コラム

ハイパーコンバージド製品の本命「HPE HC380」を実運用の観点から検証

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ハイパーコンバージドは本当に実運用で使えるのか?CTCが独自に行った検証結果と共に、企業インフラの今後を語ります。

  • HPE HC380

仮想化技術、ハードウェアの進化と共に、ITインフラを取り巻く環境も大きく変わろうとしている。そんな中、急速に盛り上がりを見せているのがハイパーコンバージドインフラストラクチャ。2016年4月に“本命”と名高い「HPE HC380」が登場し、伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)ではお客様に安心して導入いただけるよう他社に先駆けて詳細な検証を行った。ハイパーコンバージドは本当に実運用で使えるのか?CTCが行ったHC380の検証結果と共に、日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)の服部 真也氏を迎え、企業インフラの今後について伺った。

対談者集合写真

左から
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 製品・保守事業推進本部 ITインフラ技術推進第1部
プラットフォーム技術推進課 國分 学
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 製品・保守事業推進本部 ITインフラ技術推進第1部
プラットフォーム技術推進課 エキスパートエンジニア 水上 貴博
日本ヒューレット・パッカード株式会社 サーバ事業統括本部 事業企画本部
パートナービジネス推進部 服部 真也
※敬称略

ハイパーコンバージドの導入に対するハードルが下がり、採用が増えている

ハイパーコンバージドという名前を聞いたことがある方は多いだろう。サーバやストレージからハイパーバイザーまでをオールインワンで提供する仮想化アプライアンスである。検証済みの統合環境を迅速に入手できる一方、高額な製品も多く、“高嶺の花”という印象も強かった。ところが、昨年あたりから“Software Defined”技術の進化と半導体ディスクの価格下落による製品の低価格化を背景に、仮想化基盤の現実解として注目を集めている。

服部:ハイパーコンバージドが登場した当初は既存の仮想化基盤との違いもあり、新しいものへの抵抗感も強くありました。ですが、そもそもITインフラを利用する以上、ハードウェアの老朽化やテクノロジーの進化にあわせた“移行”が欠かせません。HPEではこの移行をいかに容易にするかを突き詰めると共に、既存環境の変化を極力小さくするよう取り組んできました。その結果、簡単に移行でき、今までどおり使え、しかもこれからお話しするハイパーコンバージドのメリットを得られるようになります。こうした価値が評価され、移行や統合のタイミングで選んでいただけるケースが増えています。

服部氏
水上

水上:昨年度、ハイパーコンバージドの市場は日本で約40億円程度と言われており、今年度の成長率は100%を超えるという予測も出ています。それにあわせて様々なITベンダーが昨年12月ごろから次々に新製品をリリースしており、市場全体が盛り上がっているのは間違いない事実でしょう。今後、比較的短い期間でハイパーコンバージドへのシフトが進むと思われます。

実績・信頼性は抜群!業界標準のサーバをベースとした「HPE HC380」

そんなハイパーコンバージドの本命として期待されるのが、2016年4月にリリースされた「HPE HC380」。その特長は既存のハードウェアをベースに採用したことで、高い品質・信頼性を実現している点にある。

HPE Hyper Converged 380 (HC380)

HPE Hyper Converged 380 (HC380)

服部:ハイパーコンバージドは仮想基盤をサーバだけで実現するアプライアンスですが、HC380では業界標準のサーバである「HPE ProLiant DL380」をベースとすることで、移行のハードルをグッと下げました。今まで使っていた運用管理ツールもそのまま使えますし、サポートも変わりません。

水上:日本市場では、使い慣れた製品・実績のある製品が好まれる傾向があります。弊社でも数多く売れているサーバであるDL380を採用したHC380は、品質も高く、自信をもって提案できます。お客様からの信頼も厚く、まさにみんなが待ち望んでいた製品です。

國分

國分:メーカーによってはハイパーコンバージド専用にインフラごと開発した製品もありますが、安定性や実績を考えるとDL380は群を抜いていますし、CTCが培ってきたサイジングや設計のノウハウを活かせます。また、検証済みのアプライアンスなので、サーバやストレージを個別に組み合わせて検証する必要がないことも魅力です。移行時だけでなく、導入後もこういった検証が必要ないのは大きなメリットです。

Software Defined Storageにより、共有ストレージが不要に!

