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なぜいま「Product as a Service」なのか

データ&アナリティクス

公開日:2026.08.14

なぜいま「Product as a Service」なのか

    なぜいま「Product as a Service」なのか

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    様々な製品市場において、技術のコモディティ化が進行し、製品の性能・機能・品質だけで競争優位を確保し続けることが難しくなっています。それに伴い、製品間の競争のポイントが価格、あるいは価格性能比(コストパフォーマンス)に絞られ、その厳しい競争を勝ち抜くための製造施策によってメーカーの利益が圧迫されるのが一般的です。

    こうした状況を打開する手段として、かねてより製品を作って売り切るのではなく、製品の機能や付帯サービスを継続的に提供して対価を得るビジネスモデル「Product as a Service」が関心を集めてきました。このモデルは「モノに対する人の価値観」を「所有」から「利用」へと変容させて、メーカーと顧客との長期的な関係を構築したり、モノの環境負荷を引き下げたりする効果が期待されています。

    本稿では、同モデルの基本的な概要と、採用のメリット、採用の方法について、整理して紹介します。
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    1. 「Product as a Service」とは何か

     「Product as a Service」とは、製品自体を売り切るのではなく、製品が実現する成果を継続的なサービスとして提供し、対価を得るビジネスモデルです。

    この考え方は、Software as a Service(SaaS)をはじめとするクラウドサービスと共通する部分がありますが、Product as a Serviceではソフトウェアだけでなく、設備や機械などのハードウェアも対象となります。

    図1:Product as a Serviceは製品が実現する成果をサービスとして提供するビジネスモデル

    図1:Product as a Serviceは製品が実現する成果をサービスとして提供するビジネスモデル

    顧客が価値を見出すのは、製品を所有すること自体ではなく、その製品を使って得られる成果にあります。Product as a Serviceの考え方の基本は、顧客視点でプロダクトの本来の価値を捉えることです。出発点は「顧客は、何を実現するために(あるいは、どんな成果を得るために)、そのプロダクトを購入し、使っているのか」を考えることであり、そこから顧客が製品に求めている機能・サービスを突き止めて、それらを継続的に提供して対価を得るモデルを描き、実現します。これがProduct as a Serviceのアプローチといえます。

    例えば、工場では生産設備を安定して稼働させるために冷却装置が使用されています。ここで、冷却装置を導入している顧客が本来欲しているコト(成果)は何かを考えます。
    すると、顧客が真に求めているのは冷却装置という機械ではなく、生産設備を適切な温度で安定稼働させることだとわかります。

    そこで、冷却装置というモノに課金するのではなく、「一定の冷却能力を継続的に提供する」という成果に対して課金する料金体系へ変更します。提供者が装置の運用・保守まで担うことで、顧客は設備管理の負担を軽減しながら安定した生産環境を利用できます。これにより、冷却設備のサービス化(Product as a Serviceモデルへの転換)が実現されます。

    図1:Product as a Serviceは製品が実現する成果をサービスとして提供するビジネスモデル

    図2:Product as a Serviceのアプローチ

    2. Product as a Serviceと従来モデルとの違い

    Product as a Serviceは、製品のリースやレンタルといった既存のビジネスモデルと混同されがちです。こうした既存のモデルとProduct as a Serviceとの違いを整理する上で有効なのが、「何に対して課金するのか(モノか、成果か)」と「リスクを誰が持つのか(顧客か、提供者か)」という2つの軸です。

    売り切り型のモデルは、製品を購入した時点で所有権と利用責任が提供者から顧客に移ります。一方、製品のリース・レンタルは、所有権は提供者に残りますが、製品の利用状況にかかわらず一定額が顧客に課金される点で、本質的にはモノへの課金と定義できます。
    「カミソリ本体と替刃」で知られる「ジレットモデル」は、本体を低価格で提供して消耗品で継続収益を得る仕組みですが、これも消耗品というモノへの課金が基本です。

    さらに、サブスクリプションモデルは定額制で継続課金する点でProduct as a Serviceにかなり近いモデルですが、利用量や成果にかかわらず定額が発生する場合が多く、提供者が顧客の成果に責任を持つわけではありません。

    これに対してProduct as a Serviceでは、顧客が得た成果・実績・稼働時間などに応じて課金モデルが設計されます。製品の提供者は、製品が成果を上げ続けることに責任を持ち、
    顧客との関係が継続する限り収益が生まれる構造になっています。
    そして、この「成果への責任」こそが、Product as a Serviceの本質といえます。

    図3:Product as a Serviceの位置付け

    3. Product as a Serviceは何を変えるのか

    売り切り型のモデルからProduct as a Serviceへの移行は、製品の料金体系や契約形態を変えるのみならず、製品の提供者(あるいは、メーカー)の収益構造や顧客との関係性、モノ作りに対する意識、モノの在り方を大きく変容させる可能性があります。

