Best Engine

ITの最新動向を紹介する技術情報サイト

記事の
絞り込み

IT Terminology

HRテック

従業員の採用、モチベーション向上、健康管理まで

HRテックを利用する目的には、人事業務の効率化、人事データの一元管理、集積したデータを利用した従業員の特性把握、といった項目があげられます。
それらを実現するアプリケーションは、例えば2020年2月刊行の日経ムック『まるわかり! HRテクノロジー』(日本経済新聞出版社)※4では、次の7つのカテゴリーに分けられています。

① 採用(採用業務の効率化)
② タレントマネジメント(人員配置の最適化)
③ エンゲージメント(従業員のモチベーションを向上させる)
④ 勤怠管理(出勤・退勤の管理などの効率化)
⑤ 手続き系(各種労務管理作業の効率化)
⑥ ペイロール(賃金、経費などの計算の効率化)
⑦ 健康管理(従業員の健康情報を一元管理)

①の「採用」は、応募者の1次選考にあたるエントリーシートによる合否判定をAIによって行うなどの技術です。前掲書によれば、ソフトバンクは、3万件以上に及ぶエントリーに対してAI判定を導入することで、1次選考にかかる時間が4分の1ほどになったとされます。また③の「エンゲージメント」に関するアプリケーションでは、従業員に簡単なアンケートを行って各人の懸念事項や現状などをあげてもらい、その回答をAIで分析することで、各従業員のモチベーション向上のための最適な解決策を導き出すといったことを行います。特に日本は、アメリカ・ギャラップ社が2017年に行った調査において、「熱意あふれる社員」(=エンゲージメントが高い社員)の割合が全体の6%のみで、139ヵ国の中で132位という結果が出ているとのことで、このカテゴリーのHRテックは、生産性を上げるためにはとても重要だと言えそうです。

ただ、これらを含め多様なHRテックを有効に利用するためには、様々な人事関連のデータが、書式やシステムの上で一元的に管理されている必要があります。日本ではまだ多くの企業がその段階をクリアできておらず、そこを乗り越えることが大きな課題でもあるようです※5

従業員にとって利益となる利用が望ましい

HRテックが持つ可能性は大きい一方で、懸念の声がないわけではありません。従業員の様々なデータが収集されてAIによって分析され、例えば「モチベーションが低い」「離職の可能性が高い」など、その従業員にとってネガティブな情報が導き出されれば、従業員にとって不利益になると考えられるからです。
そうした情報を会社がどのように利用するかは不透明であり、現状では、その点の法整備も進んでいません。また、AIの予測精度を上げようとすれば、企業側は従業員に関する情報を際限なく得たいという欲求が生まれます。そういった観点から、AIに頼り過ぎず、あくまでも補助的な手段として捉えること、そしてHRテックの用途を、従業員がより力を発揮しやすい環境づくりにつなげるなど、従業員にとってポジティブな意味を持つ事柄に限るといったことを各企業が意識し、いずれルールが定まっていくことが望ましいと専門家は言います※4

一方、AIによって人事業務の自動化が進むことは、決して人間の仕事が奪われるということではありません。自動化できることは自動化することで、より高度なタスクに人間は時間を割くことができます。するときっと、新しい仕事が生まれます。HRテックは、人間が人間にしかできない仕事にますます特化していくための、大きなステップの一つであるとも言えそうです。

イメージ

出典

  1. 『まるわかり! HRテクノロジー』(日本経済新聞出版社)
  2. 「沸騰するHRTech、近視眼にならないために……。」データのじかん
    https://data.wingarc.com/hrtech_saireco-20364

記載内容は掲載当時の情報です。最新情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

.