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多要素認証とは?ほかの認証方式との違いやメリットを解説

本記事では、多要素認証の基本的な仕組みや認証要素の種類、ほかの認証方式との違いのほか、メリットなどを解説します。

多要素認証とは、知識情報、所持情報、生体情報の2つ以上を組み合わせた認証方式
多要素認証(Multi-Factor Authentication:MFA)とは、知識情報、所持情報、生体情報のうち異なる種類の認証要素を2つ以上組み合わせて本人確認を行う認証方式です。例えば、ATMでの暗証番号(知識情報)とキャッシュカード(所持情報)の組み合わせがその一例です。
近年では、オンラインバンキングやクラウドサービス、企業の業務システムなどでもこの多要素認証が広く導入されており、単一のパスワード認証と比べて高いセキュリティを実現します。サイバー攻撃の巧妙化に伴い、企業・個人問わず導入の必要性が高まっています。
多要素認証が必要とされる背景
多要素認証が必要とされる背景として、長らく一般的な本人確認手段として利用されてきたパスワードを用いた認証の限界が挙げられます。
パスワードのみを用いた認証では、パスワードの使い回しや推測しやすい文字列が設定されている例は依然として存在し、情報漏洩やアカウント乗っ取りのリスクを高める原因となっています。また、流出したID・パスワードのリストを使って不正ログインを試みる「パスワードリスト攻撃」や、信頼性の高い発信先を装ったメールなどでID・パスワードの情報を引き出す「フィッシング攻撃」による被害も、依然としてなくなりません。単一のパスワードによる認証では、アカウント乗っ取りを防げない時代になりつつあるのです。
■ID・パスワード認証と多要素認証の違い

加えて、クラウドサービスやSaaSの利用拡大により、場所や端末を問わずシステムへアクセスする環境が一般化していることも、多要素認証が必要とされる背景のひとつです。クラウド環境でアカウントの乗っ取りがあった場合、顧客情報や機密情報が漏洩するような重大なインシデントが発生しかねないため、多要素認証などでセキュリティを高めなければなりません。
かつては、パスワード認証の安全性を確保するために、定期的なパスワード変更が推奨されていました。しかし、使い回しなどによりパスワードの強度が下がる事例もあったため、その方針は撤回され、新たな対策が求められるようになりました。その結果、国内外の金融機関や政府機関などさまざまな業界において、多要素認証の導入が法令・ガイドラインなどで推奨されるようになっています。
多要素認証における3つの要素

多要素認証は、異なる性質の要素を組み合わせて本人確認を行う方式です。ここでは、その3種類の認証要素について、特徴を解説します。
知識情報
知識情報とは、ユーザー自身が「知っていること」にもとづいた認証情報です。知識情報の具体例は、パスワード、PINコード、秘密の質問の答えなどです。
この方式は広く使われており、導入が容易な反面、課題も抱えています。例えば、パスワードの使い回しや、安易な文字列の設定があれば、サイバー攻撃のリスクは増大します。また、ユーザーがパスワードを忘れたり、複雑すぎて管理が難しくなったりする可能性も否定できません。
そのため、知識情報単独の認証ではなく、ほかの要素と組み合わせる多要素認証が望まれているのです。
所持情報
所持情報は、ユーザーが「持っているもの」にもとづいた認証情報です。例としては、スマートフォンの認証アプリ、ワンタイムパスワード(OTP)トークン、ICカード、USBセキュリティキーなどが挙げられます。
スマートフォンを利用したプッシュ通知認証や、アプリ上で生成されるワンタイムパスワードを使う方式などは、広く利用されています。これらは利便性に優れ、ユーザーにも受け入れられやすい手段です。一方で、所持情報には機器の物理的な紛失、盗難、故障といったリスクがあります。
生体情報
生体情報は、ユーザーの「身体的特徴」による認証要素です。代表例は、指紋認証、顔認証、虹彩認証、声紋認証などです。
これらの生体情報は個人ごとに異なるため、偽造が難しいという強みがあります。スマートフォンやノートパソコンにも生体認証機能が標準搭載されるなど、一般ユーザーへの普及も進んでいます。
ただし、生体情報は一度漏洩すると変更ができないという点は課題です。また、誤認識や認識精度のバラつき、プライバシー保護への配慮といった点にも注意が必要です。
多要素認証の組み合わせの例
多要素認証は、異なる種類の認証要素を組み合わせて使うことで、そのセキュリティ強度を高めます。実際によく使われる認証パターンとしては、「パスワード(知識情報)」と「スマートフォンアプリによるワンタイムパスワード(所持情報)」の組み合わせが挙げられます。以下は、その認証手順です。
■パスワードとスマートフォンアプリによるワンタイムパスワード認証の手順

