快適に使える情報教育環境を学生に提供したい、社会に出てからも役立つような最新のテクノロジーを取り入れたい、キャンパスのイメージを向上できるようなシステムを構築したい……。多くの大学ではこのように考えてはいるものの、予算には限界がある。許される予算の中でベストのICT環境を実現しなければならない。
このような課題を抱えていたフェリス女学院大学では、多くのベンダーの提案からCTCを選んだ。その理由は、大学のニーズや課題を正確に把握し、それらを鮮やかに解決するジャストフィットな提案であったこと。さらに、SEや営業の素早いレスポンスが「これなら楽しく仕事ができる」と評価されたところにあった。
課題と効果
- 課題
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- サーバやストレージの運用負荷を軽減したい
- 端末種別の混在した環境でもネットワーク認証したい
- アカウントを忘れた学生への対応を軽減したい
VM Pool、Alaxala の導入
- 効果
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- サーバ仮想化により可用性を向上し、運用負荷を軽減
- 端末種別、利用者の属性に応じた柔軟でセキュリティの高いネットワーク
- 全システムで同一のアカウントを実現し、アカウント管理の負荷を大幅軽減
導入事例インタビューデータ
- 学校名
- 学校法人 フェリス女学院 フェリス女学院大学
- 所在地
- 緑園キャンパス 神奈川県横浜市泉区緑園4-5-3 (文学部、国際交流学部、音楽学部1・2年次) 山手キャンパス 神奈川県横浜市中区山手町37 (音楽学部3・4年次)
- 創立
- 1870年(明治3年)
- URL
- http://www.ferris.ac.jp/
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フェリス女学院大学
情報センター長 音楽学部教授
秋岡 陽 氏
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フェリス女学院大学
情報センター 講師
内田 奈津子 氏
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フェリス女学院大学
情報センター 助手
因幡 哲男 氏
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フェリス女学院大学
情報センター 係長
大谷 智夫 氏
導入背景
時代を拓いてきた日本最古のミッション系女子大
フェリス女学院の創立は1870(明治3)年。日本初の近代女子教育機関であり、日本最古のミッション系女子大でもある。2010年に創立140年を迎え、時代を拓くリベラルな女性を世に送り出してきた。
「そのせいでしょうか。新しいことに抵抗がなく、挑戦的なことがしやすい雰囲気があります。ICTシステムの導入でも、ずいぶん思い切ったことができています」と、フェリス女学院大学 情報センター長 音楽学部教授 秋岡 陽 氏は語る。
学部は文学部、音楽学部、国際交流学部の3学部で、全学生数は約2600人。これが横浜市泉区緑園と同市中区山手の2つのキャンパスに分かれている。
フェリス女学院の特長の1つに「エコキャンパス」がある。2009年9月「第1回エコ大学ランキング(私立大学部門)」同大が第1位となった。これは、エコ・リーグ(全国青年環境連盟)が主催した調査によるもので、調査に回答した全国109大学を対象として行われた。この成績を裏付けるように、キャンパスには風力発電、ビオトープ、太陽光発電などが見られる。
複雑なシステムによる運用負荷の軽減を目指す
同大ではICT教育および事務効率化のために、早くから全学をネットワークで結び、サーバや端末を適宜配置してきた。「それらを継ぎ足して拡大してきたものですから、ひどく複雑になっており、運用に追われていました」と、同大 情報センター 助手 因幡 哲男 氏は強調する。
サーバのセキュリティアップデートは何十台に及び、これを省力化したかった。メールシステムやストレージは、ユーザーからの登録内容の変更等のメンテナンスの工数が多く、負担になっていた。また、前システムでは、事務系ネットワークと教育系ネットワークをポートベースVLANで分けていたため、図書館での学生アルバイトのネットワーク利用が難しい状況だった。
「アカウントを忘れて運用担当へ問い合わせてくる学生の多さも課題でした」と、同大 情報センター 係長 大谷 智夫 氏も振り返る。
同大では4年に1回の周期でシステムを刷新している。その4年目が2009年3月であった。「このようなこともありますから、いっそ、最新の技術を取り入れて、学内の全システム総入れ替えのつもりで、2007年ぐらいから検討を開始しました」と、秋岡氏は解説する。
ジャストフィットなシステムをCTCが提案
