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「Newオンプレミス」の基礎を知る|「クラウドネイティブ×オンプレミス」で実現する次世代のIT基盤とは

1.クラウドへの移行を巡る制約
総務省の「令和7年(2025年)版情報通信白書」によれば、日本企業におけるクラウドサービス(以下、クラウド)の普及率は年を追うごとに上昇し、2024年時点で80.6%に達したといいます。

出典:総務省「令和7年版 情報通信白書|第Ⅰ部 特集 広がりゆく『社会基盤』としてのデジタル」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111210.html
上記資料を基に作成
また、クラウドは「ファイル保管・データ共有」「電子メール」「社内情報共有・ポータル」「給与、財務会計、人事」「スケジュール共有」「データバックアップ」など、さまざまな用途で活用されており、いまや日常的なビジネス活動に欠かせないITとなっています。

出典:総務省「情報通信白書 令和7年版|第Ⅰ部 特集 広がりゆく『社会基盤』としてのデジタル」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111210.html
上記資料を基に作成
とはいえ、あらゆる企業システムをクラウドに移行できるわけではありません。以下に示すような制約から、オンプレミスでのシステム運用を余儀なくされることがあります。
(1)「データ主権」の制約
「データ主権」とは、特定の国・地域で生まれたデータを、当該の国・地域の法律・規則で保護することを意味する言葉です。その考え方から、特定の国・地域で生まれたデータは、当該国内、あるいは地域内で保管することが求められるケースがあります。例えば、EUの「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)」や中国のサイバーセキュリティ法では、個人データの域内保存が義務づけられています(※ただし、EUのGDPRは所定の条件を満たせば、域外保存が認められます)。
(2)「データレジデンシー」の制約
「データレジデンシー」は、データ主権に似た制約ですが、これは国や地域の法律・規則に則った「データの物理的な保存場所」を指す言葉です。企業は、特定地域の法律や規制に準じるかたちで、データの保管場所を選ばなければなりません。ゆえに、クラウドを使う場合でも、サービス基盤(=データセンター)の物理的な所在を特定の地域内に限定しなければならないことがあり、サービス基盤の所在が決められないようなクラウドは使えないケースがあります。
(3)その他の制約
企業システムのなかには、きわめて高いレスポンス性能が必要とされ、少しのレイテンシ(遅延)も許容できないものがあります。こうしたシステムは、クラウド環境での運用が難しいといえます。
また、システムの特性上、システム基盤の安定性・安全性を個社の自己責任のもとで確保しなければならないケースもあり、そのような場合も、クラウドへのシステムの移行が困難になります。
2.オンプレミス環境が内包する問題
以上のような制約から、オンプレミス環境でシステム運用を継続させる場合、「システムの変更・拡張が柔軟に、かつ俊敏に行えない」といった課題と対峙することになります。
例えば、クラウド環境では、数分から十数分の短い時間で新しいサーバーを立ち上げられますが、オンプレミス環境では機器の調達から設置、セットアップなどが必要とされ、数週間から数カ月を要するのが一般的です。
また、オンプレミス環境では、システム基盤(ハードウェア)の運用・保守、障害への対応などに相応のリソースを割かなければなりません。そのことは、デジタルトランスフォーメーション(DX)といった戦略的な取り組みを阻害する要因となりえます。
特に日本の場合、DX人材が不足しており、オンプレミス環境の保守・運用にかかる工数やコスト、あるいは業務負担を可能な限り低減させ、少しでも多くの人的・金銭的なリソースをDX人材の育成や確保に投じるようにすることが必要とされています。
ちなみに、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の調査レポート「DX動向2025」によると、DXを推進する人材が「不足している(やや不足している/大幅に不足している)」とする日本企業は8割を超えており、この比率はデジタル大国の米国に比べ圧倒的に多いといいます。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」(データ集/2025年6月公開)
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/tbl5kb0000001mn2-att/dx-trend-data-collection-2025.pdf
上記資料を基に作成
3.「Newオンプレミス」とは何か
以上のようなオンプレミス環境の課題を解決する一手として注目を集めているのが「Newオンプレミス」です。
