課題と効果
- 課題
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- IT課題:
保守コストを抑えたい(TCO削減) - IT課題:
操作性を向上したい(作業負荷軽減) - 経営課題:
情報漏えいを防止したい(セキュリティ対策)
- IT課題:
シンクライアント化により 店舗のシステムのインフラを刷新
- 効果
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- 故障率の大幅な低下と運用性向上による保守コストの削減
- 素早い起動やレスポンスにより、接客業務の品質向上
- 店頭に情報を置くことなく、漏えいの危険性を排除
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- 株式会社ニューヨーカー
- 代表者
- 代表取締役社長 戸澤 かない
- 所在地
- 東京都千代田区外神田3-1-16
- 資本金
- 3億円(平成19年7月末現在)
- 設立
- 平成18年8月21日
- 従業員
- 713名
- URL
- http://www.newyorker.co.jp/
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株式会社ニューヨーカー
管理本部長
本間雅弘 氏
導入背景
国産の老舗ブランド ニューヨーカー 1999年から店舗のIT化を開始
ニューヨーカーの創業は1964(昭和39)年。紳士服に始まり、その4年後に婦人服の販売を開始している。高品位の生地とナチュラルショルダーメイクによる確かな縫製を基本とした紳士服。そして、時代の流行感を加味した通勤着を得意とする婦人服。ともすれば、海外ブランドが脚光を集めるアパレル業界において、国産ブランドとして確固たる地位を築いてきた。
開発、生産、販売のワールドワイドな分業化も、同社の特長となるだろう。生地となる羊毛はオーストラリアの自社牧場で生産し、中国に発送。上海に工場を建設し、紡績から縫製までの一貫生産体制を確立している。ここへ日本からオーダーが入る仕組みだ。
このオーダーの仕組みに一役買っているのが、国内全店舗に配置されているパソコンだ。
「店舗のパソコンは1999年から配置しました。ITを活用して顧客サービスの向上を図るためです。」と、同社 管理本部長 本間 雅弘 氏は振り返る。さらに2003年には、この店舗システムを刷新、より柔軟な分析システムにより、蓄積データを販売や製品開発に活用することが可能になった。
各店舗のパソコンは、POSシステムのほか、勤怠管理システムや経費精算システムとも連動している。さらにメールのやり取りにも活用されており、店舗の事務処理には欠かせないツールとなっている。「パソコンが止まると店頭業務に大きな支障をきたします。場合によっては販売活動ができなくなる恐れもあります。それほど、パソコンはお店に不可欠な武器となっています」(本間氏)。
導入経緯
保守コスト、セキュリティ、使い勝手 老朽化とともに課題が見えてくる
店舗の事務処理に欠かせないパソコンであるが、老朽化とともにいくつかの深刻な課題が見えてきた。
1つ目は保守コストの増加である。パソコンが古くなるにしたがって、故障が目立つようになった。故障の度に保守要員が全国を飛び回り、この派遣コストが大きな負担となった。
次が操作性の悪さ。情報をすべて本体内のディスクに保存するため、起動が著しく遅くなった。店舗によっては数十分もかかることもあり、朝に電源を入れてもしばらくは事務処理ができない状態であった。
「そして最も重要視したのが情報セキュリティです」と本間氏は指摘する。「2004年に個人情報保護法が施行されましたが、この前後から一般的にもパソコンからの情報漏えいが問題視されるようになりました。特に弊社は百貨店内の店舗が多いため、情報セキュリティ対策については百貨店からも厳しく要請されています。そのため、重要な経営課題として万全な対策を模索していました」。
さらに、同社では基幹システムや関連するアプリケーションの刷新を検討していたが、現状の店頭端末のままでは、アプリケーションの刷新1つをとっても、多大な労力がかかることがわかった。
こんな時、CTCから提案されたのが店頭端末のシンクライアント化であった。
CTCがシンクライアント化を提案したのが2006年12月。正式の発注は翌2007年4月。翌月から構築を開始し、7月からパイロット店舗4拠点でシンクライアント化を実施している。
