安全なWeb 環境と渉外担当者のモバイルアクセス基盤を実現
銀行業務を通じて、地域社会の繁栄に貢献することを経営理念に掲げている株式会社 大分銀行。同行では、地域密着型金融を実現するフラッグシップビルとして、大分市の中心に「宗麟館」を設立した。同ビルでは、地域活性化のために「大分市中心部の賑わい創出」や「大分県各地域の情報発信」、「事業者のビジネス支援」などの活動を推進している。その大分銀行では、2013年からインターネット接続やシンクライアント端末の導入、そしてモバイル活用といった課題に取り組み、CTCのインテグレーションとCitrix製品を活用し、業務効率の改善と顧客サービスの向上を促進してきた。
課題と効果
- 課題
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- 行内からセキュアにインターネットへアクセスできない
- Windows®XPのサポート終了に伴う端末のリプレイス
- 渉外担当者が持ち出せるタブレット端末の導入
Citrix XenAppによるデスクトップ仮想化基盤
- 効果
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- DMZ(非武装地帯)にCitrix XenAppを導入、行内からのセキュアなインターネット接続を実現
- XenAppを活用し、これまでのシステム互換性を維持しながら約2,000台のシンクライアント端末を導入
- 安全で利便性の高いタブレット端末の活用
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- 株式会社 大分銀行
- 所在地
- 大分県大分市府内町3-4-1
- 設立
- 1893年
- URL
- https://www.oitabank.co.jp/
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株式会社 大分銀行
事務統括部
システム企画グループ
推進役植木 裕二 氏
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株式会社 大分銀行
事務統括部
システム企画グループ
推進役補那波 浩幸 氏
導入背景
安全かつ業務効率に貢献できるIT基盤の構築が求められていた
大分銀行が仮想化基盤の導入を推進してきた背景について、事務統括部 システム企画グループ 推進役 植木 裕二氏は、次のように説明する。
「2013年に当行の事務部門とシステム部門が統合されて、行内の業務改革やシステムの改善を推進することになりました。その時、我々は大きく3つの課題を抱えていました。それが、安全で利便性の高いインターネットへの接続と、Windows® XPのサポート終了に伴う各種の更新、そしてタブレットなどの活用でした」。
同行では、これまで安全性を最優先してインターネットを利用する端末は、行内LANから完全に分離し、外部のプロバイダを介してアクセスしていた。そのため、インターネット経由で得られたデータなどは、行内の厳密な承認基準を経たUSBメモリによって受け渡しをしなければならず、行員にとってインターネットの利用は業務の負担となっていた。また、2014年4月のWindows® XPサポート終了で、古い端末を新たな機器とOSに入れ替える必要があった。更新にあたっては、互換性の検証だけではなく、動かなくなる可能性のあるシステムの改修なども懸念されていた。さらに、渉外担当の行員からは、より迅速に安全に外出先で対応するために、タブレット端末を活用できないか、という要望もあがっていた。こうした課題を解決するため、植木氏は国内外の先進的な事例やテクノロジーをリサーチし、これまで取引のあった4社のシステムインテグレータに提案を求めた。
システム概要
Citrix 製品に精通しマルチベンダー対応の強みを評価してCTCを採用
「要件定義を出した4社の中で、もっとも提案の内容が優れていたのがCTCでした。第一のポイントは、我々が採用したいと考えていたCitrix製品に対する構築実績と経験の豊富さでした。第二のポイントは、マルチベンダー対応の強みです。特定のメーカーのハードウェアやソフトウェアに偏ることなく、当行が求める最善の組み合わせを提案してもらえる点に注目しました。さらに第三のポイントは、システムを構築した後の対応力です。仮想化技術導入後の新たなIT基盤での保守や運用については、あまり詳しくなかったため、仮想化環境を遠隔で24時間監視してもらえるCTCの運用サービスは非常に心強かったです」と植木氏はCTCを選んだ理由を語る。
