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どう選ぶ?デジタル時代のデータ基盤|DWHか?レイクハウスか?それともデータメッシュか?

近年は「レイクハウス」や「データメッシュ」にも注目が集まっています。
本稿では、データ基盤の進化を振り返りながら三者の違いを整理し、どれを採用すべきかを考察します。
1. 広がるデータ基盤の選択肢
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2025」によると、日本企業の24.2%がデータを「全社」で利活用しており、36.0%が「事業部門・部署ごと」に利活用しています。
DXで成果を出している企業では、全社でのデータ利活用率(33.2%)が、成果の出ていない企業より14ポイント以上高くなっています(図1)。全社的なデータ活用の推進がDXの成果に直結することがわかります。

図1:データ利活用の状況(日本・DX 成果別)
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025(2025年6月発行)」をもとに作成
一方、DXで先行する米国・ドイツとの比較では、日本は「データ管理システムが整備されていない(43.4%)」「人材の確保が難しい(58.2%)」「全社的な方針や文化がない(37.2%)」「既存システムが対応できていない(22.6%)」とする企業の比率が高い状況です。ただし「経営層の理解がない」とする企業は10.4%にとどまり、米国(32.9%)・ドイツ(32.5%)を大きく下回っています。

図2:データ整備・管理・流通の課題(国別)
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025(2025年6月発行)」をもとに作成
つまり日本企業は「データドリブン経営」を志向しながらも、方針・文化の不在、人材不足、システム上の不整備が足かせになっているケースが多いといえます。
データ利活用が基盤の不整備やサイロ化によって阻まれるのはよくあることです。経営層・現場・IT組織が必要なデータの所在を把握できず、活用の第一歩でつまずくケースも多い。また、活用目的が曖昧なために適切なデータを収集・統合できず、導入した基盤を有効に機能させられないケースもあります。
そして近年では、データ基盤の選択肢が増え、自社の目的を実現するために、どれを導入すべきかが見えづらくなってもいます。
2. 多様化するデータ基盤の選択肢とそれぞれの変遷
データ基盤の構成においては、仕組みや管理方法から「データウェアハウス(DWH)」
「レイクハウス」「データメッシュ」といった選択肢があり、段階的にこれらを選択し、組み合わせることが現在の潮流となっています。
2-1. DWHの登場からデータレイクへ
DWHは、コンピュータサイエンティストのウィリアム・インモン(William Inmon)氏が1990年代に提唱した概念です。さまざまな業務システムのデータを収集・統合して時系列で管理し、分析専用の「倉庫」として機能させるのが基本的な考え方です。
対象となるのは財務・販売・在庫・生産管理などの基幹業務システムが扱う構造化データです。各業務のシステム化に伴いデータの分散・サイロ化が進む中、分析専用基盤に業務データを集約してデータドリブンな意思決定に活かす発想が生まれ、DWHの登場につながりました。
2000年代以降、インターネットの普及により、企業が分析したいデータはSNS投稿・IoTデータ・Web行動データなど非構造化データへと広がりました。そのニーズに応えて登場したのがデータレイクです。多種多様な生データを加工せず元の形式のまま一元蓄積できる点が特徴で、大量データをローコストで保持できる仕組みとして普及しました。
2-2. レイクハウス登場の背景
レイクハウスはDWHとデータレイクを融合させた新タイプのデータ基盤で、2020年に米国Databricks社が論文で提唱しました。
DWHとデータレイクは役割・用途が異なるため、両方を併用するケースは多いですが、2つの基盤の運用はコストと手間がかさみ、データ間の不整合も生じやすくなります。そこでDatabricks社は、両者の特性を併せ持つレイクハウスによって基盤を一本化し、運用コストを抑えつつデータの一貫性を保つことを目指しました。
