課題と効果
- 課題
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- シンクライアントシステムのユーザ数増加に伴い、パフォーマンスが低下
- ビジネス部門からのパフォーマンス改善要求が強まる
- ストレージコントローラのCPU使用率が高まる
NetAppオールフラッシュストレージシステムの導入
- 効果
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- ストレージのレスポンス性能を大幅に改善
- ストレージコントローラのCPU使用率を30%未満に低減、可用性を向上
- NetAppの移行ツールによって、新ストレージへの移行を短期に実現
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
- 所在地
- 〒100-6080 東京都千代田区霞が関3-2-5霞が関ビル
- 創立
- 1972年
- URL
- http://www.ctc-g.co.jp/
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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
情報システム部
部長代行永田 孝哉
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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
情報システム部
課長菅原 高道
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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
情報システム部
エキスパートエンジニア浅沼 宏紀
導入背景
ユーザー増で深刻化したシンクライアントシステムの性能問題
CTCのシンクライアントシステムは、同社の約10,000ユーザーが日常的な業務に利用するITインフラだ。同システムでは、約650台に及ぶ仮想サーバにWindows Server 2008R2を導入、仮想サーバ1台あたりに20~30ユーザーというマルチユーザー環境でリモートデスクトップサービスを運用している。
「当社のシンクライアントシステムは、オフィスの自席はもちろん、外出先・出張先や自宅など、場所を問わずにどこからでも同じデスクトップ環境が利用できるという特徴があります。会議室にもシンクライアント端末を常備し、その端末から各自のデスクトップ環境にアクセスすることも可能です」と、情報システム部 インフラシステム課 エキスパートエンジニア 浅沼 宏紀は説明する。
この全社システムにおいて、2015年に浮上した問題がユーザー数の増大とストレージの性能不足に起因したパフォーマンスの低下だ。
「例えば、システムに対するユーザーログインが集中する時間帯では、ストレージのレスポンス低下が顕著に見られるようになったほか、ストレージコントローラのCPU使用率も90%を超え、可用性の面でも危うい状況にあったのです」と、情報システム部 インフラシステム課 課長 菅原 高道は振り返る。
システム概要
4つの要件に基づきオールフラッシュストレージを採用
CTCのシンクライアントシステムのストレージは、2台のコントローラでアクティブ/アクティブの冗長構成を組んでいる。ただ、ストレージコントローラのCPU使用率が50%を超えてしまうと、どちらかのストレージに障害が発生した時に対処ができず、処理の継続性を確保するのが難しくなる。また、ストレージのレスポンス時間が25msec(ミリ秒)を超えると、ユーザーから「システムが重い」といった問い合わせが増えることも判明した。こうして情報システム部はストレージの刷新を決断し、刷新の目標を以下の4点に定めた。
- 30,000OPS以上のストレージ負荷に耐えうること
- ストレージコントローラのCPU使用率を50%未満に抑えること
- サーバからストレージへのレスポンス時間を15msec以下に抑えること
- 従来のストレージ運用管理性をそのまま引き継げること
これらの目標を達成すべく、CTCが選んだ製品がNetAppのオールフラッシュストレージシステム(以下、オールフラッシュFAS)である。浅沼は、オールフラッシュ採用の理由をこう述べる。
「オールフラッシュはストレージ性能の改善に最も効果的なソリューションです。もちろん、フラッシュメモリをキャッシュとして導入し、パフォーマンスを改善するという手段もありますが、オールフラッシュにしたほうが拡張性に優れていると判断しました」
導入効果
オールフラッシュ効果は劇的読み込み平均1msec以下を実現
実際、オールフラッシュ採用の効果は多大なものだった。
ストレージのレスポンス時間は、目標値の「15msec以下」を大きくクリアし、読み込みで平均1msec以下、書き込みで1~2msecのパフォーマンスを実現することができた。併せてストレージコントローラのCPU使用率も最大負荷時で30%以下に抑えられ、可用性に対する不安も解消されたという。
オールフラッシュFASは価格面でもSASハードディスクと大差はないと浅沼は指摘する。しかも、フラッシュの場合、同容量でもラックに占める容積がハードディスクの半分程度に抑えられ、ストレージの集積度を高めることが容易になるほか、ハードディスクに比べて故障率が低くなる効果も期待できる。
また、CTCのシンクライアントシステムの場合、従来からNetApp製品を共有ストレージとして用いてきた。そのため、NetAppの移行ツールが利用でき、「新ストレージへのデータ移行もスムーズに行われました」と、菅原 高道は指摘する。実際、今回のストレージ刷新に際し、情報システム部は2016年1月にオールフラッシュFASの導入を決め、ストレージの移行方法を取りまとめたが、翌2月末には移行を完了させている。
さらに、CTCが導入したオールフラッシュFASではNetAppの最新スケールアウト型OS「clustered Data ONTAP(8.3)(以下、cDOT)」が採用されている。cDOTでは無停止でのストレージ増強を可能にするなど、従来OSに比べ様々な機能が追加、あるいは変更されているが、その使用感は情報システム部がこれまで利用してきた従来OS(スケールアップ型OS「Data ONTAP 7」を踏襲した「7-mode」)と大差はなく、「むしろ使いやすくなっています」と、浅沼は付け加える。
今後の展望
活用と運用のノウハウを顧客の課題解決に活かす
CTCでは、こうしたオールフラッシュFASの社内利用・運用で培ったノウハウを、大規模なシステム構築やクラウドサービス提供に活用し、顧客の課題解決に貢献できると考えている。情報システム部 部長代行の永田 孝哉は次のような説明を加える。
「CTCの情報システム部は、社内ITの整備・運用管理だけが仕事ではありません。CTCのお客様にとって有益と見なした製品・新技術を率先して導入し、その検証を重ねながら、お客様の利益につなげていくことも大切な役割です。今回導入したオールフラッシュFASについても、我々の取り組みやノウハウを、ぜひ、お客様に活用していただきたいと考えています」
確かに、大規模シンクライアントシステムにオールフラッシュのストレージシステムを適用し、課題解決に活かしたCTCの取り組みと運用ノウハウは、エンタープライズシステムの性能問題に悩まされる全ての企業にとって有益であり、大いに参考になるに違いない。その今後に注目が集まる。