CTCロゴ
トップ

/

記事

/

農業GX|温室効果ガス放出量の正確な測定と削減量のNFT化推進に向けて

その他

公開日:2023.11.06

農業GX|温室効果ガス放出量の正確な測定と削減量のNFT化推進に向けて

    農業GX|温室効果ガス放出量の正確な測定と削減量のNFT化推進に向けて

    この記事をシェア

    伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)は、国立大学法人新潟大学(以下、新潟大学)と共同で新潟市をフィールドに、農地における温室効果ガス(以下、GHG)の放出量測定に関する実証実験に取り組んでいる。本稿では、その背景と構想について紹介する。
    (株式会社ビジコミ発行 ビジネスコミュニケーション2023年10月号掲載記事を一部編集)
    (左から) 新潟大学 農学部  教授 長谷川 英夫氏、助教 斎藤 嘉人氏、助教 永野 博彦氏  伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 金融NEXT 企画部 ビジネス企画課  藤井 敬大

    (左から)
    新潟大学 農学部
     教授 長谷川 英夫氏、助教 斎藤 嘉人氏、助教 永野 博彦氏

    伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
    金融NEXT 企画部 ビジネス企画課

     藤井 敬大

    農業の課題と農地のポテンシャル

    昨今、日本の農業においては、担い手の減少、資源価格の高騰などによる農業経営の圧迫、耕作放棄地の増加といった課題が散見される。

    一方、カーボンニュートラルの実現に向けた施策として、食物残渣などの有機物を用いた土づくりを通し、土壌の二酸化炭素(CO2)の排出を抑える「炭素貯留」の取り組みが注目されている。

    また、GHG の放出量や削減量を売買するカーボンクレジットが、農業分野での新たな収入源として期待されている。

    カーボンクレジットの側面から見ると、農地のポテンシャルは、森林や海洋と比較して非常に高い。

    GHG 削減効果は森林656 万トン、海洋1,140 万トンに対し、農地は2,900万トン。経済効果は森林3,800 億円、海洋1,200 億円に対し、農地は1.5 兆円。さらに2050 年には農地は約4,700 万トン、約2.0 兆円の経済波及効果があるとも言われている※1

    GHG を正確に測定する仕組みづくりが必要

    農地に大きなポテンシャルがあるとされながらも、カーボンクレジットを活用しようとする農産物生産者はほとんどいない。

    2013 年に創設されたGHG の排出削減量を売却することで利益を得る「Jークレジット制度」があるものの、農業関係で売却可能なクレジットを取得したのはわずか4 件に留まっている※2。

    こうした実態の理由として、“GHG削減量の計算や申請手続きの煩雑さ”が考えられる。煩雑さ故に申請手続きを途中で断念する生産者も少なくないという。

    つまり、GHG の放出量・削減量は机上での計算に留まっていて、自分の所有する農地における正確な値を知る術がないことが、カーボンクレジット活用の足かせとなっている。

    こうした背景の下、CTC は、精度の高いGHG 量の測定方法や、信頼性のあるデータをデジタル化して管理することにより、課題を解決したいと考えている。

    「我々がヒアリングを実施する中で、若い世代の就農希望者から、やはり費用面がネックになっているという声が聞こえてきています。
    GHG 削減に寄与する“脱炭素農業”により農業所得向上が実現すれば、儲かる農業の実現、後継者の増加、耕作放棄地の削減といったことにつながると思います。
    そのための第一歩として生産者が自らの農地から放出されるGHG を正確に測定できる仕組みをつくることが必要だと考えています」(藤井)(図1)。

    取り組みのテーマ

    図1 取り組みのテーマ

    農業分野のカーボンクレジット普及に向けた実証実験

    CTC は、新潟大学と共同で正確なGHG 放出量の測定やデータの可視化に関する実証実験を実施している(図2)。

    実証実験のイメージ

    図2 実証実験のイメージ

    実験では、新潟大学がGHG 放出の削減量をデジタル測定する手法の実証を担当し、CTC はデータ管理や可視化のシステム構築を担う。

    さらに、測定したデータをもとに、カーボンクレジットの取引や、GHG 放出量の削減に貢献した生産者の活動実績のNFT 化を目指す意向だ。

    構想の概要は以下のとおり。尚、実験実施期間は2023 年6 月から2024年3 月の予定。

    課題と実証テーマ

    どれだけGHG 放出量を削減したのか正確に測定する方法がない、GHG 放出量削減に貢献した生産者を応援する仕組みがない、という2つの課題に対し、以下の4 つのテーマを実証する。

    • GHG をデジタルに測定する手法の確立

    • 測定データを活用したGHG 削減量の予測

    • Web3 技術によるGHG 削減に貢献した生産者の証明

    • 消費者が生産者を支援できるスマホアプリの開発

    方法

    • 新潟大学農学部附属フィールド科学教育研究センターの試験対象区約60 アール(6,000 平方メートル)において、測定装置を設置し、GHG 放出量を測定する(図3)。

    • 複数の地点から土壌をサンプリングし、土壌の成分の違いによるGHG放出量の差を比較・検証する。

    図3 大気中と地中のGHG 放出量の測定

    意義

    • 農地GHG 放出量取引に関する正確で実用性のある仕組みを作り、カーボンクレジット市場拡大に寄与する。

    • ブロックチェーンやNFT といったWeb3 技術とデータ分析を掛け合わせた先端技術によるビジネス創出の可能性を実証できる。

    • 実証後の実用化については、新潟市内に限らず全国の生産者および生産者を応援する個人が対象となるため、新潟市における本件実証を皮切りに全国地域経済の活性化につながる。


    ※1:農林水産省 『 食料・農林水産業の CO2 等削減・吸収技術の開発プロジェクトに関する研究開発・社会実装の方向性 』 2022.2

    ※2:日本農業新聞 『 J ークレジット制度 農業「取得」 4 件止まり 煩雑な温室ガス削減量の算定 』2023.3.22 )より

    当サイトに掲載されている情報(記事、資料、動画、テンプレート等)については、その正確性および妥当性の確保に努めておりますが、ご利用に際しては、利用者ご自身の責任においてご判断ください。なお、個別の事情に応じては、専門家へのご相談を含め、適切な対応をご検討いただくことを推奨いたします。

    この記事をシェア

    執筆者情報

    CITTECブログ編集部

    Cittec(シッテク)ブログは、技術情報を広く共有しています。API、IT運用、アジャイル開発、セキュリティ、ネットワーク自動化など、幅広い分野を専門知識豊富な執筆陣がカバー。またローカル5Gの可能性についても魅力的な記事を提供しています。テクノロジーの進展とビジネスへの影響をわかりやすく解説することで、読者の皆様に新たな価値を提供します。

    Documents

    お役立ち資料

    View All