Databricks社は、オープンソースの分散処理フレームワーク「Apache Spark」の源流を開発したエンジニアが創設した企業です。同社は「Delta Lake」や「Iceberg」といったオープンなテーブルフォーマットを活用し、Apache Sparkベースのデータレイク基盤にACID(原子性・一貫性・独立性・永続性)を実装。DWH同様のデータ一貫性を確保しながら多種多様なデータを柔軟に扱えるレイクハウスを実現しています。
2-3. データメッシュとは何か
データメッシュは、技術コンサルタントのザマク・デハニ(Zhamak Dehghani)氏が2019年・2020年に発表した論文で提唱した概念です。「①ドメイン(事業部門)によるデータの所有」「②プロダクトとしてのデータ」「③セルフサービス型のデータ活用」「④連邦型のガバナンス」の4点が核心です。
全社的なデータ利活用が進むほど、中央集権型のDWH・レイクハウス方式では現場ニーズへの迅速な対応が困難になります。データメッシュはこの課題を解消する目的のもと、データの所有・管理を各ドメインに分散させ、連邦型で全体ガバナンスをとる方式を採用しています。各ドメインはデータを「プロダクト」として捉え、品質を担保したうえで他ドメインが利用しやすい「データプロダクト」(データ本体・メタデータ・使用ガイドなどで構成)として社内に供給する責任を担います。
なお、データメッシュそのものの考え方や仕組みをより詳しく知りたい方は、別稿「データ活用のパラダイムシフト『データメッシュ』」も併せてご参照ください。
3. 3つの基盤の本質的な違いを理解する
DWH、レイクハウス、データメッシュのいずれを採用するかを決めるうえでは、それらの本質的な違いを理解しておくことがスタートポイントです。
3-1. データの管理を巡る思想の違い
DWHとレイクハウスはともに中央集権・一元管理を基本とします。一方、データメッシュは分散管理を基本とし、データの所有権と管理を各ドメインに委ねます。
なお、データメッシュと「データの民主化」は混同されがちですが、異なる概念です。
データの民主化とは、中央管理のデータ基盤を通じてデータをビジネス現場に開放することを指します。データメッシュは各ドメインが自ら所有・管理したデータを責任を持って整備し、全体ガバナンスを中央が担う構造です。
3-2. 選定時の観点の違い
DWHとレイクハウスはデータ管理の方式は同じですが、扱えるデータの幅が異なります。DWHは主に構造化データを対象とし、レイクハウスはテキスト・音声・画像などの非構造化データも扱えます。両者の選択は「どのようなデータを分析対象とするか」で決まります。
一方、データメッシュを採用するかどうかは「データの所有・管理を誰に委ねるか」、
すなわちデータの運用管理体制をどう設計するかの判断に委ねられます。
3-3. 主な用途の違い
DWHが主に扱う構造化データは過去の実績データです。そのため、実績の分析・可視化・レポーティングがDWHの主な用途となります。
AIに精度の高いアウトプットを求める場合はレイクハウスが適切です。精度向上には実績データに加え、「なぜその実績に至ったか」を推測するコンテキスト(多くはテキスト等の非構造化データ)が必要なためです。問い合わせ対応AIや業務自律処理システムの開発においても、FAQ・音声記録・業務知見といった非構造化データを扱えるレイクハウスが有効です。
データメッシュの場合、分析やAI活用といった用途はドメインごとの判断に委ねられます。組織レベルでの使用目的は「中央の業務負担低減」「各事業部門へのデータ活用の拡大」
「データプロダクトの社内流通促進」「データドリブンな意思決定の迅速化」となります。
ただし、これらの目的はツール導入だけでは達成できません。
「ドメインごとのデータ所有責任の明確化」「データプロダクト運営体制の確立」「意思決定権限の現場への移譲」「データ専門人材の分散配置」「データ整備・品質改善を評価する制度の確立」といった組織的な変革が不可欠です。
以上の違いを整理すると以下の表1のようになります。

