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Technical Report

材料で社会を豊かに
応用が期待されるナノスケールの材料解析

自己修復する樹脂、水素エネルギー、バイオ材料など、材料開発は豊かな社会の実現に欠かせません。
ここでは、近年盛り上がりを見せるナノスケールの解析技術を中心に、材料開発の動向を踏まえつつ、CTCの新しい取り組みを紹介します。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 科学システム本部 CAEソリューション営業部 小林 弘明

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
科学システム本部
CAEソリューション営業部

小林 弘明

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 科学システム本部 アプリケーションサービス部 森 一樹

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
科学システム本部
アプリケーションサービス部

森 一樹

博士(工学)

社会に貢献する材料解析

自動車、エネルギー、健康・医療などのあらゆる分野で、豊かな社会の実現に貢献する技術として新しい材料の開発に注目が集まっています。新材料開発は古くは錬金術に始まり、産業革命を経て、金属、セラミックス、高分子材料(ポリマー)などの材料分野で発展してきました。

材料は、結晶構造や結びついている元素の組み合わせで、比重、弾性、導電性、耐熱性、熱伝導性など大きく異なります。材料解析は、組み合わせや構造から電気や熱などの特性を計算やシミュレーションで導き出し、性能や耐久性に優れた材料の創出にかかる期間を短縮します。

材料解析の進展

材料解析は、計算手法とコンピュータの性能に支えられています。計算手法は、対象となる組織の大きさ(スケール)によって大きく異なります。目に見える範囲の大きさに関する分析はマクロスケールと呼ばれ、対象を細かく分割してモデル化する有限要素法や微視的な構造を無視する均質化法などが使用されています。原子や分子のようなナノスケールでの解析では、実験によらず量子力学に基づいた第一原理計算や分子動力学計算が確立されてきました。しかし、第一原理計算では、その計算量が原子の数の3乗に比例して大きくなるため、実用的な数の原子を解析するには膨大なコンピュータリソースを必要とします。

近年、並列計算やGPU、クラウドなどのコンピュータ技術が発展し、空間や時間の微小な単位まで取り扱いができるようになってきており、ナノスケールの材料解析が注目を浴びつつあります。また、コンピュータの進展に伴い、ビッグデータや機械学習などのデータサイエンスの技術を使用して物質・材料の物理的・化学的特性に関する膨大なデータを分析し、材料探索を進める「マテリアルズ・インフォマティクス」という分野も台頭してきました。

マテリアルズ・インフォマティクスの代表的な事例は、2011年にアメリカが国家プロジェクトとして開始したMaterials Genome Initiativeです。このプロジェクトは、材料開発のコストと期間を削減することを目的にしており、生物学でのゲノム解析を示唆しつつコンピュータによる解析技術を駆使して新材料の開発プラットフォームを形成するものです。

また、ここ数年盛り上がりを見せている量子コンピュータも分子構造や化学反応についての応用が期待されており、実用化に伴い材料開発が大きく進展するでしょう。

CTCの材料解析ソリューション

CTCは、30年以上前から材料解析に携わっており、熱力学に基づくミクロ組織の諸性質に関するシミュレーションを中心にマクロスケールの機械特性予測まで、コンサルティングやサポートを含めてマルチスケールな材料解析ソリューションを提供しています。

ミクロ・マクロスケールでは、合金の分野を中心に熱力学平衡や状態図を計算するソフトウェア「Thermo-Calc」、合金の凝固や固相変態のミクロスケールの組織変化を予測するソフトウェア「MICRESS」などがあります。

Thermo-Calc

統合型熱力学計算ソフトウェア。スウェーデンのThermo-Calc Software社が開発。様々な熱力学データベースを利用することで、合金開発をはじめ、材料科学、冶金、半導体開発、(無機・有機)化学、地球化学などの様々な分野の熱力学計算に適用可能。

MICRESS

ミクロ組織形成予測ソフトウェア。ドイツのACCESS社が開発。熱力学的に評価された界面駆動力により多相及び多結晶で構成されたミクロ組織の時間変化を計算するマルチフェーズフィールド法で、合金の形成過程についての計算が可能。

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