株式会社オリエントコーポレーション(以下、オリコ)は、同社の情報系システム基盤「BI-NAS」の更改を、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)の支援のもと実施した。核となるデータベースには、オラクルの「Oracle Exadata Cloud@Customer」を採用。ライセンス費削減とバッチ処理性能約30%向上の両立を実現した。他にもセキュリティ向上や全体のランニングコスト削減をはじめ、様々な面で基盤を最適化できている。
課題と効果
- 課題
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- 年々増えるランニングコストを削減したい
- データベースのリソース不足を解消したい
- 近い将来、社内外の多種多様なデータをビジネス活用できる基盤を整備したい
- 効果
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- Oracle Exadata Cloudの導入によりランニング費用を削減
- 動的に増減可能な処理ユニット(OCPU)でリソース不足を効率よく解消
- 社内未活用データや社外データ、更に非構造化も統合的に扱える基盤を構築
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- 株式会社オリエントコーポレーション
- 創業
- 1954年
- 所在地
- 東京都千代田区麹町5丁目2番地1
- URL
- https://www.orico.co.jp/company/
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株式会社オリエントコーポレーション
IT・システムグループ システム推進部
部長代理藤元 伸丈氏
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株式会社オリエントコーポレーション
IT・システムグループ システム推進部
部長代理飯山 良太氏
情報系システム基盤が保守の限界を迎える コスト増やリソース不足も課題
「オリコカード」で知られる大手信販会社のオリコ。同社は2023年3月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画をスタートさせ、従来型の信販モデルから発展的に脱却し、①グリーン②デジタル③オープンイノベーションを切り口に、新時代の金融サービスグループへの変革を通じて、社会への貢献と企業価値の向上の実現を目指している。
その実現に向けた取り組みの1つとしてDXにも注力。「Orico DX Vision」を掲げ、DX(イノベーティブな先進テック企業へ)およびCX(新たな顧客体験の提供)、EX(新たな働き方体験の進化)を三位一体で推進し、社会価値・企業価値の両立を目指す。
そうした取り組みを進める同社の情報系システムが「BI-NAS」となる。BI-NASはオンプレミスで構築し、2000年にオープン化。2013年からはパフォーマンスなどを重視し、核となるデータベースにオラクルの「Oracle Exadata」を導入している。
株式会社オリエントコーポレーション IT・システムグループ システム推進部 部長代理 藤元伸丈氏は「ハードウェアは延命対応を行い使い続けてきましたが、2024年2月に保守の限界を迎える予定でした。また、年々増えるランニングコストも対応が必要であり、取り扱うデータ量も増加を続け、リソース不足による処理能力の限界も近づいていました。更に、セキュリティリスクがますます高まるなか、クレジットカード会員データを安全に取り扱う事を目的として策定された業界のセキュリティ基準『PCI DSS』へ準拠する方針としました」と振り返る。
あわせて、近い将来を見据えて新たなデータ分析を行う基盤も求められていた。株式会社オリエントコーポレーション IT・システムグループ システム推進部 部長代理 飯山良太氏は「今後はデータ分析に社内データのみならず、社外のデータも取り込んでいきます。さらに、音声をはじめ非構造化データも扱うことを検討しています。例えば、ウェブの行動履歴、法人向け分析サービスなどのデータをマーケティングや与信、債権回収などの業務に活かします。そのような用途にも対応できる基盤が必要でした」と話す。
プライベートクラウド化し、データベースに「Oracle Exadata Cloud@Customer」を採用
オリコはこれらの課題を解決すべく、BI-NASの更改に取り組んだ。最初に更改方針として「期限のある基盤更改を先行して行い、その次に新たなビジネスニーズを基にアプリの改善・機能拡張を行う」(藤元氏)とした。
基盤の更改は2021年9月から検討を開始。そのなかでデータベースに採用したのが、オラクルの「Oracle Exadata Cloud@Customer」(以下、Oracle ExaC@C)である。Oracle ExaC@Cは、Oracle Exadataをプライベートクラウドで利用できる製品だ。
選定の前段階として、「現行システムにはチューニングなどOracle Exadataを高性能化するための投資を長年続けてきました。それら多くの既存資産、蓄積した技術・ノウハウを活かすのが合理的といった考えから、Oracle Exadataを継続する方針を採りました」(藤元氏)
Oracle Exadataはオンプレ、パブリッククラウド、プライベートクラウドと複数の選択肢から検討した結果、プライベートクラウドを選んだ。
「先行してBI-NASの開発環境はOracle Exadataをパブリッククラウド化し、機能面や運用面など実用性を確認していました。本番環境はデータ量が膨大で、データベースと他サーバ間のネットワークに速度が求められます。セキュリティ面でも、機密性の高い情報を多く扱うため、データベースを社内イントラネットに置けるとより安全です。これらの理由からプライベートクラウドに決め、Oracle ExaC@Cを採用しました」(飯山氏)
さらに、Oracle ExaC@Cの処理ユニット「OCPU」(Oracle Compute Unit )というリソースの柔軟性も決め手の1つとなった。「OCPUの使用量を適切に割り当てることでパフォーマンス最適化とコスト削減を同時に達成できる点が魅力でした」と藤元氏は語る。
そして、オリコが今回のプロジェクトのパートナーに選んだのがCTCである。CTCはOracle ExaC@Cを含め、基盤全体の更改を支援した。
「他のベンダーは得意分野などを部分的に提案するにとどまりましたが、運用も含め基盤全体を網羅した提案をしたのはCTCでした。それにCTCは以前のデータ分析ツール導入なども手掛けており、当社のシステムや業務を熟知している点も頼もしかったですね」(飯山氏)
あわせて、CTCの「Techno CUVIC」を採用して新仮想化基盤も構築し、関連システムを集約した。
ライセンス費などコストを大幅削減 バッチ処理性能を約30%向上
情報系システム基盤の更改作業は2022年9月から開始し、2024年2月にカットオーバーした。「大きなトラブルもなく順調に構築できました。運用保守はCTCとは別のベンダーにお任せする体制なのですが、CTCは引継ぎもスムーズでした」と飯山氏は評価する。
Oracle ExaC@C導入による効果は大きい。オリコではバッチ処理が昼夜問わず一日中走り続けている。仮想マシンのスペックはオンプレ時代と変わらないものの、柔軟なリソース割り当てによって、バッチ処理の性能向上とコスト削減を同時に実現した。
藤元氏は「Oracle ExaC@Cに割り当てるOCPUは、利用者がBIツールを一斉に起動する朝の始業時やバッチ処理が集中するピーク時などに増やし、逆にあまり使われない時間帯は減らすよう設定しました。その結果、バッチ処理性能を約30%向上でき、資源をより有効活用できました」と語る。
その他の課題についても、Oracle ExaC@Cを軸とする基盤更改によって解決している。「PCI DSSへの準拠をはじめ、セキュリティ向上も果たせました。そして何より大きいのが、近い将来、社内外の様々なデータのビジネス活用が可能な基盤を整備できたことです」と飯山氏は述べる。
今後は今回更改した基盤をベースに、機能拡張を進め、ビジネス強化へとつなげていく。
「基盤の更改が無事済んだので、これからはアプリの機能拡張を進めていきます。また、Oracle ExaC@Cにフォーカスすると、オンプレとは異なり常にバージョンアップされるので、最新の機能を積極的に活用したいと考えています」(藤元氏)
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