表1:DWH・レイクハウス・データメッシュの本質的な違い
4. データ基盤の選定・活用に向けた標準的なパス
DWH、レイクハウス、データメッシュの違いを踏まえつつ、それらの有効活用に向けてどのような基盤選定のパスをたどるべきかについても触れておきます。結論から先にいえば、データ基盤選びの現実的なパスは、企業のタイプごとに以下の表2のようにまとめることができます。

表2:企業のタイプごとのデータ基盤選びの現実的なパス
なお、中堅・中小企業でも全社的なデータ活用がすでに定着していたり、実績データとAIを組み合わせた需要予測などに取り組もうとしていたりする場合には、レイクハウスへの移行を検討することをおすすめします。
一方、データメッシュの採用は、複数のドメインを擁する大企業であっても、前出の表1に示した組織的要件を満たしていなければ時期尚早といえます。現実的な進め方は、レイクハウスの活用を進めながら2〜3のドメインでデータメッシュのPoCに着手し、ドメインの自律性と全社管理を両立する連邦型ガバナンス体制を段階的に構築することです。
5. コストをどう見積もるか
データ基盤を選ぶ際には、それにどれだけの投資が必要になるかも気になるポイントでしょう。
ただし、データ基盤のコストは「使用目的」や「想定ユーザー数」「使用の頻度」「データの規模感」「必要とされるデータのリアルタイム性」「現有のデータ資産」「データ利活用に関する組織の体制・成熟度」といった多岐にわたる要素によってさまざまに変化します。
しかも、必要とされるコスト全体の中で、ツールのコスト(ライセンス費用)が占める割合はそれほど大きくなく、それ以外のコストについて入念に見定めることが重要となります。
そこで、コストを見積もる際に考慮すべき事柄を列記しておきます。今後の参考にしてください。
初期構築費:インフラ設計、環境構築、データ連携、データ移行、テストなどのコスト
データ整備コスト:データクレンジング、名寄せ、定義統一、品質ルール作成などのコスト
運用コスト:障害対応、権限管理、監視、パフォーマンスチューニングなどのコスト
ガバナンスコスト:データカタログ作成・メタデータ管理、監査対応、セキュリティ設計のコスト
人材コスト:データエンジニア、データスチュワード、データプロダクトオーナーなどの確保・育成コスト
さらに、データメッシュの採用を検討する際には、組織変革のために必要とされるコストを別建てで見積もる必要があります。
6. データ基盤選びで最も留意すべきこと
DWH、レイクハウス、データメッシュのいずれを選ぶにせよ、データ基盤の導入で最も重要なのは、ツールの導入を目的化しないことです。同様に「データドリブン経営」や「データの民主化」という「流行り」に乗せられてデータ基盤を選ぼうとするのも避けるべきです。
データドリブン経営やデータの民主化にしても、それは経営基盤の強化、あるいは市場競争力を高めるための手段であってゴールではありません。最終的なゴールは、収益力のアップにあるはずです。
本来的な意思決定の出発点は、収益をどの程度伸ばすかであるはずです。その目標に沿って何を実現するかが決まり、それが結果的にデータドリブン経営やデータの民主化、あるいはAI活用の推進へとつながるならば、それがデータ基盤の整備へと落とし込まれていきます。この流れの中では、データ基盤にどの程度のコストをかけるべきか、また、どの基盤に投資すべきかが自ずと決まるはずです。それこそが、あるべきデータ基盤の選び方であり、投資の決め方といえるのではないでしょうか。
その点を踏まえながら、CTCでは、データの戦略的な活用を支援するサービスを、戦略策定の段階からご支援しています。
データ活用のライフサイクル全体を伴走支援するサービス「D-Native(ディーネイティブ)」では、ビジネス課題の整理から基盤の構築、活用の定着化までをワンストップでサポートします。データ基盤の選び方や投資の優先順位にお悩みの際は、お気軽にご相談ください。

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