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デジタル活用×内製化の落とし穴を回避する「デザイン」の力とは

このような事態に陥る原因は、システムの機能とユーザーが望むことの乖離にあります。この乖離を埋めるために必要となるのが「デザイン」です。
本記事では、デジタル活用を成功させるために必要なデザインの本質や、デザインまで内製化する重要性、具体的な成功事例について解説します。

- 1. デジタル活用×内製化のよくある3つの失敗パターン
- 失敗パターン①システムを導入したのに作業量が増えてしまった
- 失敗パターン②現場から不満が続出する
- 失敗パターン③そもそもシステムが利用されていない
- 2. 失敗の原因は「システムの機能とユーザーが望むことが乖離している」ため
- 3. 解決策となる「デザイン」とは
- デザインとは何か
- デザインの具体例
- デザインが実現する「探索・再構築・可視化」
- 4. デザインでデジタル活用の課題を解決する
- 探索:機能の前にユーザーの欲求を整理する
- 再構築:半歩先の改善を行う
- 可視化:定点観測とアップデート
- 5. デザインも「内製化」すべき理由
- デザインの重要性に対する意識変革
- スピード感
- ノウハウの蓄積
- 6. デザインを内製化するために必要な「伴走支援」
- なぜ伴走支援が必要なのか
- CTCの伴走支援
- 7. 事例:トヨタ車体様への伴走支援
- まとめ
1. デジタル活用×内製化のよくある3つの失敗パターン
昨今、多くの企業がDXを推進し、業務効率化や新規事業の創出に注力しています。変化の激しい市場環境に即応するため、外部ベンダーに頼らず自社でシステムを開発・運用する「内製化」を選択する企業も増えてきました。しかし、内製化はスピード感をもたらす一方で、現場の実態を無視した「独りよがりなデジタル化」に陥るリスクもはらんでいます。
以下では、内製化において陥りやすい3つの失敗パターンと要因を整理します。
失敗パターン①システムを導入したのに作業量が増えてしまった
デジタル活用の本来の目的は、自動化や効率化による付加価値の向上です。しかし、実際の業務プロセスを深く分析せずにシステム化を進めた結果、かえって現場の負荷が増大してしまうケースが見られます。
例えば「システムにデータを入力するために、事前準備としてExcelでデータ処理を行わなければならない」といった、無駄な作業が発生してしまうパターンです。これは、開発側が現場の例外処理や、前後にある工程を見落としているために起こります。
失敗パターン②現場から不満が続出する
システムを構築しても、UI(操作画面)やUX(操作体験)が現場の感覚と乖離していれば、現場からは反発が生まれます。ボタンの配置や入力項目の順番一つをとっても、それが現場の動線や作業の優先順位と合致していなければ「使いにくい」「以前のやり方のほうがスムーズだった」という評価を下されてしまいます。
これは内製開発において、開発チームが現場の声を聞いているつもりでも、実際には「開発しやすい設計」を優先してしまった場合に陥りやすい失敗です。
失敗パターン③そもそもシステムが利用されていない
最も深刻な事態は、多大な工数とコストを投じて開発したシステムが、誰にも使われずに放置されることです。現場の従業員は、使い勝手の悪い新システムを避け、慣れ親しんだExcelや紙の台帳、属人的な管理手法へと戻ってしまいます。こうなるとシステムは「負の遺産」となり、保守コストだけが計上される存在となります。
2. 失敗の原因は「システムの機能とユーザーが望むことが乖離している」ため
失敗パターンに陥る原因の多くは、提供される「システムの機能」と、現場の「ユーザーが本当に望んでいること」の間に乖離が生じている点にあります。

例えば、要件定義の段階でユーザーの表面的な言葉だけを拾い上げ、その裏にある真の課題や欲求を深掘りしないまま機能へ落とし込むと、使い勝手の悪いツールが完成してしまいます。
また、技術的な新しさや多機能を追求するあまり、ユーザーのITリテラシーや実際の業務スピードを追い越してしまい、現場を置き去りにするケースも少なくありません。
さらに、運用の視点が欠如していることも大きな問題です。デジタル活用はリリースして終わりではなく、ユーザーの反応を見ながら改善し続けるプロセスが求められます。しかし内製化においては、「作ること」に全力を出し切り、その後の改善サイクルが停滞してしまうパターンが散見されます。
結局のところ、デジタル化の成否は機能の多さや新しさではなく、いかに現場に寄り添い、共に改善し続けられるかにかかっているのです。
3. 解決策となる「デザイン」とは
こうした失敗を回避するための鍵となるのが「デザイン」です。ここでのデザインとは、単に見た目を美しく整えることではありません。
デザインとは何か
デザインとは「具体的な問題を解決するために思考・概念の組み立てを行い、さまざまな形として表現すること」を指します。
日本語で「デザイン」というと、色や形を美しく飾る「意匠」の側面が強調されがちですが、本来は「設計」や「構想」という意味を持つ言葉です。
デザインの本質は「価値を創り出す行為そのもの」にあります。どのような目的で、誰のために、どのような仕組みを構築するのかといった一連の思考プロセスこそがデザインであり、見た目の美しさは、適切に設計された結果として現れる一つの要素に過ぎません。