CTCによって、最初に構築されたソリューションがセキュアなインターネット接続だった。構築されたシステムは、DMZ(非武装地帯)にCitrix XenAppを導入し、行内LANとは隔離されたブラウザ動作環境による安全でランニングコストが割安なインターネットへのアクセス環境を実現した。
「CTCと二番目に取り組んだのが、Windows® XPのサポート終了への対応でした。我々のリサーチとCTCからの提案を受けて、問題を解決するために選んだ方法が、XenAppを活用した仮想デスクトップとシンクライアント端末の導入でした。検討の段階では、何社かのデスクトップ仮想化製品を比較しましたが、総合的なサービス力における圧倒的な違いから、Citrixを採用しました。既存の個々のサブシステムでは個別最適化(サイロ型)された負荷分散装置を導入していましたが、サーバ仮想化基盤上へのシステム移行に合わせて全体最適化が可能なCitrix NetScaler SDXを採用しました。Citrixの仮想基盤もNetScaler SDXの負荷分散機能を利用しており、これにより全体的な運用負担が軽減され、コストメリットも享受できました」と植木氏は説明する。
導入前の懸念となっていた古い行内システムへのアクセスは、XenAppでInternet Explorer® 6を利用することで、既存のシステムを改修することなくアプリケーションの互換性を確保した。そして、三つ目の課題に取り組んでいた推進役補の那波 浩幸氏は、その解決策について次のように振り返る。
「実は、XenAppによる仮想化基盤を構築したことによって、三つ目の課題だった安全で利便性の高いタブレット端末の活用にも、この基盤がそのまま使えるという恩恵が得られました。行員が利用するiPadにCitrix Receiverをインストールして、外部からセキュアに接続できる環境さえ整備すれば、行内でシンクライアント端末から仮想デスクトップを使うような感覚で、外出先からのアクセスを実現できるのです」。
導入効果
高度なセキュリティの確保とコストの低減、さらには日々の運用負担の軽減にも貢献
CTCによるインテグレーションによって、大分銀行では行内端末からのセキュアなインターネット接続を実現し、Windows® XP端末からシンクライアント端末へのリプレイスも推進できた。そして銀行業務に大きく貢献する高度なセキュリティの確保や業務効率の向上を実現し、導入コストの削減にもつながった。
「おそらく、新規のOSやWebブラウザに対応するために旧システムを改修していたら、時間もコストも仮想デスクトップとシンクライアント端末の導入に比べて、数倍の負担になっていたと思います。加えて、現場からはシンクライアント端末になって端末の起動やアプリの動作が速くなったという評価が得られています。以前は、週に一回ウイルス検査のフルスキャンが実行されて、端末が数十分にわたって使えなくなる、という問題もあったのです。それが、OSもアプリケーションもXenAppで仮想化されたことにより、待ち時間がほとんどなくなりました」と植木氏は導入の成果について評価する。
「実は今回のシステム構築によって、我々の業務負担も大きく低減されました。その代表的な成果が、行内に提供しているサポートデスク業務の大幅な負担の削減です」と植木氏はさらなる導入の成果を語る。
シンクライアント端末を導入する以前は、Windows® XPを搭載したPCにトラブルが発生すると、システム企画グループでは、端末を回収し時間をかけて修理を行っていた。しかし、シンクライアント端末になったことで、トラブルが発生しても端末を交換するだけになった。また、シンクライアント端末にはWindows®やアプリケーションなどが搭載されていないので、ソフトウェア的な障害も発生しなくなり、サポートデスクの負担も低減された。
今後の展望
ワークスタイル改革への取り組みとBCP/BCM対策への提案を期待
CTCとCitrixのソリューションによって、IT基盤のシンプル化と過去の資産との互換性の継承、さらに情報漏洩リスクの極小化に成功した大分銀行では、すでに次のステップに向けた全体構想を描き、その実現に向けた計画を推進している。
「今回の構築基盤を活用して、今後はワークスタイル改革に取り組んでいく計画です。当面の予定は、Citrixの仮想基盤を活用して行員が持ち出したタブレット端末からイントラネットを利用できるようにしていきます。また、在宅勤務や災害対策などに対応できる自宅からの利用なども検討しています」と那波氏は今後の構想を話す。
ワークスタイル改革への取り組みに加えて、システム企画グループとしても、さらなるIT基盤の安定化への取り組みも検討している。
「今後は集中化したシステムの安全な保護や事業継続性の維持にも注力したいと考えています。CTCには、クラウド活用なども含めて、当行の求めるBCP/BCM対策への提案を期待しています」と植木氏は抱負を語った。