Technical Report
再生可能エネルギーの普及に向けた取り組み
地球温暖化への対策や電力自給率の向上につながる再生可能エネルギー。
SDGs(持続可能な開発目標)でも主要な役割を担い、その普及に大きな期待がかかっています。
ここでは再生可能エネルギーの利点や課題について説明し、その普及に貢献するCTCのIoTプラットフォーム「E-PLSM」を紹介します。
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
科学システム本部
エネルギービジネス推進部
佐治 憲介
再生可能エネルギーとSDGs
全世界における温室効果ガスの排出量の約60%はエネルギーが占めています※1。そのため地球温暖化の対策の一つとして、発電時に温室効果ガス(二酸化炭素)の排出がない、太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーの割合を、エネルギーミックスにおいて拡大することが望まれています(SDGs 目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」)。
また、石油や石炭などの産出国が限られる枯渇性のエネルギー資源と異なり、地球上の多くの箇所で利用できる自然のエネルギーであることから、技術次第で地産地消を実現することもでき、発展途上国や後発開発途上国での普及にも期待がかかっています。
再生可能エネルギーの普及における課題
このように環境への貢献やエネルギー自給率の向上が見込まれる再生可能エネルギーですが、普及には多くの課題があります。
SDGs 目標7への貢献
2017年の統計では、世界の発電量における再生可能エネルギーの割合は約27%で※2、例えば、カナダは60%、ドイツやスペインは30%を超えています。日本では、発電量における再生可能エネルギーの割合は約16%で※3、政府は2030年までに全体の22~24%に引き上げる目標を設定しています。目標7とも深く関連する国際組織SE4All(Sustainable Energy for All:万人のための持続可能なエネルギー)では、エネルギー全体に占める再生可能エネルギーの割合を2030年までに2010年の倍(約36%)にする目標を掲げており、関連する技術開発やルールの整備が急務とされています。
再生可能エネルギーの普及における日本の主な課題の一つは「発電コストの低減」です。例えば、太陽光発電は欧州の約2倍のコストがかかるともいわれており、低コスト化に向けた研究開発と共にFIT制度(固定価格買取制度)が大きな役割を担っています。
また、もう一つの課題は安定した電力供給です。電力は需要と供給のバランスを常にとる必要があり、再生可能エネルギーの中でも主要な割合を占める風力や太陽光発電は、天候で大きく発電量が変動するため、大規模な利用においては「電力供給の安定化のための調整」が必要になります。
安定した電力供給のために
再生可能エネルギーの大量導入時の電力供給安定化には、いくつかのアプローチが考えられています。
需要側では、主に需給逼迫時の需要削減を行う「ディマンドリスポンス」や、複数に分散する多様なエネルギー源を統合制御し活用する「VPP(バーチャルパワープラント・仮想発電所)」などのアプローチが注目されています。
供給側のアプローチの一つに蓄電池の活用があります。例えば、風の強い日や晴天時に発電した余剰電力を蓄積して不足時に使用することで、時々刻々変化する電力供給の平準化を図ることができます。以前は電力需要に対して蓄電池の容量が小さすぎるといわれていましたが、実証実験を重ねて年々需要に対応できるものになりつつあります(テスラによるオーストラリアでの実証実験)。水素を使用した電力の貯蔵についても研究が進んでおり、電力の輸送手段としても応用が期待されています。
そして、CTCも長年取り組んでいるのが、再生可能エネルギーの発電量の予測です。変動する発電量を予測して、電力が不足する時は火力や水力で補ったり、過剰な時は抑制したりして計画的にコントロールすることで、電力供給の安定化を可能にします。
出典
- 「Ensure access to affordable, reliable, sustainable and modern energy」
United Nations SDGs:
https://www.un.org/sustainabledevelopment/energy/ - 「Renewables 2018 Global Status Report」
http://www.ren21.net/status-of-renewables/global-status-report/ - 「World Development Indicators: Sustainable Development Goals」
The World Bank
http://datatopics.worldbank.org/sdgs/
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