株式会社インテリジェント ウェイブ(以下、インテリジェント ウェイブ)は、クレジットカード加盟店管理業務に必要なシステムをASP型で提供している。その基盤をプライベートクラウドからオラクルのパブリッククラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)」に移行。機器更改を自社で行うなどのプライベートクラウドのリスクを最小化することで、自社サービスの信頼性を大幅に向上している。さらに短期間かつスムーズなシステム移行・新規構築、リソースの柔軟な変更など、自社サービスのさらなる高品質化を果たしている。
課題と効果
- 課題
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- 機器更改などのリスクを最小化し、サービスの信頼性をより向上したい
- オラクル製品を用いたシステムを円滑に移行・新規構築したい
- 仮想サーバの性能不足に素早く対応したい
- 効果
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- パブリッククラウドのOCI導入でリスクを解消し信頼性向上
- 既存環境のオラクル製品と親和性の高いOCIで円滑に移行・新規構築を実現
- その都度リソースを追加し性能不足を解消。スケールアウト/アップも柔軟に対応
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- 株式会社インテリジェント ウェイブ
- 設立
- 1984年12月
- 所在地
- 東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー
- 資本金
- 8億4,375万円
- URL
- https://www.iwi.co.jp/
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株式会社インテリジェント ウェイブ
第二システム本部
本部長髙根 弘充氏
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株式会社インテリジェント ウェイブ
第二システム本部
第一部
部長徳田 充利氏
導入背景
サービス基盤のリスク最小化のためパブリッククラウドへ移行
決済関連システム事業、金融・証券業界向け事業、情報セキュリティ事業を3本柱とするインテリジェント ウェイブ。キャッシュレス決済に必要なネットワーク接続や利用可否判定を行うソフトウェア「NET+1」、クレジットカード会社向けカード不正利用検知システム「ACEPlus」は国内トップのシェアを誇る※。
- ※2024年2月現在、同社調べ
同社の主要サービスのひとつが「IOASIS」だ。カード会社などのアクワイアリング業務(国際ブランドやキャッシュレス決済事業者との対外接続、加盟店の契約や売上・精算管理など)向けの基幹システムをASP型で提供するサービスである。
IOASISの基盤は従来、プライベートクラウドとして、自社データセンター内にオンプレミスで構築し、顧客ごとに仮想環境をVMwareで用意していた。サービス自体は問題なく提供できていたが、2021年、プライベートクラウドに起因するリスク極小化に取り組んだ。
株式会社インテリジェント ウェイブ 第二システム本部 本部長 髙根弘充氏は「お客様のビジネスは24時間365日ノンストップであり、当社のIOASISにはその業務を支える責務があります。プライベートクラウドは機器更改や運用保守を当社が担う必要があり、その中にサービス停止などのリスクが潜んでいます」と話す。
具体的なリスクについて、基盤構築運用の実務を統括する株式会社インテリジェント ウェイブ 第二システム本部 第一部 部長 徳田充利氏は「例えば機器更改では、製品によっては調達に半年近く要することもあり、更改スケジュールに悪影響を及ぼしていました。それにIOASISの性質上、サービスを止めずに更改しなければなりません。常に決して失敗できない緊張感のなか作業を行っており、リスクと共に大きな負担となっていました」と振り返る。
他にも、保守切れなどで新たな製品に変更せざるを得なくなった際の既存環境との相性問題などのリスクも孕んでいた。
システム概要・導入効果
「Oracle Cloud Infrastructure」を採用 既存のデータベースをスムーズに移行
同社はそれらのリスク最小化のため、IOASIS基盤をプライベートクラウドからパブリッククラウドへ移行すると決めた。複数のパブリッククラウドサービスを比較検討した末、採用されたのがオラクルの「Oracle Cloud Infrastructure」だ。
選定の際にまず重視したのが信頼性である。「IOASISの基盤は言うまでもなく信頼性が第一です。OCIなら今まで以上の信頼性を担保できると判断しました」と髙根氏は強調する。
既存システムの移行性の高さも選定のポイントとなった。同社では従来のプライベートクラウド環境上のシステムをはじめ、データベースにOracle Databaseを長年使用していた。
「OCIなら、既存のOracle Databaseをそのまま移行できます。一方、比較対象であったパブリッククラウドは、Oracle Databaseやアプリケーションにかなり手を入れる必要がありました。実際にPoCも行い、工数やリスク、少し長い期間でのトータルコストなど、様々な角度で検証してOCIを選びました」(徳田氏)
さらにOCI上にて、「Oracle Cloud VMware Solution」(以下、OCVS)と「Oracle Base Database Service」も導入。「OCVSはオンプレミスのVMware環境と互換性が高く、既存の仮想サーバをOCIにそのまま移行できるので、最も手軽でリスクの少ない方法です」(徳田氏)。これら2つのサービスが加わることで、OCIへの移行性をより高められた。オラクルやVMwareの蓄積した技術やノウハウ、経験を引き続き活かせるのもメリットである。
これらOCI選定・導入から構築・運用まで、全面的に支援したのが伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)である。CTCはオラクル製品を用いたシステムの保守などで、インテリジェント ウェイブを長年支援してきた。
「CTCはOCIをはじめオラクル製品・サービスに関する独自ノウハウが豊富で、障害発生時などはオラクルに直接問い合わせなくとも、CTCから的確な回答を素早くいただけます。IOASISなどの自社サービスを高信頼で提供し、今後拡大するにあたり、単なるサポートではなくパートナーとして、私たちと同じ立場・目線で動いてくれます」(髙根氏)
OCIとあわせて、CTCの「マルチクラウドマネージドサービス(MCMS)」も導入している。「OCI導入・運用管理をCTCは専任チームで支援してくれます。1人1人の技術者のスキルレベルが高く、守備範囲も広いので頼りになりますね」と徳田氏は笑みを浮かべる。
今後の展望
自社サービスの信頼性を大幅に向上 短期間でのシステム移行・新規構築も可能に
PoCを含め約1年間の検証期間を経てOCI導入を決定後、IOASISの新規ユーザー向けの新規構築、および既存ユーザーの移行を順次進めている。1社あたり実質約6カ月の期間でサービスを提供開始できている。
同社はCTCの支援によるOCI導入によって、狙い通りの効果を得ている。
「機器更改をはじめ、オンプレミスで構築するプライベートクラウドのリスクを全て解消でき、IOASISを一段も二段も上の高可用なサービスにできました。新規ユーザー様の構築もスムーズに行えています」と髙根氏は高く評価する。
その上、OCIは性能確保の面で副次的な効果を得ている。「仮想サーバ作成の際、オンプレミスと同じスペックを選んでも、性能試験を実施するとリソース不足が判明することが多々ありました。OCIはその場で素早くスペックを変更して対応できるので、構築スケジュールにほとんど影響を与えずに進められて助かりますね」と徳田氏は語る。
また、今後見込まれるOCIの導入効果として、「構築期間を短く抑えられるのが、現場として大きいですね。お客様から短期構築を依頼されるケースが多いのですが、オンプレミスなら間に合わなくてもOCIなら可能になります。お客様の事業拡大に応じて、基盤を柔軟にスケールアウト/アップできる点にも期待しています」と髙根氏は挙げる。
「その他パブリッククラウドに適したサービスも、OCIへの移行を検討しています。運用管理についても、クラウドシフトによる効率化がこれからのテーマです」(徳田氏)
高信頼性・高品質なサービスを顧客に提供するインテリジェント ウェイブ。CTCは、これからも同社の品質向上に寄り添っていく。
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