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KYB株式会社 様

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IoTによる工場生産設備の予知保全を目指すKYB データ分析プラットフォームにAmazon Web Servicesを採用

  • Amazon Web Services

KYBは、工場内の生産設備を常時監視して事前にメンテナンスを実施する「予知保全」など、生産技術・設計・製品領域のデータ分析に利活用する「KYB IoTプラットフォーム」を構築した。プラットフォームの稼働基盤には、Amazon Web Services(AWS)を採用。KYB DX推進部が主導するプロジェクトを伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が支援する形で構築を進め、わずか半年という短い開発期間でプラットフォームの初期バージョンを稼働させた。

課題と効果

課題
  • 生産設備の保全を担当する設備管理部門の業務に大きな負荷がかかっていた
  • ピッグデータ活用に対する社内からの要望に応えられる仕組みがなかった
効果
  • 予知保全の仕組みにより運用負荷軽減とコスト削減の効果を獲得
  • 新たな価値を生み出すピッグデータ分析・IT活用プラットフォームを構築

導入事例インタビューデータ

会社名
KYB株式会社
所在地
〒105-6111 東京都港区浜松町2-4-1
設立
1935年(創業1919年)
社員数
15,439名(2019年度・連結)
事業内容
自動車部品・鉄道車両部品・航空機部品・建設機械部品・産業機械部品・特装車・建設機械・産業機械・免震装置・試験装置・各種油圧システム製品の製造・販売
URL
https://www.kyb.co.jp/新しいウィンドウで開く
  • KYB株式会社 技術本部 DX推進部 内藤 孝昌氏

    KYB株式会社

    技術本部 DX推進部

    内藤 孝昌氏

  • KYB株式会社 技術本部 DX推進部 古川 輝氏

    KYB株式会社

    技術本部 DX推進部

    古川 輝氏

  • KYB株式会社 技術本部 DX推進部 井指 諒亮氏

    KYB株式会社

    技術本部 DX推進部

    井指 諒亮氏

課題

生産設備の業務負荷が課題に 解決策として予知保全に注目

KYBは、1935年に萱場製作所として創立した国内最大手の独立系油圧機器メーカー。2015年10月に旧社名のカヤバ工業から、長年ブランド名として使用してきた現社名に商号変更した。現在は「人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するKYBグループ」を経営理念とし、自動車・航空機・鉄道・特装車両・建設機械・産業機械などの幅広い領域向けに、振動やパワーを制御する多種多様な油圧関連製品を提供している。中でも主力製品の自動車用ショックアブソーバーは、世界第3位・国内第1位のシェアを誇っており、全世界で走る自動車の16%にKYB製品が採用されているという(2019年3月 KYB調べ)。

KYBは国内の5工場をはじめ、世界中に生産拠点、生産子会社を展開している。各工場には製品を製造する多数の生産設備があり、工場によっては数千台もの生産設備が稼働しているところもある。

「これらの生産設備は、保全業務を担当する設備管理部門が日々メンテナンスを行うことにより正常な状態で稼働し続けています。しかし、そうした保全業務を担当する人員は十分に確保できているわけではなく、設備管理部門の業務に大きな負荷がかかっているのが現状でした」

こう話すのは、KYB 技術本部 DX推進部の内藤孝昌氏。同氏が所属するDX推進部は、生産現場で稼働する設備の新しい加工技術や自動化技術の研究開発に取り組む生産技術研究所の中で、主に生産現場のITシステム開発を担っていたメンバーを中心に2019年8月に新設された組織。生産技術だけでなく、設計支援システムを開発していた他部署メンバーや製品系の研究・開発を担う基盤技術研究所のメンバーなども集結し、広い視野でデジタル技術の利活用を進めているのが特徴だ。

「DX推進部では、これらの課題を解決する方法として『予知保全』に取り組むことにしました。近年のAIやIoTなどのデジタル技術の発展に伴い、多くの製造業が予知保全に取り組み始めており、当社もそれにチャレンジすることにしたわけです」(内藤氏)

経緯

内製生産設備に対応するために予知保全の仕組みを独自開発

近年は、生産設備そのものに予知保全機能が組み込まれている場合がある。また、各社からも予知保全ソリューションが提供されるようになった。しかしKYBでは、予知保全の仕組みを独自開発する道を選んだという。

「当社で稼働する生産設備の多くは、自社で内製したものです。とくに主力製品の自動車用ショックアブソーバー関連の生産設備は、独自のノウハウが詰め込まれた内製設備がほとんどです。こうした生産設備に予知保全ソリューションを適用する場合、設備ごとに導入する必要があったり、設備に合わせてカスタマイズしたりなどコストがかかります。また、他社ソリューションに頼っていては予知保全に関するノウハウが残らず、技術力が弱体化してベンダーロックインを招くことも懸念されます。そこで当社では、予知保全の仕組みも内製化するという決断をしました」(内藤氏)

同社はもともと生産設備で利用するITシステムをほぼ100%内製化しているなど、自社でシステムを開発できる能力がある。IoTという言葉が存在しなかった約20年前からラインの生産情報を収集して、工程改善に役立てるといった取り組みを実践し、ここ数年はAI/機械学習の研究にも重点的に取り組んでいたという。

