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Technical Report

量子コンピューティングの活用支援

これまで時間がかかりすぎて事実上解けなかった複雑な問題を、超高速な計算で解決する可能性を持つ量子コンピュータ。実用化に向けては、利用する企業や研究所なども新たなノウハウが必要になります。
ここでは、CTCの量子コンピューティングへの取り組みと支援サービスについて紹介します。

松本さん

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
デジタルサービス事業グループ
マネージドサービス企画・推進本部
マネージドサービス開発部
リードスペシャリスト

松本 直樹

菅さん

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
技術戦略本部
テクノロジーリサーチ第2部
主任

菅 博

高まる期待

量子コンピュータは、脱炭素につながる素材や画期的な新薬の開発を実現する可能性があるなど、大きな社会価値を生むとして期待されています。日本政府は、2030年に量子技術の国内利用者を1千万人、量子技術による生産額を50兆円規模とする数値目標を掲げています。また、量子技術に関して、未来市場を切り拓くユニコーンやベンチャー企業の創出にも積極的に取り組んでいく方針を発表しています※1
量子技術では欧米中が主導で開発を進めてきましたが、日本の研究所や企業も取り組みを加速しています。

CTCの量子コンピュータの取り組み

CTCは、2017年から北米のパートナー企業を中心に最新の技術動向の調査をしたり、国内の大学や量子コンピュータの専門ベンチャー企業と共同研究を行うなど、量子コンピュータの利用についてアプリケーション開発を含めた研究開発に取り組んできました。
2020年には社内に専門組織を立ち上げ、3つの活動を中心に本格的な取り組みを開始しました。

  1. 量子技術の応用による中長期的な新産業の創出、各社の開発状況の把握、人脈形成を目的とした各種団体に参画
  2. 各社量子技術を使った実問題を適用した事例の検討、ビジネス化、プレス発表または学会発表を目指す
  3. 得られた知見を社内の勉強会で共有、CTC技術力の対外的アピールを通じてビジネス化を促進

については、量子関連分野における新産業の創出を目的に2021年9月1日に設立された「量子技術による新産業創出協議会(Quantum STrategic industry Alliance for Revolution、以下:Q-STAR)」に他の23社と共に設立会員として参加しました(プレスリリース1)。他にも企業コミュニティや産学連携プログラムに参画しており、量子技術の発展や新産業の創出貢献を目指します。

については、量子コンピューティングの1つで組み合わせ最適化問題を解くことに特化した、NECの量子インスパイア型のシミュレーテッドアニーリングの量子コンピューティングサービス「NEC Vector Annealingサービス」を活用し、12km四方のエリア内にある約10,000ヵ所のポイントから、20基の風車を建設する際の最適な風車配置のシミュレーションを実施しました (プレスリリース2)。設置ポイントや風車の台数の増加に伴い計算量が指数関数的に増加するため、地形を含めた自然条件や風車間の影響も考慮に入れると、シミュレーションにおける計算量は膨大になります。今回、量子コンピューティング向けに独自の計算モデルを開発し、従来のシミュレーションでは10時間かかっていた計算を10分で算出することができました。また、計算結果についても、実績のある従来の結果と同等の結果が得られたことで、風車配置の最適化における量子コンピューティングの実用性が確認できました。

については、社内コミュニティや定期的なイベント開催を通じて、最新の技術動向やCTCでの取り組みについてグループ社員に共有しています。また、社内用の検証機や関連資料を常時閲覧できる特設サイトも整えています。実際に量子コンピュータに触れることで技術理解を深めると共に、ノウハウやスキルの向上につなげていきます。

上記の他にも、人材育成として、2020年から大学生を対象にインターンシップを行っています。社員向けの教育プログラムを学生向けにアレンジしたものが教材で、大学の単位として扱われます。量子技術を実際に活用する時代に備えた人材の育成にも注力しています。

  1. 【出典】「量子未来産業創出戦略概要」内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局
    https://www8.cao.go.jp/cstp/ryoshigijutsu/230414_mirai_gaiyo.pdf
出典:Best Engine Vol.15

記載内容は掲載当時の情報です。最新情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

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