Technical Report
IoTにつながるデータ分析の系譜
今後の進展が期待されるIoT。
モノの状態をデータ化して分析する一連の流れは、1990年代のコンピュータの普及と共に始まりました。
ここではデータ分析の系譜を紐解きながら、CTCのIoTサービスを紹介します。
IoTとは
IoT(Internet of Things)とは、モノのインターネットと言われる通り、テレビや冷蔵庫といった家電や、カーナビ、建設機械等、あらゆるモノがインターネットに接続されることを指しています。モノにセンサーが取り付けられ、インターネットに接続することで、状態をリアルタイムに把握できるようになり、素早く適切なアクションをとることが可能になります。車に取り付けられたセンサーから部品の状況を把握することで故障前に部品を交換したり、ウェアラブル端末を装着し活動量や健康に関する情報を取得したりすることで、利用者の健康維持・改善につなげられるようになります。IHS Technologyの推定によれば、2015年時点でインターネットにつながるモノ(IoTデバイス)の数は154億個であり、2020年までにその約2倍の304億個まで増大するとされています。とりわけ、成長率の観点からみると、「自動車」や「産業用途」の分野でのIoTデバイス数の増加が見込まれています※1。
IoTに至る変遷
IoTは、2つのITの潮流が重なったものとみなすことができます。1つはデータ分析、1つはデバイスです。
1990年、米国のコンピュータサイエンティストWilliam H. Inmonがデータウェアハウス※2という概念を提唱しました。この頃、企業が持つ各種の情報をより早く収集し活用するために、データを多次元的に分析するOLAP※3といった技術が用いられましたが、これまでのデータベースとの組み合わせでは、性能に限界がありました。データウェアハウスとはデータを活用・分析したいというニーズにこたえるための、スピードを追求した専用のデータの集合体・倉庫にあたるものです。OLAPは企業の意思決定を支援するビジネスインテリジェンス※4として進化を遂げ、企業が持つ各種の情報を分析するために、使いやすさや性能、表現力が向上してきました。その後、徐々にデータ活用の手法が高度化し、1990年代の中頃には、データウェアハウスに貯まったデータを統計学等のデータ解析の技法を用いて、将来を予測するといった新たな知見を取り出すデータマイニングが確立されました。流通業や金融業等では、特定の商品と一緒に売れている別の商品を推定したり、顧客の購買傾向を把握したりと、主にマーケティング施策で活用されています。2010年には、コンピュータの性能が飛躍的に向上して大量のデータが扱えるようになり、いわゆるビッグデータを使った解析がさかんに行われるようになってきました。関心のある状況のデータをリアルタイムに収集して分析する。IoTはこのデータ活用の流れを更に発展させたものになります。
一方でデバイスについては、2000年頃にユビキタスネットワークという言葉で、いつでも、なんでも、どこでも、誰でもがつながる社会が提唱されていました。これがIoTの原型です。当時はセンサーとしてRFIDが考えられていましたが、近年になり、デバイスの低価格化・低電力化、ネットワークの高速化・多様化が進み、RFIDとは異なった形でユビキタスの実現に近づき、IoTがより活用できるものとなってきました。
なぜIoTがこれほど注目されているのかといえば、IoTの導入により従来型の産業の構造を一変させるような大きなインパクトが想定されているからです。モノがインターネットにつながり、あらゆる状況が数値化・データ化され、蓄積されてデータ分析の対象になります。更に近年急激に進化しているAI(人工知能)技術により、コンピュータに学習させることで、これまで気づかなかったような事象への対応や、人の手を介さない自動化による効率化を図れるようになりました。
- 総務省「平成28年版 情報通信白書 第1部 特集IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~」から
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/ whitepaper/ja/h28/html/nc121100.html - データウェアハウス
William H. Inmonの定義によれば、意思決定の目的のために時系列で蓄積され、削除や更新のないデータベースのことを指す。 - OLAP(オンライン分析処理 online analytical processing)
データを多次元的にかつ高速に分析する手法のこと。売上表や市場分析で活用される。 - ビジネスインテリジェンス(BI)
企業内のデータを分析して意思決定に役立てる概念及び手法。データウェアハウスやOLAP、レポーティング等もBIツールと数えられる。
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