課題を整理すると共に、最新の技術動向を探るために、大学側ではベンダー各社に声をかけ、どのような解決策があるのかを問い合わせた。問い合わせた先は13社、2007年夏のことである。システム全体を提案してきたベンダーもあったし、分野を限って提案してきたベンダーもあった。それら提案を照らし合わせ、大学ではRFPを整理していく。
翌2008年2月にはRFPも固まり、6社に絞って再提案を求める。これを検討の上、4社に絞り、今度は見積も含め、最終的な提案とプレゼンテーションを求めた。こうして最終的に採用されたのがCTCの提案であった。
「基本的に、私達の要求にジャストフィットな提案であったこと。エコも取り入れて、痒いところに手が届くような内容でした」と、大谷氏は評価する。また、因幡氏は「正直、この段階になると、あまり優劣はないんですね。手段は違っても得られるメリットにさほど差はない。では、どこが違ったか。担当するSEや営業のフットワークが際立っているんです。ガチガチに堅苦しくないし、決してルーズでもない。CTCとなら楽しく仕事ができるんではないかと思わせる魅力がありました」と、CTCのスタッフを認める。
システム概要
仮想化統合インフラ「VM Pool」とAlaxalaによるトリプル認証
ネットワーク機器に採用したのがAlaxala。コアに、エンタープライズ向け10ギガビットスイッチ「AX6304S」、エッジに「AX2430S」を採用している。AXシリーズは、トリプル認証(IEEE802.1X認証/Web認証/MAC認証)に対応しており、さまざまなOSや多彩な端末が混在したシステム環境でのユーザー認証に対応する。
とりわけ、同大の図書館では、事務系システムと教育系システムでプリンタを共用し、さらに学生アルバイトが事務系システムを利用するという混在する環境でありながら、利用者に適した認証とネットワークの割り当てが可能となった。
そして、CTCでは同大で課題となっていたメール管理を省力化するため、外部の教育機関向けフリーメールサービスを提案している。学内の認証システムの見直しも行い、このフリーメールについても同期を取る仕組みを導入した。
導入効果
大幅な可用性と運用効率の向上
システムは、翌2009年2月からフリーメールの利用を開始。3月にはネットワークやVM Poolも稼働を開始した。
「システムの可用性が高まりました」因幡氏は新システムを認める。「物理サーバに障害発生し、サービスが停止してもVMware High Availabilityで、自動的に別の物理サーバでサービス提供できます。また、VMotionで別の物理サーバへ移行することで、無停止でメンテナンスでき、これにも助けられています」(因幡氏)。
アカウントを統合したことによるメリットも大きい。「ほぼシングルサインオンですが、まだ中にはいくつか認証を求められるシステムもあります。それでも、同じアカウントで学内のシステムもフリーメールも利用できる効果は大きい。我々運用側への問い合わせが激減しました」と、大谷氏も顔をほころばせる。
従来、特に履修登録時には自分のアカウントを忘れている学生が多く、そのための専用窓口を設けていたとさえいう。だが、新システム稼働後は、アルバイトの事務員でもアカウントの登録や削除ができるほど、管理が簡単になった。
今後の展望
もっと自由にパソコンを使える環境を提供したい
「大変いいシステムです。望んでいた最新の環境を手に入れることができました。この規模の女子大では十分なレベルです」と、情報センター 講師 内田 奈津子 氏は満足げに語る。
パソコン教室とは別に、同大では現在120台のモバイルパソコンをキャンパス内で貸し与え、無線LANを経由して自由に使える環境を提供している。また、一定の講習を受ければ、持ち込みパソコンも許可しており、これが40台ほどに及んでいる。このように端末数は増えているにもかかわらず、運用負荷は低下している。
「この持ち込みパソコンをもっと増やしたいですね。いっそ、パソコン教室のパソコンをなくして、すべて学生の持ち込みパソコンで自由自在に授業を展開してみたいと考えています」と秋岡氏は抱負を語る。
また、因幡氏は「フェリスは山手と緑園の2ヵ所にキャンパスがありますので、これを活かしてディザスタリカバリを実現したいですね。またはIDCを活用するという手もあるかも知れません。これらもすでにCTCには相談しています」と頼りにされるほど、CTCの提案力と素早いレスポンスは高く評価されている。
用語解説
トリプル認証
スイッチの1つのポートで、IEEE802.1X認証、Web認証、MAC認証に対応していること。IEEE802.1X認証は事務系パソコンなど認証ができる。Web認証ではモバイルパソコンでの認証に対応。MAC認証はプリンタなど個々の機器の認証ができる。これらにより、端末種別の混在した環境での認証にAlaxala AXシリーズは適している。
シングルサインオン
1回の認証ですべてのシステムにログインできること。