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IT Terminology

HRテック

フィンテック、フードテックなど、“○○テック”という言葉が次々に生まれる中、
今、注目を集めているのが「HRテック」、すなわち、人事関連の業務を変革する技術です。
近年急激に成長する「HRテック」とはどのようなものなのか。世界と日本の現状について解説します。

文/近藤 雄生

人事業務をより効率的かつ戦略的に行うためのテクノロジー

最近、CEO(最高経営責任者)、CFO(最高財務責任者)に並んで、CHROという言葉を聞く機会が増えています。
HRはHuman Resources、つまりCHROは「最高人事責任者」。経営幹部として人事に責任を持つポストで、欧米では既に、巨大グローバル企業を中心に一般的になっています。日本ではまだおそらく、それほど聞く機会の多くないポストですが、CHROを置く企業はここ1、2年で増えていて、2018年10月には、その啓発や推進を目的の一つとした「一般社団法人日本CHRO協会」※1も立ち上がっています。

なぜ今、そのような流れが起きているのか。その背景にあるのが「HRテック(またはHRテクノロジー)」の隆盛です。AI、ビッグデータ解析、クラウドをはじめとするICT(情報通信技術)の発展により、これまで経験や感覚によって行われがちだった人事業務が、より科学的な方法で実行可能になりました。誰を採用すべきか、どのような人員配置が最適か、よりチームワークを発揮しやすい環境を作るにはどうすれば良いか、モチベーションが低そうな従業員にどうすれば頑張ってもらえるか。更には、人事管理において発生する膨大な事務作業をどうすれば軽減できるか。そうした問題がHRテックによって、これまでとは全く違う次元で、効率的かつ戦略的に行えるようになってきているのです。

労働人口の減少などを要因に、国内では年40%前後で成長中

HRテックは今、世界中で目覚ましい成長を遂げています。アメリカを中心に、イギリス、カナダ、インド、中国といった国々で、ここ10年の間に様々なサービスが生まれていて、米調査会社MarketsandMarkets社によれば2019年にはその世界市場規模は167億ドルで、今後、年平均9.7%で成長し、2024年には265億ドルに達すると予測されています※2

HRテックには様々な分野がありますが、中でも、採用の際に応募者の経歴や選考プロセスを管理する「応募者追跡システム(ATS)」は、世界の企業において導入率は9割近いとする調査結果もあります。そのように今や世界では、HRテックの一部のアプリケーションは会社にとってほとんどインフラとも言えるものになっているのです。

CHROが一般的になっていないのと同様に、日本におけるHRテックの導入は遅れていると言われますが、それでも国内の市場規模は2017年には179.5億円となり、その後、年40%前後の成長を続け、2023年には1,000億円以上になるという予測もされています※3。また2019年の時点で利用できるアプリケーションは450ほどにもなっています。

現在日本のHRテックの成長を促している要因の一つは、少子化によって、企業が優秀な人材を確保することが難しくなっていることです。更に近年、合言葉のようになった「働き方改革」で、どの企業も、仕事の効率化にこれまで以上に正面から取り組まなくてはならなくなっていることも、大きな後押しとなっています。

  1. 一般社団法人日本CHRO協会
    http://www.jachro.jp/

出典

  1. 「Attractive Opportunities in the HCM Market」 MarketsandMarkets
    https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/human-capital-management-market-193746782.html
  2. 「HRTechクラウド市場の実態と展望 2018年度版」ミック経済研究所
    https://mic-r.co.jp/mr/01535/

記載内容は掲載当時の情報です。最新情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

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