価値観は時代と共に変わる。自動車にも「移動手段として」だけではない新たな価値が求められる。さらには環境問題も避けては通れない。その中で、自身も大きな変化へと舵を切っているのがトヨタ自動車だ。
変化はシステムでも支えていく。「デジタルという道具」を活用し、仕事の進め方や商品の価値をどう変えていくのか、車の開発に携わる人間だけでなく、車に関わるあらゆる人に変革をもたらす基盤づくりを目指している。
新たな基盤のキーとなるのがローコード開発プラットフォーム「OutSystems」だ。導入以来10年にわたって、トヨタシステムズと共に全社横断での活用を進めてきた。
課題と効果
- 課題
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- レガシーシステムのモダナイズが急務な中、「早く・安く・うまく」開発する方法の確立
- 開発人材の高齢化を見据え、開発言語の壁を低くし利用できる開発プラットフォームの整備
- 基幹システムでも安心・安全に利用するための組織・文化の醸成
- 効果
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- OutSystemsにより、30%の工数削減など開発生産性が大きく向上
- 開発言語の知識がなくても、アプリケーションを作成できる開発プラットフォームの実現
- 共通部品作成・標準ルール策定・人材育成などを担うCoEを立ち上げ、全社展開を加速
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- トヨタ自動車株式会社
- 創立
- 1937年(昭和12年)8月28日
- 所在地
- 愛知県豊田市トヨタ町1番地
- URL
- https://global.toyota/jp/
- 会社名
- 株式会社トヨタシステムズ
- 創立
- 2019年1月1日
- 所在地
- 愛知県名古屋市中村区名駅1-1-1 JPタワー名古屋32F
- URL
- https://www.toyotasystems.com/
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トヨタ自動車株式会社
情報システム本部長
日比 稔之氏
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トヨタ自動車株式会社
IT業革推進部長
稲垣 篤氏
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トヨタ自動車株式会社
IT業革推進部
ビジネス業革推進室 グループ長松永 裕樹氏
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株式会社トヨタシステムズ
エンタープライズIT本部
副本部長 兼 部品表活用IT部長近藤 眞司氏
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株式会社トヨタシステムズ
部品表活用IT部
副部長 兼 基盤・工程G GM舟橋 徹氏
導入背景
システムが老朽化する中、より「早く・安く・うまく」開発する方法を模索
発端は2015年に遡る。トヨタ自動車ではこれまで自社で開発・構築してきたレガシーなシステムを、どうモダナイズし、足りない部分をどのようにカバーしていくのかが課題となっていた。
「今後はIT人材がグローバルで不足するとも言われ、いわゆるDXをどう起こすのか、どのような道があるのかを検討し始めました。まずは、私が担当していたレガシー化していたシステムについて、アドオンするかたちで早く・安く・うまく開発する方法がないかを模索することになりました(稲垣氏)」
当時、チームメンバーの1人が注目していたのが、“超高速開発ツール”と呼ばれていたローコード開発プラットフォームである。これならば、できるだけ早く・品質のよいものをユーザーに提供できる。基幹システムは長く利用するだけに、できるだけ早く新機能を提供し、使い始めてから改善したい、という考えにもフィットする。
「Java/COBOL/PL1など開発言語を使える人材が高齢化していく中で、言語に関する知識がなくても使えるプラットフォームをと考えていました。また若いエンジニアのモチベーションを高めるためにも、モダンなアプリケーション開発ができるローコード開発プラットフォームは魅力的でした(稲垣氏)」
ポルトガル・リスボンを訪問。社風・文化まで知ったうえで、ツールを選定
様々な製品がある中で候補となったのが、OutSystemsだ。
「前提として、海外グループ会社への展開も視野に、グローバルでサポート体制を持つ海外ベンダーが良いと考えていました。OutSystemsなら、開発言語を学ぶ必要がなく、早く・安く・うまく開発するという要件も満たせると感じました(稲垣氏)」
ただ、ローコード開発プラットフォームは1度導入すれば、長く利用することになる。社風などが見えないまま利用するのは不安だと、本格的に採用する前にポルトガル・リスボンのOutSystems本社を訪問した。
「実際に役員や製品開発している方々とお会いし、社風や文化、会社としての考え方を伺って、トヨタ自動車と考え方が似ていると感じました。開発の進め方や会社運営などもTPS(トヨタ生産方式)に通じるところがあり、本格的に採用することを決めました(稲垣氏)」
システム概要・導入効果
従来と比較し30%の工数削減。本格展開とあわせて、アジャイル開発も推進
PoCにより、従来の開発と比較して30%の工数削減と大きな効果がみえてきた。2017年から板金サブシステムへ適用し、本格展開を開始。ちょうどトヨタ自動車内で生産性向上・リードタイム短縮を目指す取り組みが動き出したこともあり、生産性向上のために「OutSystemsを使いたい人は使う」というニュートラルなスタンスで展開をスタートし、活用するプロジェクトを支援するサポートデスクなどの体制を整えた。
