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Technical Report

材料で社会を豊かに
応用が期待されるナノスケールの材料解析

ナノスケール解析クラウド「Exabyte.io」

ナノスケールについては、2015年頃からミクロ・マクロの材料解析で蓄積したノウハウを含めて解析サービスの開発に着手しました。2018年には固体の物性に関する解析やモデリングで材料のナノスケールの設計や開発を支援するクラウドサービスExabyte.ioの取り扱いを開始しています。

Exabyte.ioは、Webブラウザ上で操作可能なアメリカExabyte社のクラウドサービスです。使用に応じた課金のため解析にかかるシステムやソフトウェアなどの投資を抑えることができます。また、計算の負荷に合わせてコンピュータリソースの増減を柔軟に行うことができ、システム負荷の高い計算にも対応可能です。

また、上述のMaterials Genome Initiativeでは、結晶構造や相図などの第一原理計算の結果からなるオープンな大規模データベースMaterials Projectを提供しており、Exabyte.ioはこのデータベースとも連携しています。元素入力だけで関連する結晶データの全てを取得でき、各物性の解析やメカニズムの解明には各々ワークフロー及びモデラーも用意されているため、解析時間の大幅な短縮が期待できます。計算データを蓄積し、機械学習で物性を予測する機能なども搭載しています。

膨大な計算リソースが必要なナノスケールの解析は、Exabyte.ioのようなクラウド型のソリューションが今後主流になってくるでしょう。アメリカと日本では、注力している材料が異なるため、CTCが培ったナノスケールの解析技術やデータも活用してExabyte.ioの新機能の開発にも参画しています。

Exabyte.ioの画面イメージ
Exabyte.ioの画面イメージ

求められるマルチスケール

ナノスケールの材料解析が実用の段階に入ったことで、今後各スケールを統合したアプローチが求められてきています。アメリカ・ミシガン大学のアリソン教授は、材料の開発に関しての情報を統合し、マルチスケールでのデータ連携のモデルを形成するICME(Integrated Computational Materials Engineering)というコンセプトを提唱しています。実現はまだこれからになりますが、研究が進めば、材料開発を更に加速することになるでしょう。

CTCでも2017年、鉄鋼の鋳造から圧延をテーマに、ミクロ・マクロスケールの均質化法計算、有限要素法と、ナノスケールの分子動力学計算、第一原理計算を用いてマルチスケールの計算ソリューションを開発しています。今後も、ナノスケールの解析技術やマルチスケールの解析ソリューションを拡充し、豊かな社会の実現に新材料の創出で貢献していきます。

出典:Best Engine Vol.6

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