ事業者に提供できます。たとえば、不審なアクセスを行った通信先について周知される可能性があるでしょう。この場合、基幹インフラ事業者は該当するIPアドレスをブロックしたり、自社にアクセスされていないか調査したりする必要があります。
政府からの情報にスムーズに対応できるよう、情報の受領から実際の対策を講じるまでの業務フローや、担当者などを決めておきましょう。
能動的サイバー防御関連法に対応する際のポイント
ここからは、能動的サイバー防御関連法に対応する際のポイントとして、以下の4つを解説します。
社内のセキュリティ対策を見直す
サイバー攻撃の動向を踏まえた社員教育を行う
関連法の罰則規定に注意する
関連法の改正情報がないか確認する
それぞれのポイントを把握することで、よりスムーズに能動的サイバー防御関連法に対応できるため、事前に確認しておきましょう。
社内のセキュリティ対策を見直す
社内のセキュリティ対策を見直し、現状の脆弱性をなくすことで、将来政府からより強固な対策を求められた際に、スムーズに対応しやすくなります。
導入中のセキュリティ監視ツールや、ファイアウォールの設定を見直し、アップデートできる場合は速やかに対応しましょう。各システムのログイン方法に関しては、パスワードの入力に加えて指紋認証やSMS認証などを取り入れ、より強固な設定にできないか検討すると効果的です。
サイバー攻撃の動向を踏まえた社員教育を行う
能動的サイバー防御に関連する法令に基づき、政府からサイバー攻撃の最新情報を受け取る可能性があります。その際は、社内メールを送付したり、セキュリティ研修を実施したりして、すべての社員に情報を共有するように心がけましょう。
最新の手口について教育することで、政府からセキュリティ強化を求められた際に「なぜこの対策が必要なのか」という意図が現場に伝わりやすくなります。結果として、企業全体でのセキュリティ対策をスムーズに実行できます。
罰則規定に注意する
サイバー対処能力強化法に定められている罰則規定に抵触すると、罰金が科される可能性があります。罰則が科される行為とペナルティの内容は以下の通りです。
罰則が科される行為 | 罰則の内容 |
|---|---|
基幹インフラ事業者がインシデント報告を行わず、是正命令を受けても対応しない場合 | 200万円以下の罰金 |
基幹インフラ事業者が、インシデント報告に関連する資料の提出を求められた際に、対応しない場合 | 30万円以下の罰金 |
通信情報を保有する行政機関の管理を侵害して、情報を取得した場合 | 3年以下の拘禁刑又は150万円以下の罰金 |
出典:「サイバー対処能力強化法及び同整備法について」(内閣官房ホームページ)(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cyber_anzen_hosyo_torikumi/pdf/setsumei.pdf)
罰則規定に抵触するとペナルティが科されるほか、自社のイメージを大きく損ない、顧客との取引停止につながるリスクもあります。関連法の罰則規定は全社員に周知し、抵触するリスクをしっかり抑えるように心がけましょう。
改正情報がないか確認する
能動的サイバー防御の関連法に改正情報がないか、日頃から確認することで、求められる対応の変更にすぐ気付きやすくなります。
能動的サイバー防御に関する法律は2025年に公布されたばかりであり、今後の状況によって改正される可能性は十分にあります。基幹インフラ事業者が必要な届出や、義務付けられる対応も変化する可能性があるでしょう。改正されたことに気付かないままでいると、知らずに法律に違反し、罰則を受けるリスクがあります。
可能な限り、政府の公式発表やニュースサイトなどを毎日確認し、法改正がないかこまめにチェックすることが大切です。
能動的サイバー防御に関するよくある質問
ここからは、能動的サイバー防御に関するよくある質問として、以下の2つを解説します。
能動的サイバー防御関連法法律はいつから施行される?
能動的サイバー防御のデメリットは?
よくある質問と回答を把握することで、能動的サイバー防御に関する理解を深められます。
能動的サイバー防御関連法はいつから施行される?
能動的サイバー防御に関する法律は、公布から1年6ヶ月を超えない範囲で施行される予定です。公布されたのが2025年5月であるため、2026年11月までには施行される見込みです。
基幹インフラ事業者は、施行されてからスムーズに対応できるよう、関連法で義務付けられている事項を理解しておきましょう。特定重要電子計算機の届出や、政府からの情報の受け取りなど、対応事項ごとに担当者を決めることも大切です。
能動的サイバー防御のデメリットは?
能動的サイバー防御のデメリットは、外部の通信を過剰に防衛してしまう恐れがある点です。たとえば、高度なサイバー攻撃に対処するため、AIを活用したシステムを導入すると、正常なアクセスを攻撃的なものと誤認して遮断するリスクがあります。
誤検知が発生した場合、通信ログを確認し、正常な通信元への制限を解除する作業が必要です。その結果、通常業務にかけられる時間が減ってしまう可能性があります。
能動的サイバー防御関連法に対応してリスク低減につなげよう
本記事では、能動的サイバー防御の概要や関連する法律、具体的に取るべき対応などを解説しました。
能動的サイバー防御関連法に対応することで社内のセキュリティが向上し、機密情報を確実に守れるほか、関連法の罰則が科されるリスクを抑えやすくなります。関連法は2025年に成立したばかりであり、今後改正される可能性がある点に注意が必要です。
改正されると基幹インフラ事業者に求められる対応も変化する可能性があるため、日頃から最新のニュースを確認しておきましょう。
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