「最初は、基幹システムで利用して本当に問題がないのか、運用は大丈夫なのかと懸念の声も多くありました。それを払しょくするためにも、CTCから参加してもらった有識者を中心にサポートデスクを構成し、あらゆる質問に対応できるようにしました。ただ、全てCTCに任せるのではなく、トヨタシステムズからもメンバーが参加し、社内にもノウハウを貯められるようにバランスをとりました(稲垣氏)」
また、アジャイル開発の適用も進めた。板金システムに続き取り組んだ試作部品調達生産管理システムの開発では、フレームワークとして「SAFe(Scaled Agile Framework)」を採用。エンドユーザー部署にも理解を得て、月1回、1日かけて要件を見直し、調整しながら開発をおこなった。ある程度大規模なプロジェクトにも適用でき、ウォーターフォール開発よりも無駄なくスピーディに進められた。
「ウォーターフォール開発では、要件定義を始めてから完成まで2年近くかかることも珍しくありません。要件定義で必要だったものが、2年後には不要なことも多くあります。アジャイル開発ならこういった無駄を省き、本当に必要なものだけをタイムリーに提供できるようになります(稲垣氏)」
共通化・標準化・人材育成から効果測定まで、グループ全体での活用を支えるCoEチーム
2020年には、トヨタグループ全社への展開を推進すべく、CTCのサポートを受けCoEチームを立ち上げた。共通部品の開発や標準ルールを策定することで、グループ全体で活用しやすくなるよう取りまとめをおこなう組織だ。さらには、実際に開発を担う外部ベンダーとの関係性強化、ナレッジの展開を目指し、外部ベンダーの人材育成までカバーする。
「CoEではOutSystemsが適したケースなども整理していきました。例えば、トヨタ自動車はバッチ処理が多く、OutSystemsで作り直す以外にも、基幹システムとの連携も踏まえて既存のままがよいと判断したり、ETLツールを代用したりと、様々な選択肢があります。また、レガシーシステムの改修ではデータ移行の問題もあり、OutSystemsの内部DB/外部DBをどう使い分けるのかなども難しいところもありましたが、CTCのメンバーや、OutSystemsの技術者とも意見を交わしながら、CoEの中である程度の基準を設けることができました(近藤氏)」
ほかにも、社内向けサイトにプロジェクト事例を公開しているほか、だれでも受講可能なe-ラーニングを提供するなどグループ内での広報活動を進めている。
「年間10~20件ほどの問い合わせも、最近はコーポレート系の部門からの相談が増えています。エンドユーザーコンピューティングの領域に関する相談も増え、OutSystems活用のすそ野が広がったと実感しています(舟橋氏)」
もう1つ、CoEで大きな課題となっていたのが、生産性の効果の測り方である。OutSystemsにより開発効率が向上したと言っても、プロジェクトごとに異なる事情を抱える中、どう数字で表すかが難しい。
「最初は、OutSystemsの成果物を無理矢理ステップ数に換算して評価したのですが、現在はファンクションポイント法を採用しています。CTCからファンクションポイント算出を自動化するツールの情報を提供いただき、まずは過去の全プロジェクトを対象に、規模を算出しました。ウォーターフォールやアジャイルなど開発手法も生産性に影響しますが、ファンクションポイントにより“こういったプロジェクトではこの程度の生産性向上が見込める”など、プロジェクトごとの特性も把握できるようになりました(舟橋氏)」
今後の展望
OutSystemsは当たり前に使われるツールに。クラウドも含めさらなる活用を目指す
現在、国内外グループ23社で利用、トヨタ自動車では分野を問わず70以上のプロジェクトで利用されている。導入から10年を経て、いまやOutSystemsは、当たり前に開発の選択肢に挙がるようになった。ユーザーの要望にもスピーディに対応できるようになるなど、全体的な満足度向上にもつながっている。
「これまでは開発の生産性を重要な指標としてきましたが、これからはアプリが提供する価値を測る方向にシフトしたいと考えています。価値はさらに評価しづらいものですが、システムとしてはどのような価値を提供できるかがより重要ですから(近藤氏)」
また、新しいプラットフォームである「OutSystems Developer Cloud(以下、ODC)」にも期待を寄せる。
「これまではオンプレミスを前提としていましたが、インフラ面がスピードのボトルネックになります。クラウドシフトの方針も出る中で、ODCはユーザー数が増えた場合などにもオートスケールできるなど、軸をぶらさずに開発スピードを高められるソリューションとして注目しています。CTCにもODCの技術検証などを含めて、サポートを期待しています(松永氏)」
「生成系AIも登場し、今後は技術が分からない人でもアプリケーションを作れる世界になっていくと思います。一方で、アプリケーションの中身がブラックボックスになってしまうのでは問題があります。OutSystemsには、最新技術を取り入れながらも、トレンドに振り回され過ぎない地道な開発をお願いしたいです(稲垣氏)」
「現在、自動車には移動手段だけではない新たな価値が求められています。デジタルはどこまでいっても手段であり方法論。我々はデジタルという道具を活用し、仕事の進め方や商品価値をどう変えるか?が軸となります。車の開発に携わる人だけではなく、車という移動手段に携わる皆さんと一緒に業界を盛り上げていく基盤作りを目指してききます(日比氏)」
関連資料
OutSystemsに関連する資料のダウンロードは、下記のリンク先をご覧ください。
- ※ OutSystems® とロゴはOutSystems-Software Em Rede S.A.の登録商標です。