「当社の主力製品自体が振動を制御する技術によるものであり、予知保全に必要な振動解析などに関するノウハウは社内に蓄積されています。また、予知保全を通じて新たに獲得した技術を製品に活かせるとも考えました」(内藤氏)

そんなKYBの狙いは予知保全という特定用途に限るものではなかった。IoTやAI技術を活用して予知保全を実現するデータ収集・分析プラットフォームを構築するのならば、様々な用途に活用できる仕組みを構築しようと考えたのだ。

「当社の既存システムはその都度個別開発するスタイルだったため、システム間の連携や技術共有が進んでいませんでした。しかし、各工場からはIoTセンサーから収集したデータをAIで分析するといったデータ活用に対する様々な要望が上がるようになりました。そこで予知保全を入口にして、ビッグデータ分析に活用する『KYB IoTプラットフォーム』を構築することにしました」(内藤氏)

選択

可用性や耐久性を考慮しAWSクラウドの利用を決断

KYB IoTプラットフォームを構築するにあたり、同社ではクラウドの利用を考えたという。

「我々はビッグデータを扱った経験がなく、従来のようなオンプレミス環境に大規模なプラットフォームを構築・運用するのには不安がありました。セキュリティやガバナンスを考慮しながらビッグデータ分析・活用のための統合基盤を構築するには、プラットフォームの可用性や耐久性も求められます。そこでKYB IoTプラットフォームはクラウドを利用して構築することにしました」(KYB 技術本部 DX推進部 古川 輝氏)

古川氏によると、同社では従来からクラウドの本格利用に向けた研究活動を続けており、IoT関連の仕組みを実現する上でどのクラウドサービスが適切かを検討していたという。その結果、Amazon Web Services(AWS)が適していると概ねの想定はついていたそうだ。

「本格的な検討を開始するにあたり、クラウドネイティブな仕組みの経験がなかったことからベンダーの力を借りることにしました。RFP(提案依頼書)を複数のベンダーに送付してコンペを実施した結果、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)を選定しました」(古川氏)

CTCの選定理由について、内藤氏は次のように話す。

「CTCには当初から技術の担当者も加わり、親身になって当社の要望を検討してもらえました。今回のプロジェクトでは必須でないものの、将来的には確実に実現したいというオプションの内容についても提案があり、予算的にも日程的にも実現可能なプランでした。アーキテクチャについては我々が想定していたものとは違い、やりたいことの本質やその後の運用も考慮した違う構成を提案されましたが、むしろ将来も見据えながらきちんと考えてくれたことに信頼感も生まれ、CTCと契約することにしました」(内藤氏)

効果

AWSクラウドの採用により大幅なコスト削減効果を獲得

KYB IoTプラットフォームの構築に向けたプロジェクトがスタートしたのは、2019年3月のことだった。そこから約半年間をかけ、まずは予知保全に対応する機能を実装することにした。具体的にはローカル環境のエッジデバイスにAWSクラウドの機能を拡張する「AWS IoT Greengrass」、センサーデータをクラウド上に収集して各種サービスに接続する「AWS IoT Core」、膨大なセンサーデータを蓄積するストレージサービス「Amazon S3」、センサーデータを入力して機械学習モデルを生成する「Amazon SageMaker」、サーバレスでコードを実行できる「AWS Lambda」、サーバレスでビッグデータ分析ができる「Amazon Athena」など、AWSが提供する様々な先進サービスを組み合わせ、KYB IoTプラットフォームを構築した。

今回構築したKYB IoTプラットフォームは、既に一部の工場で稼働する生産設備の予知保全に活用されている。

「予知保全の仕組みは稼働したばかりなので、現時点では定量的な効果を表すような数値を示すことはできません。ただし、KYB IoTプラットフォームによって設備管理部門の業務負荷が軽減されたことは間違いありません。またオンプレミス環境に構築した場合に比べてコストを数十分の一に抑えられたと試算しており、コスト削減という点では大きな効果が得られています」(KYB 技術本部 DX推進部 井指 諒亮氏)

プロジェクトはDX推進部の主導で進められたが、CTCの支援体にはメリットを感じているという。

「我々はプロジェクトをCTCに丸投げするつもりは一切ありません。ただし、全てを内製化することは難しく、CTCには一定の協力をお願いしています。共に成長していけるという意味でCTCを選定できたことは、当社にとって大きなメリットになりました」(井指氏)

今後の展望

予知保全の適用範囲拡大を予定 新たな価値を生む基盤として期待

現在は予知保全用途で活用されているKYB IoTプラットフォームだが、目指すところは「誰でも・いつでも・どこでも簡単にデータ分析・活用が行える基盤」として、生産性向上・品質向上・製品付加価値向上を実現することだ。

「予知保全については各工場の設備管理部門から引き合いも多く、順次適用範囲を広げていく方針です。また、予知保全以外にも既に複数の案件でKYB IoTプラットフォームを採用することも決まっています。今後は、新たな価値をもたらすビッグデータ分析・活用プラットフォームとして、多くの効果を生み出すと期待しています」(内藤氏)

最新のクラウド技術を取り入れたデータ分析・活用プラットフォームを運用し始めたKYB。CTCは同社の成長を支えるパートナーとして、今後も強力に支援していく。

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