服部:従来の仮想化基盤では共有ストレージが必須でしたが、HC380ではSoftware Defined Storage(SDS)を搭載し、共有ストレージが不要になります。SDSも2007年からProLiantと共に提供している「HPE StoreVirtual VSA」で実現しており、実績も十分です。

水上:日本ではIT管理者が少ない企業も多く、物理的にシンプルにしたいというニーズは強くあります。特に共有ストレージは独自の知識が求められますし、なくしたい企業も少なくないでしょう。SDSを使うと容量とIOPSをスケールアウトできるのも嬉しいですね。

ハイパーコンバージドは本当に簡単なのか?「HPE HC380」の“実用性”を検証

シンプルな構成と容易な管理を実現できると聞くと理想的な製品に思えるが、実際はどうなのか?そこで今回、CTCでは実運用の視点と環境でHC380の検証を実施した。細かなシナリオを設定してのHC380の本格的な検証は、今回のCTCが初めてだという。

服部:HC380はアプライアンスとして最大公約数の使い方を想定し、多くの方がそのまま使えることを念頭に開発しています。ですが、実際の環境ではいきなり全ての仮想化基盤を移行するというのは現実的ではありません。既存インフラの一部を移行した際にどうなるのか、今までのインフラと比較して何が変わるのか、どこに適しているかなどを実運用の観点からCTCさんに検証していただいたのは私たちにとっても大きな価値があります。

國分:既に実績のあるハードウェアやハイパーバイザーの検証はある程度割愛し、HC380が「統合的に、正確に動くか」を主眼に検証しました。結論をまとめると仮想環境としての品質は十分です。今回の検証では、仕組みを理解しなくても正常に使えることを確認すると共に、我々エンジニアが裏側の仕組みや設計、コンセプトまでしっかり理解できました。検証で得られたノウハウを、より適した活用法の提案などにつなげられると思います。

水上:わかりやすい検証結果をひとつ紹介するとインストール時間ですね。インストーラを使って15分、その後の設定作業を入れても40分ほどで完了しました。実は、もう少し時間がかかるのではと思っていたので、この時間で終わったことに驚いています。今回は3ノード構成で検証しましたが、台数が増えれば増えるほど短時間導入のメリットも大きくなります。またインストーラを使うので、作業者のスキルに依存せずに導入品質を担保できます。

「仮想マシンの自動販売機」の使い勝手は?

ITインフラを考える上で、無視できないのがクラウド。HC380では仮想サーバをクリックだけで作成できる“クラウド的な”使い方を実現している。それが“仮想マシンの自動販売機”というコンセプトであり、これを実現するのが、今回新たに実装された「HPE OneView User Experience」という管理ツールだ。

國分:HPE OneView User Experienceでは、確かにサーバの配置やリソース割り当てを気にせずに、仮想マシンを作れました。スモール・ミディアム・ラージから選んで、ホスト名とIPアドレスを入力するだけなので、まさに自動販売機ですね。ただ、自動販売機なので「100本買いたい」となると大変、というのが正直な印象です。ほかにも、自動でバックアップやレプリケーションがついているプランが選べたらもっといいですね。データ量がどんどん増えている今、実際の環境ではそういうケースもあるでしょうし、今後の要望としてHPEさんに伝えています。

服部:まさにそこは実運用の観点から見えてくるニーズですよね。このような検証のフィードバックを、今後、HC380をより良くしていくために利用していきたいと考えています。

「仮想マシンの自動販売機」を実現 HPE OneView User Experience

「仮想マシンの自動販売機」を実現 HPE OneView User Experience

ハイパーコンバージド導入成功のカギは“適材適所”

ITインフラがシンプルになり、管理が容易になる、と魅力の大きいハイパーコンバージドインフラ。導入が進んでいるのもうなずける。だが、仮想化基盤を全てハイパーコンバージドに置き換えればいいかというと、そういうワケではない。

水上:確かにハイパーコンバージドはトレンドですし、仮想化基盤の半分以上がハイパーコンバージドになる未来がくるのではと思っていますが、全ての仮想化基盤がハイパーコンバージドになるとは思いません。IT管理者が少ないケース、例えば地方のブランチオフィスに設置する場合などは適していますが、「カスタマイズしたい」「自社の仕様にあわせたい」という場合は、これまでどおりの柔軟に構成できる仮想化基盤が適しているでしょうし、物理環境を提案するケースも残るでしょう。導入の勘所を見極め、適材適所での活用を提案することが私たちの役割だと思っています。

服部:ハイパーコンバージドが目指すのは、「多くのユーザーがそのまま使えること」です。さらに移行のハードルを最小限にするために、HC380は先進性と安定性のバランスをとり、安心・確実な環境を提供しています。実運用における適材適所や便利なポイントを組み合わせることで、よりよいインフラになるはずです。そのためにもSIを中心とするCTCさんのようなパートナーとの密な連携が欠かせません。

仮想環境を統合し、よりシンプルにするハイパーコンバージドだが、HC380に移行すれば終わりというわけではない。HPEでは、次なるITインフラの理想形として、ハイパーコンバージドで実現したコンセプトを、物理環境も含めた全てのインフラで汎用的に利用できる「コンポーザブル インフラストラクチャ(HPE Composable Infrastructure)」というビジョンを描いている。この新たな技術が登場したとしても、HC380をはじめとするハイパーコンバージド環境であればスムーズに移行できることは間違いない。未来のインフラを手に入れる最初の段階として、まずはできるところからハイパーコンバージドへ移行することが現時点での最適解と言えそうだ。

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