    3-1. 収益構造:フロー型からストック型へ

    売り切り型のモデルでは、製品を販売した瞬間に売上が計上されますが、翌月以降の売上を確保するには、新たな受注が必要です。この「売るたびに稼ぐ」という「フロー型」の構造は、市場環境が良好な時期には有効に機能しますが、経済情勢や顧客ニーズ、市場環境の変化が激しく、製品販売の先が見通しにくい今日のような時代では、収益の不安定さをもたらします。

    一方、Product as a Serviceの収益モデルは、顧客とのサービス契約の期間中、売上が継続的に積み上がるリカーリング(ストック型)の構造です。顧客との関係が続く限り収益が生まれるので、売上の予測可能性が高まり、事業の安定性と投資計画の精度が上がります。
    ここで重要になるのは、短期間で多くの受注を得るという発想から、顧客との関係を長期にわたって育み、維持するという発想へ転換することです。

    3-2. 顧客との関係:「売って終わり」から「使い続けてもらう」へ

    売り切り型のモデルからProduct as a Serviceへの転換は、製品の提供側と顧客との関係を「製品を売って終わり」の関係から「製品を使い続けてもらう関係」へと変化させます。

    売り切り型では、販売が完了した時点で顧客との接点は薄れがちです。それに対し、Product as a Serviceでは、顧客が製品を使い続ける限り関係が継続し、その関係を通じて収益が生まれます。つまり、提供者にとって顧客の満足度・サービスの継続率は収益に直結し、それゆえに、顧客の成果に能動的にかかわる必要性が大きくなります。

    Product as a Serviceでは、顧客が製品をしっかりと使っているかどうか、あるいは、利用を通じて目的の成果を得ているかどうかを、製品の稼働データや利用状況を継続的に観測することで判断します。

    より具体的には、IoTセンサやクラウドプラットフォームを通じて、製品の稼働データや利用情報を収集し、そのデータを基に、製品の機能・サービスを継続的に改善し、より大きな価値を顧客に届け続けます。

    また、製品の観測を通じて、問題の発生やその予兆をタイムリーに捉え、迅速に、あるいはプロアクティブに対処することも可能になります。これにより、自社の製品(サービス)への顧客の信頼と満足度を高めて関係を強化し、それを競争優位の源泉にすることができます。

    3-3. モノ作りへの意識:「良いモノを作る」から「顧客の成果を生み続ける」へ

    製造の業界では、「良いモノを作り続けること」が、差異化の源泉であり、成長・成功の原動力であるという意識が根強くあります。ただしこれは「プロダクトアウト」の考え方であり、「良いモノ」の定義が、顧客にとってのそれではなく「機能・性能・品質で競合製品より優れているモノ」になりがちです。

    一方、Product as a Serviceでは、「顧客の成果を生み続ける」ということが競争力の源泉であり、成長・成功の原動力となります。
    ゆえに、売り切り型のモデルからProduct as a Serviceへの転換を図る上では、モノ作りに対する考え方を、顧客視点へと完全に切り替えることが重要となります。

    その上で、製品の企画・開発・製造・営業・カスタマーサービスの各部門が、製品の観測データを共有しながら連携し、顧客満足度の向上や関係強化に努めることが必須となります。

    3-4. モノの在り方:「所有するモノ」から「使うモノ」へ ~ サーキュラーエコノミー創出への貢献

    日本の行政府では、かねてよりProduct as a Serviceへ転換することの意義を唱え、製造業界に採用を呼び掛けてきました。その大きな理由の1つは、Product as a Serviceという
    ビジネスモデルが、製品を「所有するモノ」から「利用するモノ」へと変容させ、産業廃棄物を最小限に抑えながら経済を成長させる「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の原動力となりうるからです(図4)。

    経済産業省では、サーキュラーエコノミーによって「価値循環」が実現されるとし、その循環を生む有望なビジネスモデルの1つとして、Product as a Serviceを位置付けています。

    ※参考:経済産業省「成長志向型の資源自律経済戦略の実現に向けた制度見直しに関する取りまとめ」(2025年2月公表)

    図4:Product as a Serviceが形成するサーキュラーエコノミーのイメージ

    図4:Product as a Serviceが形成するサーキュラーエコノミーのイメージ

    4. Product as a Serviceの主な類型

    Product as a Serviceには類型がいくつかあり、以下の3つが代表的です。

    1. 従量課金型:製品の利用量や稼働量に応じて課金する形態。
      製品の機能・サービスを使った分だけ支払う仕組みは、顧客にとって初期投資のリスクを抑えやすく、提供者にとっては利用実績が収益に直結する構造です。