システム概要
HP CCIにより店頭端末をシンクライアント化 店頭の環境をそのままに順次刷新
現在、シンクライアントシステムとしてはいくつかの種類が製品化されている。このなかからCTCが提案したのは、日本ヒューレット・パッカード社製の「HP CCI(Consolidated Client Infrastructure)」だ。ディスクレスのシンクライアント端末、演算処理を行うブレードPC、ストレージ、そして運用管理者向けの管理ツールで構成されている。
店舗に置かれるシンクライアント端末には、ハードディスクやメモリーなど、本来パソコンが装備している情報記憶装置が一切搭載されていない。一方、パソコンとしての機能に必要なハードディスクやメモリーなどは、サーバの役割を担うブレードPCに格納されている。このブレードPCは東京都内のデータセンターに設置されており、各店舗のシンクライアント端末とネットワークで1台ずつ接続されているのだ。そのため、店頭に機密情報が置かれることがなくなり、情報漏えいの心配が大幅に軽減される。
HP CCIを提案した理由には、第1に容易な保守性があげられる。パソコンの不具合が最も起こりやすいのは、ディスクなどの駆動部と言われている。この駆動部がシンクライアント端末には入っていないため、故障の発生率が極めて低くなる。新しいアプリケーションのインストールやパッチの更新も、データセンター側で一括管理でき、販売員への負荷は一切かからない。
次に、ほぼ従来どおりの環境のままで使えること。パソコン本体がデータセンターに集約されただけであり、OSは変わらないし、使用していたアプリケーションも同じ。そのアプリケーションの動作検証も簡単であった。販売員はシンクライアント化を気にすることなく、従来と同じ感覚で操作できる。レジやバーコード、プリンタなどの各種店舗システムも従来のまま使うことが可能だ。
そして3つ目が、全国の端末を五月雨式に順次、シンクライアント化できること。ブレードタイプのサーバであるため、拡張計画に合わせて1台ずつブレード数を追加していくだけでいい。
「この五月雨式に拡大できるところが、我々には最も適していました。店は扱っている商品や地域によって、繁忙期が大きく異なります。クリアランスセールの時期は導入できないなど、お店の都合によって調整できて助かっています」と、本間氏は強調する。
今後の取り組み
IT課題と経営課題の両方をクリア 攻めのインフラとして期待
導入したパイロット店舗からは「今まで数十分かかっていた起動がわずか10秒ほどでできるようになった」と、驚きの声があがっている。「全店舗への展開を、私も大変楽しみにしています。IT課題であったTCO削減と作業負荷軽減については、故障率の大幅な低下と運用性向上により保守経費を抑えることができます。また、素早い起動やレスポンスにより現場の操作性の負荷を軽減できました。さらに、経営課題であったセキュリティ対策については、店頭に情報を置くことなく、漏えいの危険性をなくすことができました。CTCは、私たちのような全国展開をしている店舗にとって最適なシンクライアントシステムを提案してくれました」と、本間氏はCTCとHP CCIを高く評価している。
CTCは2003年の刷新以来、アプリケーションとインフラの保守を担当しており、毎月1回のミーティングを重ねている。「問題を確実に共有しているし、お互い本音を話し合える、貴重なビジネスパートナーです」と、本間氏からの信頼も厚い。
IT課題である保守コスト削減と操作性向上、そして経営課題である情報漏えい対策を実現できたばかりではない。シンクライアント化は同社の新しいインフラとして大きな期待を寄せられている。「これで簡単にアプリケーションの刷新ができるようになりました。今までは販売員の負荷にならないようにするのが大変でした。店舗システムや分析システムなどの更新もすでに計画中です。これも大変楽しみです」と、本間氏は今後の構想を語る。店頭端末のシンクライアント化は、同社の攻めのインフラとして、大きな期待が寄せられている。
用語解説
シンクライアント
端末に情報を置かないパソコン。重要な情報をサーバや遠隔地に置くことで、漏えい防止を目的に多くの企業で導入が進んでいる。シンクライアントにはいくつかの種類があり、HP CCIはブレードPCとシンクライアント端末を組み合わせてシステム化している。