事例

グローリー工業株式会社 様

更新

NonStop Serverによる電子決済システムを構築し、新規決済市場の開拓に必要な高信頼の環境を確保

安定したシステムにより、サービス品質の向上と顧客からの信頼向上を実現

通貨処理機のトップメーカー、グローリー工業(株)は、通貨や文字、画像などを識別する「認識・識別技術」と、製品を具現化する「メカトロ技術」をベースに、金融・流通・交通・遊技など幅広い分野で革新的な製品群を送り出している。決済の多様化、キャッシュレス化に対応するために、グローリー工業では、非現金の決済という新分野に乗り出したが、実験的に構築した電子決済システムは限界を迎えていた。そこで、将来へ向けシステムの再構築を決断した。

課題と効果

課題
  • 多発する障害による過大なメンテナンス負荷を減少したい。
  • 手作業が必要なシステムの運用を自動化・ノンストップ化したい。
  • 端末数の増加による高負荷トランザクションに対応したい。

NonStop Serverと
クレジット統合パッケージの組み合わせによる

24時間365日ノンストップの電子決済システムを構築

効果
  • サービスを阻害する障害がなくなり、運用要員の負荷が軽減
  • 人手のいらない高信頼の24時間365日ノンストップ稼働が実現
  • 余裕のトランザクション環境を確保でき、端末数の増加にも余裕で対応

導入事例インタビューデータ

会社名
グローリー工業株式会社
所在地
兵庫県姫路市
資本金
128億9,200万円
代表取締役社長
西野秀人
従業員
1,772名(2004年3月31日現在)
URL
http://www.glory.co.jp/新しいウィンドウで開く
  • グローリー工業 CAN事業推進部 GCANセンター 所長 井澤豊 氏

    グローリー工業

    CAN事業推進部 GCANセンター 所長

    井澤豊 氏

  • グローリー工業 CAN事業推進部 GCANセンター 品質保証グループ グループマネージャー 辻山茂 氏

    グローリー工業

    CAN事業推進部 GCANセンター 品質保証グループ グループマネージャー

    辻山茂 氏

導入背景

自動販売機と電子決済システムの組み合わせで市場拡大を狙う

本社に設置されたショールーム「GLORY NEXT GALLERY」

グローリー工業は、通貨処理の専門メーカーとして、貨幣処理機や自動販売機などの開発・製造を手がけていた。だが、決済の多様化やキャッシュレス時代という波を受けて、非現金の決済処理という新規分野への進出を決めた。これは、メーカーならではの強みを活かした戦略だった。つまり、自動販売機と電子決済サービスをトータルに提供することにより、お客様の要望に合った利用スタイル、料金体系を容易に実現することができる。ここを切り口にお客様を説得できれば、決済の手数料はもちろん、機器の拡販も見込めると考えたのである。

ターゲットは、病院やホテル、パチンコ店などのレジャー産業など。最初の電子決済サービスは、研究開発も兼ね担当者の横にIAサーバを一台置くところから始まった。CAN事業推進部GCANセンター所長の井澤豊氏は「当初、リテール機を商店に置いてもらい、小規模で行いました。だが、やはり私どもにとって強みである貨幣処理機能を入れた自動販売機を導入することになりました。」と語る。そこで、本格的な電子決済センターを立ち上げることとなった。

2001年1月、電子決済サービスや証券代行業務のアウトソーシングサービスなどを行うグローリー工業の情報処理センター「GCAN(ジーキャン)センター」がオープン。本格的に事業化が進められた。だが、研究開発用に使用していた当初の決済システムをそのままセンターに導入したため、不具合も抱えることとなる。「スモールスタートといえば言葉はいいが、当初はそこまでの拡張性を考えていませんでした。処理数が増えるからと単純にサーバ台数を増やしたり、クレジットを始める際にはクレジットサーバを立てたりと、システムの構成は統制がとれていませんでした」と井澤所長は当時の状況を振り返る。市場の拡大とともにシステムは肥大化。IAサーバの数も20台を越え、システムの安定性、信頼性が低下し、バックエンドの事務系システムや会計処理システムにも影響が出始めた。しかも、このまま自動機の拡販を続ければ、あと1年でシステムが限界に達することが判明した。

