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Case Study

デジタルとリアルをつないでお客様の体験価値を高める
データ活用エンジンを開発
ANAグループ様

顧客満足度向上のためのデジタル変革に、グループをあげて取り組むANAグループは、高い品質のお客様サービスを実現するデジタルプラットフォームの整備の一環として、旅客系、運航系、お客様情報などの各システムのデータを仮想的に統合・連携する「お客様情報基盤(以下:CX基盤)」を構築し、持続的な顧客体験価値の向上を目指しています。このCX基盤に集約されるデータを活用して、お客様一人ひとりにパーソナライズされたサービスを適切なタイミングで提供するための拡張機能として開発されたのが、「ストリーミングエンジン」です。CTCはこの新しい仕組みを、ANAグループのITサービス会社であるANAシステムズ株式会社(以下:ANAシステムズ)と共同で開発し、パブリッククラウド上に実装したマネージドサービスとしてANAに提供しています。

全日本空輸株式会社(ANA)デジタル変革室 イノベーション推進部 データデザインチーム マネジャー 合志 昭範 氏

全日本空輸株式会社(ANA)
デジタル変革室 イノベーション推進部
データデザインチーム
マネジャー

合志 昭範 氏

ANAシステムズ株式会社 CXマネジメント部 CX推進チーム マネージャー

ANAシステムズ株式会社
CXマネジメント部
CX推進チーム
マネージャー

亀岡 孝行 氏

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 科学システム本部 アプリケーションサービス部 森 一樹

ANAシステムズ株式会社
CXマネジメント部
CX推進チーム
スペシャリスト

西川 和彦 氏

会社名 全日本空輸株式会社
所在地 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター
設立 1952年
URL https://www.ana.co.jp/

DX戦略のカギを握る新たなデータ活用の仕組み

ANAグループでは、2018年からデジタルトランスフォーメーション(DX)を経営戦略の主要な柱として位置付け、ITシステムの刷新とイノベーションの創出の両輪でデジタル変革を強力に推し進めています。

2019年には経済産業省と東京証券取引所が選ぶ「攻めのIT経営銘柄」にANAグループとして2年連続で選出されたほか、銘柄選定企業の中からデジタル時代を先導する企業として1社のみ選ばれる「DXグランプリ」を獲得しました。こうした評価のポイントとなっている施策の一つが、2018年に稼働開始したCX基盤です。従来は別々に管理されていたお客様情報や運航情報などのデータを一元化した大規模な仮想データベースです。

CX基盤構築の経緯について、ANA デジタル変革室 イノベーション推進部 データデザインチーム マネジャーの合志氏は次のように振り返ります。

「様々なシステムで個別に捉えてきたお客様を、システム横断で『同じお客様』と認識し、継続的につながりが持てるような満足度の高いサービスを提供するためには、あらゆるデータを集約・分析するプラットフォームの構築が必要でした。データが蓄積されてくると、ネット上のお客様の動きが少しずつ見えるようになり、デジタルでの接点においては、それらのデータを分析してお客様一人ひとりに合ったコミュニケーション活動が展開できるようになりました」

一方で、ANAグループのビジネスの根幹となるのは、国内線及び国際線の利用や、それに伴う空港設備の利用といったリアルなシーンでのサービスです。CX基盤の構築で、お客様情報や運航情報を集約して活用できるようにはなったものの、お客様一人ひとりに向けた具体的な施策にどうつなげるかということが、次の活動だったと言います。

合志氏は、「例えば、デジタルでは様々なデータを分析してお客様に次の予約を促すような情報を提供する、リアルではお客様が保安検査場を通過したというデータを運航システムに利用する、といった個別の仕組みはできていました。しかし、CX基盤の目的であるお客様が体験する価値の向上に結びつけるためには、お客様の行動と運航状況に関するデジタルとリアルの情報をシームレスにつなげて、最適なタイミングで最適な情報をお届けする新たな仕組みが不可欠でした」と話します。

一人ひとりにパーソナライズされたサービスを実行可能にするストリーミングエンジン

こうした背景からCX基盤の拡張機能として開発されたのが、お客様情報や運航情報などのデータから具体的な施策を実行する仕組みとしての「ストリーミングエンジン」です。ANAとANAシステムズで2019年4月から本格的に検討を始め、同年11 月からANAシステムズとCTCの共同チームが約5ヵ月間で開発、2020年3月に稼働を開始しました。

ストリーミングエンジンは、デジタルによる予約、決済、キャンセルやリアルな現場におけるチェックイン、保安検査場通過、搭乗といったお客様の行動変化と、旅客機の離着陸や搭乗ゲートの変更といった運航の状態変化をデータとして検知し、プログラムを組むことなく直感的な操作だけで個別のサービスを実行したり、複数のサービスを連携させたりすることが可能で、顧客一人ひとりにパーソナライズされた情報をリアルタイムに提供できるようにするものです。既に具体的な施策を実現した例もあります。

「お客様に保安検査場を早めに通過してもらう施策を実施しました。搭乗45分前までに通過していただくと、搭乗ゲート付近の店舗で買い物ができるクーポン付きのメールを、前日にお送りするというものです。お客様にとってはお得なサービスであり、弊社にとっても、お客様に早めに搭乗ゲートに来ていただくことで定時性の向上につながるというオペレーション上のメリットが得られます」と合志氏は説明します。
この施策は、お客様の搭乗に関するデジタル情報と、保安検査場通過というお客様のリアルな行動情報をシームレスにつないだ最初のサービスとして成果をあげました。

他にも、出発時刻や搭乗ゲートの変更なども考慮し、利用便の搭乗ゲートが遠いお客様へタイムリーな事前連絡といった施策を実行済みです。こうしたサービスを従来のシステムで実施しようとしても、施策ごとに一つひとつプログラムを作成する必要があるため、迅速かつタイミングよく行うことは困難ですが、ストリーミングエンジンでは、リアルタイムにデータを処理して具体的なアクションをすぐに実行できる仕組みを実現しています。

記載内容は掲載当時の情報です。最新情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

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