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マシンスピードの攻撃に立ち向かうセキュリティ戦略|「CTC DISCOVER SECURITY」レポート(前編)

セキュリティ

公開日:2026.09.24

マシンスピードの攻撃に立ち向かうセキュリティ戦略|「CTC DISCOVER SECURITY」レポート(前編)

    マシンスピードの攻撃に立ち向かうセキュリティ戦略|「CTC DISCOVER SECURITY」レポート(前編)

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    2026年7月17日、当社はAI時代のセキュリティ対策をテーマにしたプライベートイベント「CTC DISCOVER SECURITY」を東京で開催しました。本稿では3回に分けて、本イベントのエッセンスをお届けします。その初回となる今回は、当社による2つのセッションをレポートします。

    1. AIによるサイバー攻撃の変容

    生成AIやAIエージェントの普及に伴い新たなセキュリティリスクが顕在化し、「何から手を付けるべきか」と戸惑う企業・組織が増えています。今回のイベントは、その解消策を提案することを主眼としています。

    1-1. グローバルの最前線を捉える「CSRC」

    この目的のもと、最初のスピーカーとして登壇したのは、サイバーセキュリティビジネス企画・推進本部の吉井 稔勝です。「AI導入を加速させるためのセキュリティ戦略~CTCが示すグローバル基準のアプローチ~」と題し講演を行いました。

    講演を行う伊藤忠テクノソリューションズ サイバーセキュリティビジネス企画・推進本部長の吉井稔勝

    伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
    サイバーセキュリティビジネス企画・推進本部 本部長
    吉井 稔勝

    まず、吉井は2025年度に開設した「サイバーセキュリティ・リサーチ・センター(CSRC)」の取り組みについて紹介しました。

    CSRCでは、技術動向の調査、脅威分析、法規制調査、脆弱性情報の分析、脅威の速報配信を担い、その成果を「CTCノート」として毎月記事化しています。最新情報を並べるだけでなく、脅威動向や法規制の変化が企業・組織にとって何を意味し、どう対応すべきかまで踏み込んで解説する点が特徴です。また、グローバルの知見を取り込む役割も担います。シリコンバレーに拠点を置くCTCアメリカと連携して北米の最新動向やスタートアップの技術情報を収集。さらに米国のセキュリティ専門ベンチャーキャピタルや伊藤忠グループのイスラエル拠点とも関係を深め、日本でまだ実用化されていない技術までCSRCのサイトで発信しています。

    「我々のリサーチ活動は机上の研究にとどまりません。お客様の防御力とセキュリティ体制の向上に実際に寄与することを心がけ、毎月記事を寄稿しています」(吉井)

    1-2. AIがもたらした3つの変化

    次に吉井は、AIが企業・組織のセキュリティに与える負の影響についてこう指摘します。「AIは、企業・組織のビジネススピードを向上させる一方、サイバー攻撃のスピードも加速させ、セキュリティリスクを増大させています」

    実際、こうした認識は調査でも示されています。世界経済フォーラム(WEF)のサイバーセキュリティに関する世界調査「Global Cybersecurity Outlook 2026」によれば、87%の企業・組織が「AI関連の脆弱性」を2025年に最も増加したリスクとして挙げています。

    こうした状況の背景には、AIがサイバー攻撃にもたらした以下の3点の変化があると言います。

    ①スピード(Speed):攻撃準備の時間が大幅に短縮され、短いサイクルで攻撃が繰り返されています。従来は調査・分析・ツール作成・侵入口の発見に時間を要しましたが、これらがほぼ自動化され、攻撃者は24時間体制で攻撃を仕掛けられるようになりました。

    ②スケール(Scale):1人の攻撃者が標的を絞らず広範囲に攻撃を仕掛けられるようになりました。守る側は、あらゆる「アタックサーフェス(攻撃対象領域)」への防御・管理を徹底せざるを得なくなっています。

    ③高度化(Sophistication):攻撃はより巧妙化し、「違和感のないメール・音声」を用いた手口が増えています。EUのサイバーセキュリティ機関(ENISA)の脅威レポート「ENISA Threat Landscape 2025」によると、世界のソーシャルエンジニアリング攻撃の80%以上が、AIに支援された「フィッシングキャンペーン」に移行していると言います。もはや人の注意力だけで攻撃を見抜くのは困難です。

    「従来なら重大度の低い脆弱性でも、組み合わせることで深刻なインシデントにつながる経路をAIは見つけてしまいます」(吉井)

    1-3. 企業・組織がなすべき3つの備え

    こうしたリスクのわかりやすい例が、2026年4月頃から話題となったフロンティアAI(※1)「Claude Mythos」が悪用される可能性です。

    「ある企業では『Mythos Preview』の活用により、脆弱性発見件数を月10件ペースから100~200件ペースへ引き上げられたと言います。これがサイバー攻撃に悪用された場合の脅威は、説明するまでもありません」(吉井)