Newオンプレミスとは、クラウドネイティブ技術を取り入れた新しいオンプレミス環境を指す言葉です。その構築は、オンプレミス環境の単なる延命策ではなく、クラウドとオンプレミスの特長を併せ持った、これまでにない新しいIT基盤やIT運用のスタイルを確立することを意味します。
Newオンプレミスは、ハイブリッドクラウド戦略における新たな選択肢でもあります。その環境では、ユーザー組織外のクラウドとの連携を前提としながら、基幹システムや機密性の高いワークロードをユーザー組織内の環境で処理し、ワークロードの変動が激しい処理や実験的な取り組みはクラウドで行うといった使い分けができます。そのため、ユーザー組織は、時代の変化や自社のシステム要件・ビジネス要件にフィットしたIT基盤を柔軟に構成することができます。
4.Newオンプレミスにおける3つの目的
以上のとおり、Newオンプレミスはクラウドとオンプレミスの特長を併せ持った環境です。ゆえに、その構築に着手する際には、以下の3点を主に目指すことになります。
(1)オンプレミス環境における柔軟性・俊敏性の獲得
Newオンプレミスの構築で目指すゴールの1つは、クラウドが有する柔軟性・俊敏性の獲得です。Newオンプレミスの環境を構築することで、クラウドに匹敵するようなソフトウェア(アプリケーション)の迅速な提供やITリソースの自動スケーリングなどが可能になります。
実際、マルチクラウド戦略やハイブリッドクラウド戦略を実効性のあるものにするには、オンプレミス環境もクラウドに匹敵する柔軟性・俊敏性を備えていることが不可欠です。オンプレミス環境がボトルネックとなってシステム全体の変更や拡張に時間を要してしまうと、企業のDX推進スピードも大きく阻害されかねません。
例えば、クラウドネイティブの技術を使って「Infrastructure as Code(IaC)※1 」を実現することで、サーバーの立ち上げを効率化・自動化できます。また、同じくクラウドネイティブ技術を使いCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー )※2 のサイクルを確立すれば、アプリケーション提供のパフォーマンスを大幅に向上させることが可能になります。
※1 Infrastructure as Code(IaC):システム基盤のリソース構成をコードとして記述し、基盤の管理性・再現性を高めたり、基盤運用の自動化を実現したりすることを指す。
※2 CI/CD:ビルド、テスト、デプロイといった、アプリケーション開発のステージに自動化を取り入れて、アプリケーションを提供する頻度を高める手法のこと。
(2)オンプレミスならではの制御性・安定性・処理スピードの維持
Newオンプレミスの構築では、オンプレミス環境の特長といえる制御性や安定性を維持することも目標となります。例えば、Newオンプレミスでは、データの物理的な保管場所を自社内(あるいは、自社が契約するデータセンター内)に固定し、その管理・統制を自社内で完結できます。ゆえに、各種の法律や規制、あるいは自社のポリシーに則ったデータの管理・運用を徹底させられます。
加えて、Newオンプレミスでは、ミッションクリティカルなシステムに求められる高いパフォーマンスや予測可能性を維持し、セキュリティについても自社基準に基づいた厳格な管理が行えます。特に、IaCやコードを用いてパフォーマンスやセキュリティのあるべき状態を定義することで、その状態を自動的に維持し続けられる点が、従来のオンプレミス環境との大きな違いといえます。手動での設定変更や管理作業に依存せず、常に一貫した状態を保つことができるため、運用の安定性と信頼性が大幅に向上します。
(3)ITコストの適正化
クラウドの活用には、システムの初期導入費用を小さくできるというコスト面でのメリットがありますが、一方で、従量課金制を採用したサービスの場合、中長期的な運用コストが見えづらいといったネックがあります。また、システムによっては、オンプレミス環境で構築・運用したほうが、クラウドを使うよりも中長期的なコストが小さくなることもあります。Newオンプレミスは、従量課金制のクラウドが内包する、こうしたコスト上の問題がなく、コストの予測性、安定性に優れています。
5.Newオンプレミスを実現する主要なクラウドネイティブ技術
次に、Newオンプレミスを実現するための主要なクラウドネイティブ技術について簡単に触れておきます。クラウドネイティブは、クラウドのようにモダンでスケーラブルなアプリケーションを実現するITアーキテクチャを意味し、同アーキテクチャを支える要素技術となります。これらの技術を活用することで、アプリケーションの開発・提供・運用の効率化・自動化が実現されます。そうしたクラウドネイティブ技術のなかで、Newオンプレミスの実現には主として以下のような技術が使用されます。
■コンテナ:アプリケーションとその実行に必要な環境(ライブラリやミドルウェア)をパッケージ化する仮想化技術です。仮想マシンのようにアプリケーションを実行するゲストOSを必要とせず、ホストOSからプロセスやネットワークなどのリソースを隔離でき、環境間でのアプリケーションの移動を容易にするという特長を有しています。コンテナ技術として広く普及している1つに「Docker」があります。
