Best Engine

ITの最新動向を紹介する技術情報サイト

記事の
絞り込み

Technical Report

先進AI技術を発掘
社会実装に向けて協業を推進

Liquid AI社との共創

CTCは長年AIビジネスに取り組んでおり、現在は高度AIを注力分野とした様々なサービスやソリューションを提供しています。NAPPを通じた取り組みでは、マサチューセッツ工科大学(以下、MIT)発のスタートアップである米Liquid AI, Inc.(以下、Liquid AI社)との協業を推進しています。Liquid AI社は2023年に設立されたばかりの企業で、CTCが出会った当時はWebサイトもなく、NAPPで協業するVCからの紹介がなければ知り得ませんでした。
CTCとLiquid AI社は、同社がMITで開発した「Liquid Neural Network(リキッド・ニューラル・ネットワーク、以下:LNN)」に基づき、Liquid AI社の独自技術を用いた新しいAIソリューションの創出に向けて検証を重ねています。LNNは、小さな線虫の脳の神経回路を模倣したニューラルネットワークのモデルで、最小限の処理能力で順応性の高い機械学習を可能にする手法です。線虫は①脳の神経細胞の数が少なく、構造がとてもシンプル ②外部環境に応じた柔軟性といった特徴を持っています。この線虫の特徴を活かして開発されたLNNは、従来のモデルと比較し、事前に学習したデータから逸脱した未知の環境や予期せぬ状況に対しても柔軟な学習を可能にします。また、これまで膨大な計算コストを必要としていたAIシステムと異なり、最小限の処理能力で複雑な計算を行えることも特徴の一つです。
例えば、一般的な機械学習のモデルでは約10万個のニューロンを必要とする自動運転に関する計算を、LNNでは19個のニューロンで算出し、同等の結果を得ることができます。エッジデバイスや利用者の近くに設置する小型コンピュータで動作するため、これまで膨大な計算コストを必要としていたAIシステム基盤の縮小にもつながり、電力消費量、CO2の排出量の削減が期待できます。
CTCとLiquid AI社の検証結果の一例では、過去4年分の日経平均株価のデータから翌日の終値を予測した際、企業の業績や天候などの影響で株価が大きく変動した時の予測追従性が、既存のモデルと比較すると圧倒的に高い傾向であることがわかりました。他にもいくつかの検証結果から、従来のモデルよりリアルタイムで精度の高い予測が実現できるのではないかと考えています。例えば、ドローンや車両の自動運転、工場における異常検知、さらには金融や医療など、状況の時間的な変化に応じて予測していくような様々な場面で高い期待が持てそうです。
LNNは2023年12月に学術的に認められ、国際的な評価を受けました。今後、ますます注目されると予想しています。CTCとLiquid AI社はさらなる検証を重ね、最適な活用方法を探索していきます。

株価の変動 テストデータ予測結果
LNN, RNN, MLP

RNNやMLPなど他のモデルの予測精度との比較で、LNNは過去のデータから長期的なトレンドや変動点を捉えやすい特徴があるため、追従性が良く、精度が出ていることを確認。

今後の展望

CTCは、30年以上にわたるシリコンバレーでの経験を活かし、VC及び優良スタートアップとの協業を通じて、新規のソリューションを創出し、お客様のビジネスに貢献していきます。

出典:Best Engine Vol.16

記載内容は掲載当時の情報です。最新情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

.