デザインの具体例
現代のビジネスにおいて、デザインの対象は広範にわたっています。かつては椅子や家電といった「形のあるプロダクト」が中心でしたが、現在は「形のない体験」もデザインの対象です。
有形のデザインの例:スマートフォンアプリの操作性や物理的な製品の持ちやすさ、店舗の空間レイアウトなど、実際に触れたり目にしたりできる対象を最適化するためのデザイン。
無形のデザインの例: サービスを利用する顧客が感じる心地良さや信頼感、または働く従業員が組織で感じるやりがいや効率性など、目に見えない「体験の質」を設計するためのデザイン。
このように、形があるかないかにかかわらず、現状をより良い状態にするために要素を組み立て直し、形作る行為は、すべてデザインの範疇に含まれます。
デザインが実現する「探索・再構築・可視化」
デザインの役割は、大きく3つの「得意技」に集約されます。
探索(Exploration)
デザインのプロセスは、解決策を考える前に「そもそも解決すべき問題は何なのか?」を問い直すことから始まります。ユーザーが「Aという機能がほしい」と言ったとき、デザインの視点では「なぜAが必要なのか?本当に困っていることは何か?」と背景を探り、潜在的なニーズを掘り起こしていきます。
再構築(Reconstruction)
探索で見つかった本質的な課題に対し、既存の慣習やプロセスの枠組みにとらわれず解決策を練り直す工程です。「今のやり方を踏襲するのではなく、業務のあり方そのものを変えられないか」といった視点で、本質的な解決策を構想します。
可視化(Visualization)
最後に、目に見えない概念やアイデアをデザインの力で具現化します。再構築した新しい仕組みやサービス像を図解やプロトタイプとして提示し、関係者全員で具体的なイメージを共有することで、意思決定のスピードを速めます。
4. デザインでデジタル活用の課題を解決する
「デザインの3つの得意技」を有効に利用することで、デジタル活用の失敗パターンを回避しやすくなります。以下に、デジタル活用におけるデザインの具体的な活用イメージをまとめました。

探索:機能の前にユーザーの欲求を整理する
システムの要件を固める前に、まずは「探索」が必要です。ユーザーインタビューや行動観察を通じて、現場がどの工程でストレスを感じ、何を真に求めているのかを浮き彫りにします。
単に「今の業務をデジタルに置き換える」ための機能を用意するのではなく、ユーザーの根本的な欲求を満たすために必要な要素を定義し直すことが重要です。
例えば、ユーザーから「もっと入力項目が少ない画面がほしい」という要望があった際、それを鵜呑みにして項目を削るだけでは不十分かもしれません。デザインの視点では「なぜ項目を減らしたいのか?入力作業の何が苦痛なのか?」と一歩踏み込んで背景を探ります。
その結果、真の問題は「入力項目の多さ」ではなく「内容のわかりにくさ」や「重複した確認作業」にあると判明することがあります。こうした「真のニーズ」の掘り起こしが探索の役割です。
このようなステップを踏むことで、現場に受け入れられない的外れなツール開発を防げるでしょう。
再構築:半歩先の改善を行う
次に、探索で得た知見をもとに体験を「再構築」します。
デジタル化の典型的な失敗例として、非効率なアナログ業務をそのままデジタルに置き換えてしまうケースが挙げられます。デザイン的なアプローチでは、「この業務フロー自体が本当に必要なのか?」「この工程を自動化、あるいは廃止できないか?」といった視点でプロセスを再構築します。
ここで重要なのは、現場に劇的な変化を強いないことです。急激な変更は現場の拒絶反応を招きやすいため、既存のやり方を尊重しつつ、少しだけ便利になる「半歩先」の体験を設計しましょう。
現在の運用を否定せず、段階的な改善を積み重ねていくことで、現場の心理的なハードルを下げ、デジタルへの移行をスムーズに進められます。
可視化:定点観測とアップデート
再構築した業務プロセスをもとに、プロトタイプやデザインイメージを作成して現場へ提示します。抽象的な言葉だけではチーム内や関係者の間で認識のズレが生じがちですが、デザインで「目に見える形」を作ることで、相互理解が深まり、活発な議論を促すきっかけにもなります。
加えて、リリース後の状況を「可視化」し続ける姿勢も大切です。デジタル活用において「作って終わり」は失敗の始まりです。リリース後もユーザーの利用状況を定点観測し、使いにくい箇所を即座に特定・改善するフィードバックサイクルを確立しましょう。
現場の反応をリアルタイムでシステムへ反映させ、アップデートするサイクルを回すことで、システムが形骸化する事態を回避し、現場に深く根付くツールへと育てていけます。
5. デザインも「内製化」すべき理由
多くの企業がシステム開発の内製化に取り組んでいますが、実は「デザイン」こそ内製化によって真価を発揮する重要な要素です。なぜデザインまで自社で担うべきなのか、その理由を紐解きます。