■コンテナオーケストレーション(Kubernetes):アプリケーションのコンテナ化を推進することで、コンテナの数が増え、そのオーケストレーションの作業(デプロイやスケーリング、管理などの運用作業)を効率化・自動化することが必要になります。そのための標準的なツールが、オープンソースソフトウェア(OSS)の「Kubernetes」です。市場には、Kubernetesを使ったさまざまなツールが投入され、例えば、エンタープライズ向けOSS製品のディストリビューターであるレッドハットでは、Kubernetesを活用したコンテナ基盤「Red Hat OpenShift Container Platform」や、Kubernetes上でコンテナと仮想マシン(VM)を一元的に実行・管理する「Red Hat OpenShift Container Platform Virtualization」を提供しています。
■CI/CDツール:先に触れたCI/CDサイクルを形成するためのツールを指し、具体的なツールとしては「GitHub Actions」「Jenkins(+ Kubernetes)」などがあります。
■マイクロサービス:これは特定の技術を指す言葉ではなく、アプリケーションを機能単位の小さなサービスに分割して、それぞれのサービスを、APIなどを通じて疎結合する開発手法、あるいはアーキテクチャを指しています。機能と機能が密結合する従来型のアプリケーションに比べて機能の追加・変更が行いやすいのが特長です。クラウドを通じて提供されるソフトウェアプロダクトには、マイクロサービスのアーキテクチャが適用されていることが多く、今日では企業の社内システムも、マイクロサービス型(APIを使った疎結合型)にしようとする動きが活発化しています。
■サービスメッシュ:これは、マイクロサービス間の通信を自動的に管理・制御する仕組みです。サービスメッシュを実現する代表的なツールとして、Kubernetesを使ったOSS「Istio」があります。
■分散データベース:クラウド環境向けに設計・開発され、高い拡張性と可用性を特長とする分散型のデータベースを指します。具体的なサービスとしては「TiDB」「Vitess」「Apache Cassandra」「MongoDB」などがあります。
6.Newオンプレミスの導入を成功させるポイント
実のところ、上記のようなクラウドネイティブ技術を使い、Newオンプレミスの環境を実現するのは、そう簡単ではありません。そこで次に、Newオンプレミスの実現に際して組織が直面しがちな課題と、その課題を乗り越えるための3つの施策を紹介します。
施策①PoCによる検証
Newオンプレミスの導入に当たっては、既存のVMインスタンスをクラウドネイティブな環境へと移行させる作業がよく発生します。ただ、既存のすべてのVMインスタンスが、クラウドネイティブな環境へとそのまま移行・利用できるとは限りません。構成や機能によっては動作するものと動作しないものがあり、移行ツールについてもどこまで実際に移行できるのかの確認が必要です。ゆえに、既存VMインスタンスの移行を検討する場合には、PoCの実施を通じて移行の可否を見定めることが必須となります。
施策②運用の変更
従来のオンプレミス環境からNewオンプレミスへの移行により、大抵の場合、これまでとは異なるツールを使ってIT基盤の運用管理を実施していかなければならなくなります。したがって、ハンズオンやPoCを通じて、新しい運用管理のあり方や実践方法を習得することが重要となります。これにより、Newオンプレミス環境を適切に運用していくことが可能になります。
施策③クラウドネイティブ技術の習得
繰り返すようですが、Newオンプレミスの環境には、クラウドネイティブの技術、あるいはアーキテクチャが組み込まれます。そのため、クラウドネイティブ技術を使用した経験がない、あるいは使用経験の浅い組織は、クラウドネイティブ技術に対する理解を深めていかなければなりません。そのための学習に自社単独で対応するのが難しい場合には、クラウドネイティブ技術に精通する企業に支援を要請し、その企業からクラウドネイティブ技術のスキルと活用のノウハウを効率的に、かつ効果的に学びとっていくことが大切です。
7.適切なパートナーとの協業がNewオンプレミス実現の近道に
上で触れた課題を一挙に解決し、Newオンプレミスの導入を成功へと導く効果的な方法は、クラウドネイティブ技術の組織への導入で豊富な実績を有するパートナーを選び、そのパートナーとのコラボレーションを推し進めることです。
例えば、CTCでは、クラウドネイティブ技術のPoCから導入、システム構築、システム移行に至るまで、Newオンプレミスの実現に必要な工程を一気通貫で支援しています。Newオンプレミスの構築を検討されているならば、ぜひ一度、当社にご相談ください。
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