このほかにも、「パスワード+指紋認証」や「パスワード+USBトークン」など、用途やセキュリティレベルに応じてさまざまな組み合わせが可能です。組み合わせを選ぶ際は、利用者の利便性とシステムの安全性を両立させる設計にすることが重要となります。
多要素認証と類似する認証方式の違い

多要素認証はほかの認証方式と混同されがちですが、実際には明確な違いがあります。ここでは、「2要素認証」「2段階認証」との違いについて整理します。
多要素認証と2要素認証の違い
多要素認証と2要素認証の違いは、多要素認証が複数の認証要素を組み合わせる方式の総称であるのに対し、2要素認証はそのうち2種類の要素を用いる方式を指すという点です。
2要素認証は多要素認証の一種で、知識情報、所持情報、生体情報のうち2種類を組み合わせて認証を行う方式です。一方、多要素認証という用語は、2要素認証や3要素認証を含む総称として使われます。
実務上は「2要素=多要素」として扱われるケースもありますが、厳密には2要素認証は多要素認証に含まれる方式である点を理解しておくとよいでしょう。
多要素認証と2段階認証の違い
2段階認証は、「認証を2回行う」というプロセスに注目した方式ですが、多要素認証と異なり、使用する要素が複数になることを前提としていません。例えば、パスワード入力後に秘密の質問に答えるという認証は、どちらも知識情報に分類されるため、2段階認証ではあっても多要素認証には該当しないことになります。
一方、多要素認証は「異なる種類の認証要素を組み合わせる」ことが前提です。そのため、セキュリティ面では2段階認証よりも信頼性が高く、推奨されるケースが多いといえます。
多要素認証の主なメリット
多要素認証は、サイバー攻撃のリスクが高まる現代において、認証の信頼性を高めるための有効な手段です。ここでは、その代表的なメリットについて解説します。
セキュリティレベルが向上する
多要素認証を導入した場合のメリットは、アカウントのセキュリティを大幅に強化できることです。例えば、パスワードが漏洩しても、スマートフォンや生体情報などの別の要素がない限り、第三者はログインできません。これは、不正アクセスやなりすまし被害を防ぐ上で有効です。
特に金融システムなど、高度なセキュリティが求められる分野においては、多要素認証の導入が重要です。パスワード単独では突破されやすいリスクを軽減できるという点で、企業・個人問わずセキュリティ強化に有効な施策といえるでしょう。
コンプライアンスを強化できる
多要素認証を導入することで、コンプライアンスを強化できる点もメリットです。
例えば、「政府機関等の対策基準策定のためのガイドライン(令和7年度版)」など、政府機関や各業界団体が作成するセキュリティ設計のガイドラインなどでは、多要素認証が推奨されていたり、導入義務が盛り込まれていたりします。
多要素認証の導入により、こうしたガイドラインに対応できるようになると、企業は対外的な信頼性を高めると同時に、情報漏洩などの重大インシデント発生時にも適切なセキュリティ対策を講じていたことを説明しやすくなります。結果として、取引先などの社外関係者からのコンプライアンス面に関する評価向上にもつながるでしょう。
多要素認証の主なデメリット
複数のメリットがある一方で、多要素認証にはいくつかのデメリットも存在します。ここでは、代表的なデメリットを確認しておきましょう。
金銭的コストが増える
多要素認証を導入する際には、初期費用および運用コストがかかる点はデメリットです。例えば、生体認証装置やハードウェアトークン、認証サーバーなどの費用がかかり、大規模な組織ではその費用が高額になることもあります。そのため、導入にあたっては、自社の利用環境やセキュリティ要件に応じて、必要な機能や規模を見極めることが重要です。
ログイン時の手間が増える
多要素認証を導入すると、認証手順が複雑になることで、ユーザーにとってログイン時の手間が増す可能性がある点もデメリットといえます。頻繁にログインが必要な環境においてはストレスの原因になることもあり、特にBtoCビジネスで顧客にログイン環境の不満を感じさせてしまうと、離脱につながりかねません。
不正アクセスの兆候があった場合のみ多要素認証を要求するなど、ユーザビリティとのバランスを図る工夫が必要です。
デバイスの紛失・故障時にログインできないリスクがある
スマートフォンやセキュリティキーなどの所持情報を利用する場合、それらのデバイスが紛失・故障するとログインできなくなる可能性がある点もデメリットです。例えば、通勤中にスマートフォンを紛失した場合、そのユーザーは一定期間ログインできなくなり、サービスの利用ができなくなるリスクが生じます。
また、トラブル発生時の対応フローが整備されていないと、ユーザーと管理者双方の対応に時間がかかるおそれもあります。こうしたリスクに備えるため、事前に紛失・故障時の対応をまとめたマニュアルを用意しておくなどの運用フローの設計が必要です。
多要素認証を導入する際の注意点
多要素認証を正しく導入するには、セキュリティ方針や運用体制で注意しなければならないポイントがあります。ここでは、導入時に押さえておくべき2つのポイントを解説します。
セキュリティ上の注意点
多要素認証を導入したからといって、すべての脅威に対して万全というわけではありません。例えば、何らかの方法で入手したID・パスワードを使って正規ユーザーに認証リクエストを送りつけ、誤って承認させる「多要素認証疲労攻撃」など、多要素認証を突破しようとする攻撃手法も存在します。
このため、単純なワンタイムパスワードだけでなく、生体認証などを利用したパスワードレス認証といった技術の導入も検討することが推奨されます。
運用上の注意点
多要素認証を安定して運用するためには、トラブル発生時の対応策やユーザー周知といった適切な運用体制も欠かせません。例えば、認証デバイスの紛失や故障が起こった場合に備えて、代替手段やサポート体制を整備しておくことが必要です。
また、ユーザーに対して「なぜこの認証方式が必要なのか」「どのように扱えば安全か」といった周知を徹底し、認証情報の管理とセキュリティ意識の向上を図ることも重要です。加えて、導入した認証方式が将来的にも有効であり続けるとは限らないため、定期的なレビューや脅威情報の収集、システムのアップデートを通じて、常に最適なセキュリティ状態を維持するよう努めましょう。
認証のセキュリティ強化のために、多要素認証を導入しよう
現代のデジタル環境では、アカウント情報やシステムへのアクセスを保護するための対策として、多要素認証の重要性が高まっています。パスワード単独では防ぎきれない不正アクセスや情報漏洩のリスクに備えるため、より強固な認証方式への移行は急務です。
利用者のITリテラシーや運用体制に応じて、自社に最も適した認証要素を組み合わせた多要素認証を導入し、セキュリティを高めましょう。また、導入後は認証手順の運用ルールやサポート体制を整備すると同時に、ユーザーへの周知を行うことも重要です。
加えて、多要素認証の導入を検討する際は、信頼できるソリューションを選ぶことが成功のカギとなります。伊藤忠テクノソリューションズが提供する「SELMID」は、多要素認証機能を備えつつ、導入しやすさと手厚いサポートが特徴のID統合管理プラットフォームです。
複数のアプリケーションやWebサービスでの認証の一元管理を実現するシステムで、マイナンバーカードを使用した安全な本人確認や認証もできます。多要素認証の導入を具体的に検討している方は、ぜひ以下から資料をダウンロードいただき、詳細な機能をご確認ください。