デザインの重要性に対する意識変革
デザインの知識やスキルを持つメンバーが加われば、システム開発の現場は「いかに作るか」という技術的な視点から「誰のために、何を作るのか」というユーザー中心の視点へとシフトします。
デザインを外注せず自ら手がけることで、プロダクトの使い勝手やユーザー体験に対する強い「当事者意識」と責任感が芽生えます。
スピード感
デザインを外部に依存していると、些細な修正であっても見積もりの取得や発注といった事務的な手続きが必要になり、改善のスピードが停滞しかねません。
その点、デザインが内製化されていれば、現場からの「使いにくい」というフィードバックに素早く対応を打ち出せます。「その日のうちにプロトタイプを修正し、翌日には現場で試してもらう」といった、圧倒的な機動力による試行錯誤の実現は、内製化ならではのメリットです。
ノウハウの蓄積
ユーザー体験がビジネスやプロダクトの成否を左右する現代において、デザインの過程で得られる知見は重要な資産となります。
デザインの試行錯誤を通じて掘り起こされる「現場の本当の悩み」や、マニュアル化しにくい「使い勝手に関する暗黙知」は、外部に委託すると自社に残りません。これらの知見を社内に蓄積すれば、さらなる改善や他プロジェクトへの応用、横展開も容易になります。
6. デザインを内製化するために必要な「伴走支援」
いざデザインを内製化しようとしても、多くの企業にはデザインのノウハウがありません。そこで必要となるのが、プロフェッショナルによる「伴走支援」です。
なぜ伴走支援が必要なのか
デザインのスキルは、教科書を読んだり研修を受けたりするだけでは習得できません。実際のプロジェクトを通じて、ユーザーの声をどう解釈し、どう形にすべきかという試行錯誤を繰り返すことで、初めて「生きた知識」として身につきます。そのため、デザインスキルを定着させるには、経験豊富な先導者とともに実際のプロジェクトを遂行することが最短の方法となります。
従来のシステム開発に慣れた組織では、どうしても機能要件から考えがちです。デザインのプロフェッショナルが横に立ち、思考プロセスを支えながら共に手を動かすことで、デザインを意識した開発手法を意識できるようになります。
CTCの伴走支援
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)では、デザインアプローチを組織に取り入れるための伴走支援を展開しています。
本サービスでは常にお客様とワンチームで、連携を図りながら支援を行います。プロダクトの開発のみならず、自律的に改革が進む活動スタイルの確立を通じて、デザインの内製化が組織に定着するまで徹底したサポートが可能です。

7. 事例:トヨタ車体様への伴走支援
実際にCTCが伴走型で社内システムのデザイン内製化を支援した事例として、トヨタ車体様のケースをご紹介します。
トヨタ車体様は、トヨタグループの中核を担う完成車メーカーとして、アルファードやランドクルーザーといった主力車種の企画・開発・生産を一貫して手がけています。市場環境が激変するなか、同社は従来の「クルマづくり」に加え、社内の生産性向上を加速させるべく、社内システムの内製化に力を入れ始めました。
こうした背景のもと、CTCはデジタル化に向けた同社の社内システムのデザイン内製化を約2年間にわたり支援しています。伴走型の本プロジェクトでは、現場スタッフへのインタビューやユーザー体験の設計などを実務レベルで共に行い、現場のリアルな声をシステムへ反映させるためのデザインプロセスを共有してきました。
デザインの内製化が組織文化として確固たるものとなるよう、CTCは今後もたゆまぬ伴走支援を続けていく方針です。
まとめ
内製化におけるデジタル活用の失敗パターンに陥らないためには、「デザイン」を意識することが大切です。デザインによってユーザーの真のニーズを汲み取り、既存の業務プロセスにとらわれずに再構築し、可視化を通して合意形成や改善を繰り返すことで、「ユーザーが本当にほしいシステム」の実現へとつながります。
デザイン内製化に関心をお持ちの方に向けて、トヨタ車体様の事例を詳しく紹介したホワイトペーパーをご案内しています。本資料では、トヨタ車体様とCTCの対談を通じ、伴走支援を受けながらどのようにデザイン内製化を推進したのか、生の声に触れていただけます。ぜひご活用ください。

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