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シリコンバレー発:AIセキュリティ対策の先端ソリューション|「CTC DISCOVER SECURITY」レポート(中編)

1. サイバーセキュリティの先進国・米国のトレンドを追う
AI時代のセキュリティ対策にフォーカスした今回のイベント「CTC DISCOVER SECURITY」では、CTCの米国子会社であるCTCアメリカ(ITOCHU Techno-Solutions America, Inc.)から谷藤 雄太が登壇し、「CTCのシリコンバレービジネスと北米セキュリティトレンド」と題した講演を行いました。また、CTCアメリカが注目し、ビジネスパートナーとして日本での展開をバックアップしているベンチャー企業も演壇に上り、それぞれのソリューションを紹介しています。

ITOCHU Techno-Solutions America, Inc.
谷藤 雄太
CTCアメリカは、日本に向けた先端技術の貿易業務やSI(システムインテグレーション)サービスなどを主として手がける企業です。米国西海岸のサンタクララに本社を置き、1990年の設立以来、シリコンバレーで次々と生まれる革新技術・ソリューションを発掘してきました。
「CTCアメリカが担う最大のミッションは、CTCグループの『IT Gateway』として機能し、革新的な技術・商材の開拓と、情報収集・情報発信を行うことです。このミッションのもと、ベンチャーキャピタルへの出資を通じて、最新の情報を収集したり、有望なスタートアップとの関係を構築したりしています。それと併せて、有望なスタートアップのビジネスパートナーとして、革新技術を日本に展開する役割も担っています」(谷藤)
谷藤は今回、CTCアメリカが日々の活動を通じてつかんだ米国のサイバーセキュリティトレンドについて説明しました。具体的には、2026年3月に米国サンフランシスコで開催された大規模セキュリティイベント「RSA Conference 2026」の傾向と、ベンチャー投資の動向を踏まえた内容です。
RSA Conference 2026の傾向:出展600社の約5分の1に当たる115社が、AIモデル・AIエージェントをサイバー攻撃から保護する『Security for AI』ベンダーで占められ、カンファレンスセッションの約3分の2も、AIに関連するものだった
ベンチャー投資の動向:2024年から2025年にかけて、AI関連のセキュリティベンチャーへの投資額(=ベンチャーの調達資金)は、サイバーセキュリティベンダー全体の約4分の1に相当する85億ドル(約1兆円)に達した
一方、技術については、前回の本レポートでも触れた「フロンティアAI(※1)」への関心が高いといいます。
「フロンティアAIの高性能AIモデルは、その悪用によってセキュリティ上の大きな脅威となりえます。そのリスクへの関心は、米国でも非常に高く、様々なメディアや調査レポートで大きく取り上げられています」(谷藤)
※1 フロンティアAI:現時点で最も高度な能力を持つ、最先端の汎用AIモデルを指す呼称
2. 「AIを守る」「AIで守る」ための革新ソリューション

AI関連のセキュリティ対策は、以下の3つのカテゴリーに分類できます。
Security for AI:AIシステムをサイバー攻撃などから保護する対策
AI for Security:セキュリティ施策をAIで強化する対策
Data for AI / Security:AIのためのデータを守り・生かすための対策
CTCアメリカでは、これらのカテゴリーに以下のようなソリューションをマッピングし、それぞれを提供する有望なベンチャー企業とパートナー関係を結んでいます。
AI-SOC(Security Operation Center):AIを活用してサイバー攻撃の監視・ログ分析・インシデント対応の自動化・高度化を行うソリューション
AI Agent Security:AIエージェントを保護するソリューション
AI Gateway:アプリケーションと大規模言語モデル(LLM)などとの間に立ち、双方間の通信を一元管理・保護するソリューション
DSPM(Data Security Posture Management):オンプレミスかクラウドかを問わず、機密データがどこにあり、誰がアクセスできるのかを継続的に可視化・評価し、リスクの是正を促すソリューション
Data Pipeline:複数のデータソースからデータを収集・加工して保存場所へ送出する一連プロセスを自動化するソリューション
「AIによってサイバー攻撃のスピードが増し、高度化・巧妙化する今日では、セキュリティ対策運用をAIで自動化・効率化する取り組みと、AI活用のセキュリティリスクを低減させる取り組みを共に推進していかなければなりません。その観点から、CTCアメリカ、ならびにCTCでは、Data PipelineやAI-SOCの優れたソリューションによって、AIシステムのセキュリティリスクを自動的に洗い出して対処する仕組み作りをご提案しています。また、AIエージェントの効果と安全性を共に高めるために、DSPM、AI Agent Security、AI Gatewayの各領域で革新的なソリューションを提供しているベンチャーとパートナー関係を積極的に結んでいます」(谷藤)
今回のCTC DISCOVER SECURITYでは、CTCアメリカによる招きに応じた形で、AI-SOC、DSPM、AI Agent Security、AI Gateway、Data Pipelineの各ソリューションをそれぞれ提供するベンチャー5社が顔を揃え、製品のプレゼンを展開しました。以下では、そのうちの2社のプレゼン内容を紹介します。
3. AI-SOCベンチャー・Exaforceがもたらす変革
5社のベンチャーのうち、最初に登壇したのはExaforce社です。同社はAI-SOC製品として「エージェンティックSOCプラットフォーム」を提供しています。
谷藤は、同製品の特長を次のように説明します。
「Exaforce社の製品は、外部のシステムから収集したデータを集約して脅威を検知し、AIが自律的に対処する仕組みです。これまでのSOCは、脅威分析・対処において、セキュリティアナリストなどの人手に頼る部分が大きかったといえます。その作業の多くを、同社の製品を使って自動化することで、アナリストの負担が大幅に軽減され、より高度な分析や付加価値の高い業務に集中できるようになります」
そのExaforce社からは、APJ Technology Operations部門のDirectorであるShang Li 氏が登壇し、デモを交えながら製品の機能を解説しました。