    こうした状況を踏まえ、吉井はAI時代のサイバー防御に欠かせない3つの取り組みを挙げます。

    AI-Eraのサイバー防御に関する3つの取り組みスライド

    ①AIで防御能力を拡張する:守る側もAIを活用し、セキュリティ体制を更新します。攻撃者がAIを使う以上、人間だけでは対処できない規模と速度の攻撃に対抗するためには、防御側でのAI活用も不可避です。

    ②グローバルな先端の知見を取り込む:サイバー攻撃に国境はありません。特に国家間の攻防が激しい北米やイスラエルなどの知見を防御に取り込むことが重要です。

    ③人とAIが協働する対策運用へ:AIに任せる領域と人が判断すべき領域を最適に分担する協働モデルの構築が欠かせません。

    この協働モデルについて吉井は、「今後はAIが防御実務の大半を担い、要所で人が関わる形が必要になる」と述べ、最後にこうアドバイスします。「AIの時代となり、攻撃と防御双方の前提が大きく変わりました。とはいえ、むやみに恐れる必要はありません。セキュリティ対策で世界の一歩先をいく国・地域の取り組みを参考にすれば、日本の企業・組織が整えるべき次の一手は明確に見えてきます。我々はその情報収集を全力で支援してまいります」


    ※1 フロンティアAI:現時点で最も高度な能力を持つ、最先端の汎用AIモデルを指す呼称

    2. 「外からの脅威」と「内なるリスク」

    続いて登壇したのは、セキュリティプロダクト技術部の中島 嗣晶です。「AIセキュリティ、その優先順位と実装―企業が今すぐ取り組むべき全体像」と題し、AI時代における脅威の具体像と対策の在り方を示しました。

    講演を行う伊藤忠テクノソリューションズ セキュリティプロダクト技術部長の中島嗣晶

    伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
    セキュリティプロダクト技術部 部長
    中島 嗣晶

    2-1. 外からの脅威:AIが脆弱性を見つけ攻撃を仕掛ける

    AIセキュリティを巡るリスクは「外からの脅威」と「内なるリスク」の2つに分けられます。

    外からの脅威とは「脆弱性の急増」と「攻撃の高速化」を指します。いずれも従来からの傾向で、2025年の新規CVE(共通脆弱性識別子)は前年比20%増の4万8,244件に上りました。

    「CrowdStrike社の調査では、侵入から横展開までの平均時間は29分、最速は27秒という速さです。実際、自社システムに脆弱性が見つかった時点で、既に攻撃が行われていることも珍しくありません」と中島は警鐘を鳴らします。

    さらに深刻なのは、フロンティアAIが脆弱性を「見つけるだけ」で終わらないことです。

    「発見した脆弱性を悪用するコードを生成し、それらを組み合わせて重要なターゲットへの侵入までを自律的に実行した例も報告されています。つまり、偵察・情報収集・脆弱性探索・エクスプロイト生成・侵害・横展開という攻撃チェーンの全フェーズが、AIによって自律化・高速化・大量化・自動化されているのです」(中島)

    2-2. 内なるリスク:AIエージェントの統制不足で膨らむリスク

    一方、内なるリスクは、普及が進むAIエージェントの統制不足に起因します。チャット型AIは悪用されても被害が情報漏洩に限定されますが、AIエージェントは業務プロセスを自律的に実行するため、被害がそこにとどまりません。

    そのリスクは以下の4つに類型化できます。

    ①シャドーAI

    未承認・未管理のAIエージェントを現場が勝手に使用し、機密漏洩や業務システムの不正操作リスクを招く

    ②間接プロンプトインジェクション

    AIエージェントが読み込むデータに攻撃命令を埋め込み、攻撃的・破壊的な行動を起こさせる

    ③過剰権限の付与

    AIエージェントに社内システム・データへの過剰な権限を与え、悪用時の侵害リスクを拡大させる

    ④データの統制不足と漏洩

    AIエージェントに使用させるデータと使用させないデータの分類・識別が行われず、機密情報がクラウドAIモデル(LLM)や外部APIに送信される

    「社内でどのエージェントがどう動いているかの監視・可視化はあまり行われておらず、これがリスクを高めています。低減するには、セキュリティ統制を『人の振る舞い』中心から『モノの振る舞い』中心へ転換し、モノのID管理・権限管理を徹底した上で、利用データをリアルタイムに監視・追跡する体制を整える必要があります」(中島)

    3. 外からの脅威と内なるリスクに対抗する具体策

    ここからは、外からの脅威と内なるリスクへの対応策を、より具体的に見ていきます。

    3-1. 外からの脅威には多段で備える

    外からの脅威には、「①予防」→「②攻撃進行中」→「③防御突破後」という時間軸で全体を捉え、多段で備えることが重要です。

    「外からの脅威」への対策を、攻撃前・攻撃中・攻撃後の3フェーズで示した図

    ①予防の対策:「サイバーハイジーン(=IT環境の日常的な衛生管理)」により、アタックサーフェスを削減します。公開面のIT資産管理を優先し、重大度(CVSS)や悪用可能性(KEV/EPSS)で優先順位を付けた上でパッチ適用を自動化します。