よくある質問
多要素認証と2段階認証の違いは何ですか?
2段階認証は、認証プロセスを2回に分けて行う方式であり、必ずしも異なる認証要素を使うわけではありません。一方、多要素認証は、知識情報、所持情報、生体情報のうち異なる種類の要素を組み合わせる認証方式で、セキュリティ強度がより高いのが特徴です。
多要素認証の認証要素にはどのような種類がありますか?
多要素認証では、下記の3種類の認証要素を組み合わせて本人確認を行います。
<多要素認証の認証要素の種類>
知識情報:パスワード、PINコード、秘密の質問など、ユーザーが「知っていること」
所持情報:スマートフォンの認証アプリ、ICカード、ワンタイムパスワードトークンなど、ユーザーが「持っているもの」
生体情報:指紋、顔、虹彩、声紋など、ユーザーの「身体的特徴」
例えば、「パスワード+スマートフォンのワンタイムパスワードアプリ」や「パスワード+指紋認証」などの組み合わせがよく使われています。
多要素認証を導入する際の注意点はありますか?
導入時には「ユーザーの利便性を損なわないように配慮しつつ、セキュリティ要件を満たす方式を選ぶ」「認証デバイスの紛失や故障時の対応手順をあらかじめ整備しておく」「多要素認証疲労攻撃などへの対策としてセキュリティの高い方式を検討する」といった対応が必要です。
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