Exaforce Inc.
Director - APJ Technology Operations
Shang Li 氏
3-1. AIネイティブな三層構造のプラットフォーム
Exaforce社は2023年創業のカリフォルニア州シリコンバレー発のベンチャーであり、2025年8月に製品を商用リリースし、日本市場では2026年2月から営業活動を始動させています。同社の製品は、リリースしてすぐに大きな注目を集め、2026年5月に同社は2億ドルを調達し、140名のスタッフを擁するに至っています。
「AI-SOCの市場には既に多くの企業が参入していますが、当社の製品の強みは、AIネイティブの視点から作られたAIエージェントSOCプラットフォームである点です。従来型のSOCソリューションにAI機能を後付けしたものとはアーキテクチャが大きく異なります」(Li氏)

同製品は、三層構造を成し、最下層には「生イベントデータ」層が位置付けられています。この層には、各種外部システムとの連携を通じて、システムやネットワークのイベントログをはじめ、設定情報、ユーザーID、プログラムコードのデータなどが取り込まれます。その上位層には「リアルタイムナレッジマップ」層があり、生イベントデータ層に取り込まれたデータをオブジェクトとして整理し、「何が起きているか」を示す情報に「誰が・何を・どこで・なぜ」を付与するナレッジベースが構築・保持されます。
この土台の上で、自律型AIエージェント群「Exabots」が機能します。Exabotsには「検知」「トリアージ」「調査&脅威ハント」「応答」という4つのタスクに特化したエージェントが用意されているほか、ユーザー企業が独自にエージェントを作ることも可能です。
また、製品の内部では3つのAIモデルが連携して動作します。1つ目は、外部システムごとにバラバラのデータスキーマを揃える「Semantic」であり、2つ目は、ユーザーやデバイスの「通常の振る舞い」を90日間のログから学習する「Behavioral」、3つ目はリアルタイムデータをもとに推論を行う「Knowledge」です。
3-2. 人手で8時間を要するアラートの原因調査を10分で
製品のデモでは、これらのAIモデル、AIエージェントがどのように機能するかを、「ある社員がオーストリアからログインした」という想定のもと、以下のように例示されました。
①ログイン場所の異常が検知され、アラートが発報される
②AIが、このアラートに関連する30~40の調査項目を計画し、自動で調査を行い、以下のような事柄を割り出して提示する
接続元のWi-Fi情報に不審な点はない
ログインに使用された端末は、社用の認証基盤サービスに登録済みのMFA(多要素認証)スマートフォンデバイスと一致する
検知されたイベントの内容は、社用のグループウェアがバックグラウンドでトークンを更新したというものである
当該社員は普段チェコに在住しており、オーストリアは隣国であるため旅行として説明がつく
それでも、AIエージェントは、このアラートを「要調査」に分類しています。理由は、当該社員が社内で高い管理者権限を持つためで、エージェントは「本人に確認を取るべき」と提案しています。
「同様の調査を手作業で行うのは大変で、おそらく最大で8時間はかかるでしょう。その作業を、当社の製品のAIエージェントは10分程度で完了させてしまうのです」(Li氏)
加えて、AIエージェントは、グループウェア経由で当該社員に確認メッセージを送り、その返信を受けて「誤検知」へとアラートを再評価しました。
「次のようなAIエージェントのアクションも柔軟に設計できます。例えば、ユーザーセッションの切断は自動で実行した上で事後報告を行い、パスワードリセットや端末隔離についてはSOCチームに承認を求め、承認要求に対して60分間何も応答がなければ自動的に実行する、といった設定が可能です」(Li氏)
さらに、同製品を使う米国の20~30社においては、3か月から半年の運用によってAIエージェントの精度が上がり、8~9割のアラートが誤検知として自動分類され、人が対応すべきものは1割程度にまで絞り込まれているといいます。
4. セキュアなAI活用を支えるBigIDのDSPMソリューション
Exaforce社に続いて演壇に上ったのはDSPM分野におけるCTCのパートナーであるBigID社です。同社からは日本法人社長(Country Manager)の岡崎 修二氏が登壇しました。

