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Technical Report

デジタル社会に求められる人と組織とは
~産学連携による教育イノベーション~

近年のテクノロジーの進化は、データを活用した産業革命を可能としデジタル社会を実現しました。
新しい価値が生まれ、既存のビジネスモデルは破壊されていく中で、企業が成長していくためには人や組織はどうあるべきかについて考察します。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 技監 ビジネス開発事業部長 野村 典文 博士(数理情報学)

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
技監
ビジネス開発事業部長

野村 典文

博士(数理情報学)

デジタル社会とは

デジタル社会について、人によって捉え方は異なるものの、大まかに言えば、リアルな「モノ」や「サービス」を「デジタル化(非物質化)」することで新しい事業価値が生み出され、文化、産業、人間のライフスタイルを一変させていく社会と定義することができます。

その出現の原動力は近年のテクノロジーです。センサーやデバイスの技術進化はリアルな社会の状態をデジタル化させ、高速通信、メモリやディスクの大容量化によって、それらのデジタル情報をビッグデータとして収集することが可能となりました。更に、コンピュータ性能の向上により膨大なビッグデータの解析が可能となったことで、ディープラーニングなどのAI技術を発展してきました。このように、データを活用した産業革命が進行しつつあります。

デジタル社会に求められる新たな仕掛け

デジタル社会は、多様な集団がつながることで新たな価値が創出されていく社会です。ここで求められる仕掛けが「オープンイノベーション」になります。オープンイノベーションは大きく以下の4つの要素から成ります。

ビジネスモデル

テクノロジーイノベーションだけではなく、テクノロジーを活用して事業価値を上げ、収益モデルを変革することで新たなビジネスが生まれます。

エコシステム

大学、公的機関、企業がつながり資金やモチベーションが循環する仕組みが重要となります。この循環の中で、再び新たなテクノロジーが生み出されるという成長のサイクルがデジタル社会を支えます。

開発プラットフォーム

デジタル社会はスピーディに変化し、価値を生み出すためのテクノロジーもどんどん進化していきます。より俊敏に立ち上げる環境と顧客からのフィードバックをスピーディに受ける仕組みが必要になります。

データプラットフォーム

デジタル化の本質はデータです。データを活用する仕組み(収集、分析、活用)が根底にあり、特に膨大なビッグデータを解析するデータサイエンスが最も重要と言えます。

デジタル社会に求められる組織と人

デジタルビジネスは、既存のビジネス形態と異なる部分が多く、従来の組織から新たな組織への変化が求められます(表1)。

表1 従来の組織とデジタル社会に求められる組織の特徴
従来の組織 デジタル社会に
求められる組織
責任とKPIによる
縦割り組織
フラットでオープンな
集合体
綿密な計画/
ウォーターフォール
柔軟な対応/
アジャイル
マスマニュファクチャリング マスカスタマイゼーション
効率性重視 創造性重視
モノ思考 体験思考
コントロール 自律
専門知識、
画一性
ソフトスキル、
多様性

上に述べたようなオープンイノベーションを推進する人材として、「デジタルビジネスデザイナ」、「デジタルエンジニア」、「データサイエンティスト」が求められています。三位一体のチームを編成し、活動することができれば未来のデジタル化社会を発展させることができるでしょう。

デジタルビジネスデザイナ

デジタルビジネスを企画し推進していく人材。ビジネスデザイン力に加えて顧客体験のデザイン力が求められるため、日頃から、観察力や洞察力を養う訓練が必要になります。更に、エコシステムを作り上げるための社内外の有識者とのコラボレーション力やファシリテーション力も身に付ける必要があります。

デジタルエンジニア

デジタル情報を活用した仕組みやシステム構造(アーキテクチャ)を設計し、実装していく人材。技術力に加えて、要求を把握するための顧客体験の理解力や人間中心のデザイン力が必要となります。

データサイエンティスト

デジタルデータから社会課題の原因やビジネス高度化の要素などを導き出すために、データ分析力に加えてビジネス分野で物事を捉える力が必要となります。

記載内容は掲載当時の情報です。最新情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

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