    ②攻撃進行中の対策:「AI-SOC」(※2)により攻撃を速やかに検出・封じ込めます。人の目では追いつけない攻撃をAIが分析し、プレイブック(インシデント対応手順書)に沿って自律的にブロックまで実行し、人が最終確認を行う体制を確立します。

    ③防御突破後の対策:被害を最小限に抑え、システムとデータを速やかに復旧する「サイバーレジリエンス」を強化します。ランサムウェアは環境内に潜伏していることが多く、バックアップから復元しても被害が再発しがちです。破壊されない場所に破壊できない形でデータを保管し、侵害前の安全な地点まで事業継続に支障のない速さで復旧する体制が求められます。

    3-2. 内なるリスクに対抗するための3つのポイント

    内なるリスクへの対策は「AIの可視化」「IDセキュリティ」「AIセキュリティ」の3点に集中します。

    ①AIの可視化:誰がどんなAIツールを使っているかを把握する「シャドーAIの検出」と、AIへの入力データやプロンプトに機密情報が含まれていないかの検出が出発点です。会社が正式に認めたAIツールや業務効率に役立つAIを公開すれば、シャドーAIを減らすことが可能です。

    ②IDセキュリティ:ID管理を人からAIエージェントなどのモノへと拡張します。非人間ID(Non-Human Identity:NHI)の棚卸しと管理を徹底し、AIエージェントのIDを可視化した上で必要最小限の権限を与えることが求められます。

    ③AIセキュリティ:AIの脆弱性や設定ミス、動作状態を常時監視してポリシーを適用する「AI-SPM(AI-Security Posture Management)」(※3)や、AIへの入出力をリアルタイムに検査して機密情報の漏洩や攻撃を防ぐ「AIガードレール」「AIゲートウェイ」などの対策が有効です。


    ※2 AI-SOC(Security Operation Center):AIを活用してサイバー攻撃の監視・ログ分析・インシデント対応の自動化・高度化を行う運用体制を指す
    ※3 AI-SPM:AIモデルやAI関連資産の脆弱性・設定ミス・動作状態を継続的に監視し、セキュリティ上の適正な状態を保つ仕組み

    4. 知っておきたい対策導入のロードマップの描き方

    講演の最後に示されたのが、これらの対策を段階的に導入するロードマップです。

    【即時導入(~3か月)が必要な対策】

    • 悪用リスクの高い脆弱性へのパッチの適用と適用手順の策定

    • パッチ適用体制の確立

    • バックアップがランサムウェア攻撃などを前提にしているかどうかのレジリエンス性評価

    • ITインフラとモノのID(AIエージェントのIDを含む)の棚卸し

    【短期導入(~6か月)が必要な対策】

    • IT資産の重要性・安全性に基づいたパッチ適用の最適化・自動化

    • AI利用状況の可視化・統制

    • NHIの把握とIDに対する最小権限設定の徹底

    【中期導入(~12か月)が必要な対策】

    • 防御・検知へのAIの組み込みと対処の自動化

    • AI資産とAI利用の全体把握

    • 自社・自組織の脆弱性を先制的かつ継続的に監視・測定する体制の確立

    「中期導入で重要なのは、自社が独自開発したアプリケーションの脆弱性を素早く把握することです。それにはフロンティアAIの活用が有効です。当社は現状把握のコンサルティングから製品提案・実装支援、導入後の運用支援までを提供し、高度化する攻撃への守りを“マシンスピード”へ転換する支えとなっていきます」と中島は語り、講演を締めくくりました。

    なお、中編の講演レポートでは、セキュリティ対策で世界をリードする北米のトレンドと注目のスタートアップ技術を紹介します。

    満席の参加者で熱気に溢れる「CTC DISCOVER SECURITY」のセミナー会場の様子

    CTC DISCOVER SECURITY会場の様子。会場には多数の参加者が詰めかけ熱気に溢れた。

    (中編に続く)


    中編:シリコンバレー発:AIセキュリティ対策の先端ソリューション|「CTC DISCOVER SECURITY」レポート
    後編:AIエージェント時代に躍動するベンチャー3社のソリューションとは|「CTC DISCOVER SECURITY」レポート

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    執筆者情報

    Key Technology(Keys)編集部

    Key Technology (Keys)編集部は、CTCが注力する「高度AI」「データ&アナリティクス」「クラウドネイティブ」「セキュリティ」を中心とした最先端テクノロジーの情報発信を担う編集チームです。技術動向や活用事例、サービス情報をわかりやすく届け、ビジネス変革に挑む企業の意思決定や実行をサポートします。

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