さらに「病院からは、夜間窓口として、また、入院時に患者が多額の現金を所持する必要がないように電子決済端末を設置したい。など、市場から24時間365日ノンストップにして欲しいというニーズが寄せられていました」と、CAN事業推進部GCANセンター品質保証グループのグループマネージャー辻山茂氏は、当時の状況を語る。

決済サービス概略図

決済サービス概略図

カード端末から入力されたトランザクションはGCANセンターで一旦中継され、最終的には各カード会社のホストへと伝えられる。

導入経緯

トータルコストを考えれば、NonStop Serverの選択が有力

迫り来るシステムの限界、市場のニーズの高度化、トップからも電子決済システム商用化の命令が下される。ここに来て、システム再構築の検討が始まった。当初、井澤所長は、UNIXサーバによるクラスタ構成とFTサーバを考えていた。NonStop Serverが金融業界で一番の実績を上げていたことは知っていたが、ネックは価格にあった。だが、保守を含めたトータルコストを考えたとき、UNIXサーバで再構築するよりも、NonStop Serverでリプレースしたほうが、将来的には安くつくと判断したという。

そこで、NonStop Serverによるシステムリプレースを経営層に提案。無事、プロジェクトの実行許可が下された。だがその時点で、電子決済システムの更新まで期限はわずか6ヶ月しか残されていなかったのである。

各種ドキュメントを作成して課題・問題をスムーズに解決

わずか6ヶ月で、電子決済システムのすべてを更新しなければならない。プロジェクトチームを結成し、まず要件定義に入った。旧決済システムで使っていない機能や重複している機能を洗い出し、大胆に機能削除を行って、開発期間の短縮を実現する。また、QA表を文書化して、ベンダ間の意思疎通をサポートし、会社間の用語の違いによる誤理解の防止や詳細仕様のスムーズな相互理解を図った。さらに、課題管理表を作成して、問題点をプロジェクトチーム内で共有化。これらをインフラ分科会や本番移行分科会といったプロジェクト内に設置したテーマ別の各分科会で集中的に検討し、迅速に対応する。こうして短期間でのシステム開発が可能となったのである。
最も苦労した点は、自動販売機に組み込んである通信モジュールのCANコネクタへの対応だったという。「CANコネクタはうちの機器の特色でもあるのですが、今回の最大の課題でもありました。オリジナルのプロトコルで開発しているため、当然、パッケージソフトは未対応です。そこで、CANインタフェースともいうべきものを開発したのですが、CANコネクタにはバージョンが4つもあり、設計者も頭を抱えながらかなり熱心に議論していました。でも、いざやってみると、拍子抜けするほどすんなりつながりました」と、辻山氏は笑いながら当時を振り返る。
こうして無事、期間内にアプリケーション開発が終了した。

綿密にリハーサルを繰り返して新システムへの移行を実行

新しい電子決済システムへの移行に際しては、電子決済端末や自動販売機などの自動機を設置しているお客様に一切迷惑をかけずに実施しなければならない。そこで、いつまでに何をやらなければいけないか、全ての作業項目を紙に書き出し、タイムチャートを作成した。

移行に際して辻山氏は「最初、紙上で計画を立てていましたが、やはり実機でやろうというメンバーからの提案によって、ストップウォッチで計りながら、何度もリハーサルを繰り返しました。誤操作を防ぐために必ず二人で相互監視しながら作業をし、作業が終わったらプロジェクトルームに電話して、次の指示を受けるまで作業を進めない。予定時間のうちにできなかったら、即電話を入れるなど、チャートに従って進めるように徹底しました」と語る。さらに、万一の事態を考えて、旧決済システムへ切り戻しをする訓練まで実施したという。