    2. 成果保証型:特定の稼働率や生産量を保証し、達成できなかった場合には提供者がリスクを負う形態。
      顧客の成果に対して提供者が責任を持つという点で、Product as a Serviceの思想を最も具現化した形態だといえます。

    3. モニタリング型:製品の稼働状況をセンサやネットワークで常時監視し、異常の予兆を検知して先手を打つ形態。
      「壊れてから直す」対応から「壊れる前に防ぐ」対応への転換を可能にするこの形態は、顧客の業務継続性の向上に直結します。

    いずれの類型も、特定の業種や製品カテゴリーに限った話ではありません。自社の製品や事業の特性に照らして、どの類型が現実的かを検討することが、具体的なサービス化の第一歩となります。

    5. Product as a Serviceへの踏み出し方

    Product as a Serviceへの転換を検討する際、最初に立ち返るべき問いがあります。

    第1の問いは「自社のどの製品なら、成果提供型に置き換えられるか」という問いです。
    全ての製品がProduct as a Serviceに適しているわけではありません。顧客にとって、製品の価値や利用による成果が測定しやすい製品が転換の候補として有力です。

    第2の問いは、製品の提供者が「(顧客の)成果への責任を負えるか」という問いです。
    Product as a Serviceでは、提供者が顧客の成果にコミットする構造になります。
    自社の製品・サービスが顧客の現場でどう使われ、どう成果につながるかを継続的に把握・改善できるようでなければなりません。

    第3の問いは、「Product as a Serviceの継続的な改善や価値向上に必要なデータを収集・
    分析・活用できるか」という問いです。
    Product as a Serviceの運営には、製品の稼働状況・利用データ・顧客の成果を継続して
    把握するためのデータ基盤の整備が不可欠です。

    5-1. 完璧を目指さず、小さく始める

    Product as a Serviceに着手する上では、最初から完璧なサービスを設計しようとせず、
    まずは価値を検証できる最小限のサービス(MVP:Minimum Viable Product)と位置付けることが現実的です。対象を1つの製品ライン・一部の顧客に絞って小さく始め、顧客の反応を見ながら段階的に広げていくと良いでしょう。

    このように小さく始めることで、ユニットエコノミクス(1顧客あたりの経済性)の試算が楽になり、ビジネスプランが立てやすくなります。また、成果課金の設計・契約形態の適正化、データ基盤の整備・強化など、実務面の課題も取り組みを進める中で解決が図れます。さらに、収益モデル(売上をいつ、どのように計上するか)やサービスレベルの設計についても、机上で完成させるよりも、実際の顧客との関係の中で磨かれていくものであるといえます。

    5-2. サービス化を組織全体の課題と捉える

    Product as a Serviceへの転換は、特定の部門が主導する技術プロジェクトではなく、収益モデルの再設計・データ基盤の整備・組織の発想転換が同時に問われる経営課題です。

    まず、収益モデルの再設計には、財務・経営企画部門を巻き込むことが欠かせません。
    また、データ基盤の整備は、IT部門だけでなく製造・開発・サービス部門のデータ連携を前提に設計する必要があります。

    そして、「顧客の成果に責任を持つ」文化への転換は、現場の営業・サービス担当者の発想と動き方を変えることを意味します。
    これらを単独部門が個別に推進するのではなく、経営層の関与のもとで横断的に進める体制が、転換の成否を大きく左右することになります。

    ただし、自社単独でこれら全てをゼロから設計・実装するのは、リソース面でも知見面でも容易ではありません。そこで、検討の段階から実装・運用までを共に取り組む「伴走者」の存在が、転換のスピードと確実性を高める要素となるのです。

    なお、CTCでは、自社の技術的ケイパビリティを、お客様にとっての価値として継続的に提供し、高めていくクラウドサービス StageCrew を展開しています。

    StageCrewは、IT運用・インシデント対応の現場における情報収集・連携強化をAIで効率化するサービスです。Product as a Serviceと同様に、自社の技術的なスキル、能力を売り切り型のパッケージとして提供するのではなく、サービスとして継続的に提供し、お客様の成果につなげていただくことを目指しています。

    そのビジネスモデルにご興味があれば、お気軽にお問い合わせください。

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    執筆者情報

    Key Technology(Keys)編集部

    Key Technology (Keys)編集部は、CTCが注力する「高度AI」「データ&アナリティクス」「クラウドネイティブ」「セキュリティ」を中心とした最先端テクノロジーの情報発信を担う編集チームです。技術動向や活用事例、サービス情報をわかりやすく届け、ビジネス変革に挑む企業の意思決定や実行をサポートします。

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