BigID, Inc.
Country Manager, Japan
岡崎 修二 氏
同氏はまず、サイバー攻撃の最終的な標的は常に「データ」であり、攻撃の手法は変わっても、その目的に変化はないと指摘し、こう続けます。
「サイバー攻撃の手法は絶えず変化するので、変化に合わせて対策を刷新し続けるのは非常に大変で、終わりも見えません。ですので、攻撃の最終目標であるデータの保護にフォーカスして対策を整えるのが合理的であり、それが被害を最小限に抑えることにつながります」(岡崎氏)
続けて同氏は、AI導入の現場で起きている停滞について言及します。
「例えば、AIエージェントなどの導入で躓く企業・組織は多くありますが、躓きの要因としては、大抵の場合、AIに使わせるデータがなかなか整備できないという問題が挙げられます。そして、この問題の根底にはデータマネジメントの不在・不備があります」(岡崎氏)
データマネジメントの不在・不備とは、「機密データがどこにあるかわからない」「データに対して誰がアクセスできるかがわからない」「誰が、どのデータのオーナーかがわからない」「データが何に使われているかわからない」といった状況を指しています。
「データマネジメントがしっかりと行われていない中で、AIに活用させるデータを適切に選んだり、データ基盤を整えたりすることは困難です。こうした状況下で、仮にAIを使ったシステムの開発に乗り出したとしても、安全性を確認できないために本番リリースが許可されなかったり、AIのアウトプットに対する人手によるチェックがボトルネックとなり、ビジネスチャンスを逃したりするのです」(岡崎氏)
加えて、AIは、社内・組織内ネットワークにつなげた瞬間に、アクセス権のある全てのデータを参照しに行きます。そのため、AIにアクセス権が正しく設定されているかの棚卸しも欠かせません。
「人であれば、たとえアクセス権限を持っていたとしても、自身の業務と直接関係しないデータは見ようとしませんし、機密データの入手を自制することもあります。しかし、AIは、躊躇なく参照できるデータは全て見に行きます。それが原因で、AIを経由して機密データが漏洩してしまう事件が、グローバルでは既に起きています。まとめれば、データを統制できないとAIは統制できないということです」(岡崎氏)
4-1. データ資産の可視化・分析・分類を自動化する
BigID社は2016年に設立された企業であり、米国ニューヨークに本社を構えています。同社が提供している製品は、クラウドやオンプレミスなど、社内外に分散するデータを横断的に検出・分類し、機密情報・個人情報のセキュリティリスクを一元的に可視化・制御する、AI駆動型のDSPMソリューションです。
「当社は、『どのようなデータが、社内のどこにあり、誰がコントロールしているか』を明らかにするシステムの開発・提供を目的に設立されました。設立当初は、企業・組織の間でAIはほとんど普及しておらず、当社の製品は、世界的に強まる個人情報保護規制に対応するための手段として、欧米の金融機関を中心に普及が進みました。それが現在は、AIによるデータ活用の安全性を担保するDSPMソリューションへと発展し、様々な業種・業態の企業・組織への導入が活発化しています」(岡崎氏)

同製品の働きには以下のステップがあります。
ステップ①:数100のコネクターを通じてユーザー組織のIT環境にアクセスする(=ユーザー組織のIT環境に対するスキャニングを行う)
ステップ②:アクセス先のデータを検出・分類してデータカタログを作成する
ステップ③:アクセス先のデータについてリスク分析を行う
ステップ④:リスク分析の結果に基づいてアクセス権限の調整・削除といったアクションを実行する
同製品のスキャニングの対象には、AI向けのデータベースも含まれます。ゆえに、例えば、「個人情報はAIに学習・参照させてはならない」という企業内・組織内ルールが、しっかりと守られているかどうかが検証できます。
こうした製品の機能・利点を語り終えた岡崎氏は、最後にこう付け加えます。
「Claude MythosのようなAIを悪用した攻撃を100%防ぐことは、おそらく不可能だと思います。だからこそ、脅威の侵入を前提とした上で、被害を最小限にとどめるために何をすべきかを意識することが大切です。自分の家のどこに現金があり、どこに宝石があるかを把握していなければ、それら資産の守りようがありません。それと同じく、貴重なデータがどこにあり、どう使われているかを把握していなければ、漏洩や破壊を食い止める有効な手だては打てません。その点に留意しながら対策の強化を図っていただきたいと願っています」
なお、本稿に続くレポートでは、今回紹介し切れなかったAI Agent Security、AI Gateway、Data Pipelineの各ソリューションのプレゼン内容を取り上げます。

シリコンバレー発の最新ソリューションに、会場の関心が集まった。
(後編に続く)
前編:マシンスピードの攻撃に立ち向かうセキュリティ戦略|「CTC DISCOVER SECURITY」レポート
後編:AIエージェント時代に躍動するベンチャー3社のソリューションとは|「CTC DISCOVER SECURITY」レポート
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