綿密なリハーサルを繰り返されたシステム移行は、まず比較的楽な店舗などに設置された決済を行うリテール端末から実施された。そして、GCANセンターの主力である自動機の移行。その日は台風だった。外の荒れ模様とは対照的に、移行はタイムチャートにしたがって全てが順調に進み、ミスなく想定時間より短い時間で終了した。台風で一時帰宅できなくなったことを除けば、全てが上手くすすんだ一日だったという。

システム概要

余裕のトランザクションで、端末数増加に対応

新しい電子決済システムは、NonStop Server一台に集約された。CPUは、本番用2系統とテスト用1系統が搭載されている。テスト用は、新しい自動販売機ができたときの接続テスト機として使用されるとともに、いざというときの代替機としても使用する仕組みとなっている。

新システム稼働後、三日間は、メンバー総動員で監視体制をひいていた。だが、あまりに何も起こらないので、待機組はよく眠ることができたという。

新システムの稼動からこれまで、トラブルは一度も起きていない。これは「トラブルが起きていない状況であっても、トラブルを想定した、例えば警報・障害通知メールのレベル分けとサービスへの影響の有無、ベンダへの連絡の必要性の有無を迅速に把握できる運用マニュアルの整備と人材の教育・訓練が極めて重要です」という井澤所長の考え方によるところが大きいだろう。

新・電子決済システムは、以前と比較にならない処理量の対応や巡回監視からの解放を実現。現在、月間で約6万6000件、金額にして約11億円のトランザクションを取り扱っている。「余裕たっぷりなので、もっと自動機を販売してもらわなければ」と辻山氏も嬉しい声をあげる。旧決済システムの担当だった5人のスタッフも煩雑な運用やトラブル対応から解放され、クリエイティブな仕事に専念できるようになったという。

システム概要図

システム概要図

今後の展開

信頼できる電子決済システムを背に新規決済市場の開拓を狙う

ショールームには最新の電子決済端末が並ぶ

ショールームには最新の電子決済端末が並ぶ

電子決済システムが安定稼動したことで、バックエンドの業務システムなど、周辺システムの機能強化についても検討しているという。信頼できる電子決済システムをバックに、GCANセンターは、事業の拡大を狙っている。自動機までを独自に開発できる強みを活かし、ユーザーニーズにあわせた柔軟なシステムの提供を行う考えだ。病院向け市場におけるクレジットカード会社と組んだ新しいサービスの展開、社員IDカードとクレジット機能を組み合わせた社員食堂システムのようなエリア内決済システムなどの構築も近い。

いまGCANセンターは、独自で利益を得るプロフィットセンターへ、新たな一歩を踏み出したのである。

お問い合わせ

電子決済システム

HP社のNonStop Serverと日本総合研究所のクレジット統合パッケージTOURNET/CARDの組み合わせによるノンストップ電子決済システムです。強靱なインフラにより24時間365日の運用に耐え、今後の機能拡張およびメンテナンスも容易に行えます。

用語解説

自動販売機

1958年、グローリー工業が国内初のたばこ自動販売機を開発。その後、省スペース、バリアフリー対応など、多機能製品をラインアップ。また、デビットカードでパチンコカードが買えるカード販売機など、電子決済システムに対応した自動販売機も開発している。

GCANセンター

当初は、Glory Card And Networkセンターであったが、ビジネス領域の拡大にともない、いまでは、CAN(できる)の意味を採用。何でもできる情報処理センターの意味合いで使われている。

CAFIS

Credit And Finance Information System:共同利用型クレジットオンラインシステムの略。キャフィスと読む。NTTが開発し、NTTデータが提供する技術で、クレジット会社と加盟店を通信回線で結び、利用限度額やカードの有効性のチェックを行う。

CARDNET

日本カードネットワーク(JCN)が提供。クレジット会社と加盟店を通信回線で結び、利用限度額やカードの有効性のチェックを行う。

TOURNET/CARD

ノンストップ稼働を実現するクレジット統合パッケージ。日本総合研究所製。

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