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株式会社マイクロアド 様

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「Pivotal HD」と「HAWQ」を組み合わせた新たなデータ分析基盤を導入

現在、インターネットメディアの広告枠は、ユーザーのWebサイトアクセスに応じて瞬時(0.1秒以内)に売買を行うRTB(Real-Time Bidding)と呼ばれるオークションによって取引されている。卓越したビッグデータ分析力を武器にこのRTBをベースとした広告配信のビジネスモデルで急成長を遂げているのがマイクロアドだ。「Pivotal HD」と「HAWQ」を組み合わせた新たなデータ分析基盤を導入し、さらに競争力を高めている。

課題と効果

課題
  • 急速な分析データの多様化と大規模化
  • 高度なデータ分析パフォーマンスの向上
  • 投資対効果のバランス

Pivotal HD Enterprise HAWQ

効果
  • IAサーバのスケールアウトによる柔軟な拡張性
  • 既存のデータ分析基盤ノウハウの活用
  • 一般的な Hadoop+HIVE環境に比べ最大50倍の高速処理

導入事例インタビューデータ

会社名
株式会社マイクロアド
所在地
東京都渋谷区円山町19-1 渋谷プライムプラザ9階
創業
2007年7月
URL
https://www.microad.co.jp/新しいウィンドウで開く
  • システム開発部 部長 佐藤 由紀 氏

    システム開発部 部長

    佐藤 由紀 氏

  • システム開発部 チーフエンジニア 車田 篤史 氏

    システム開発部 チーフエンジニア

    車田 篤史 氏

  • システム開発部(京都研究所) フェロー 青井 順一 氏

    システム開発部(京都研究所)
    フェロー

    青井 順一 氏

導入背景

毎日100億件に及ぶデータを収集 そのデータ全件に対する統計解析を行いながら高速性を確保

インターネットメディアを舞台とした広告配信ビジネスで急成長しているマイクロアドの“強み”には、大きく2つのポイントがある。

1つはシステム技術力で、オークションにて広告枠を購入する際の内部処理を5ミリ秒(5/1000秒)という圧倒的なスピードで実現している。

もう1つは、広告枠の適正価格を算出し、メディア(セラー)に対しては最大限の収益を、広告代理店や広告主(バイヤー)に対しては最大限の広告配信効果をもたらすデータ分析力だ。同社 システム開発部の部長を務める佐藤 由紀 氏は、こう語る。

「単に広告配信のスピードを上げるだけなら、それほどの困難はありません。最も重要なのは、『誰に、どの広告を、いつ、いくらで配信するのか』というロジックそのものです。私たちは1日あたり約60億回参加しているオークションの実績値やユーザーのサイトアクセス履歴など、合計すると毎日100億件に及ぶデータを収集し、そのデータ全件に対する統計分析を行いつつ、高速性を確保しています。このような突出した技術力を保有していなければ生き残っていけないのが、インターネット広告配信の世界なのです」

そうした中、広告主のサイトを訪れたことのあるユーザーに対して再訪を促す「リターゲティング」と併せ、マイクロアドが特に注力しているのが「オーディエンスターゲティング」と呼ばれる広告配信手法だ。同社 システム開発部(京都研究所)のフェローである青井 順一 氏は、その手法を次のように説明する。

「ユーザーがさまざまなサイトを閲覧した履歴を分析・解析し、一人ひとりの興味や関心、属性などを推定します。これに基づいた確度の高い広告を配信することで、広告主とユーザーの双方のメリットを最大化することが可能となります」

Hadoopにより、安価なIAサーバを活用 必要な時に、簡単にリソースを拡張できるスケーラブルな環境を実現

複雑なデータ分析を高速処理する基盤として使われているのが、データウェアハウス(以下、DWH)と、そのフロントエンドとしてデータ加工処理やモデリングを設計・実装する分析ツールである。

もちろん、こうした仕組みは一度作ってしまえば、しばらく安泰というわけではない。気を抜けばすぐに陳腐化し、他社との競争で後塵を拝することになる。

「実際の広告配信の効果を見ながらPDCAサイクルを回し、常に戦略変更やロジックの修正、チューニングを図っていく必要があります。また、より多様なデータを、より大規模に収集し、それらを活用することで分析精度を高めていかなければなりません」(青井氏)

ただ、ビジネスである以上、その施策は必ずコストとバランスがとれたものでなくてはならない。既存のDWHをスケールアップするためには多大なコストがかかるため、フレキシブルな拡張は難しい。そこでマイクロアドが着目したのが、社内の別業務で実績を重ねてきた分散処理プラットフォーム「Hadoop」の活用である。

「Hadoopを使えば安価なIAサーバを活用し、必要なリソースをスケールアウトで簡単に拡張することができます。既存のDWHとHadoopを併用することで、データ種別や規模の増大にあわせて柔軟に容量とパフォーマンスを拡張できる分析基盤を構築したいと考えました」(佐藤氏)

システム概要

既存の分析ツールをフロントエンドとして活用できるPivotal HD Pivotal HDとHAWQの構成により最大約50倍の処理性能を発揮

基本方針を考えていたタイミングで、エンタープライズ向けHadoopディストリビューションの「Pivotal HD Enterprise」の提案をCTCが持ち込んだ。CTCは、既存のDWHと分析ツールの導入からデータ分析基盤の構築に携わり、「私たちのビジネスを熟知しているため、良きタイミングで素晴らしい提案をしていただけました」(佐藤氏)「これまでと同じ分析ツールをそのままフロントエンドとして活用できるPivotal HDは、私たちアナリストにとって最適なデータ分析基盤となります」(青井氏)

とはいえ、提案時点において実際に分析ツールとPivotal HDを連携させた実績はなく、本当に上手くいくのかという懸念があった。そこでマイクロアドは2013年11月に検証システムを導入。CTCのサポートチームから情報提供やアドバイスを受けながら、さまざまな問題点を一つひとつ解消していった。

同社 システム開発部 チーフエンジニアの車田 篤史 氏は、次のように振り返る。

「単にPivotal HDに分析ツールをつないでデータを集計するといったレベルにとどまらず、多様なデータを複合的に結合し、加工し、アウトプットするまでの一連の処理をきちんと組み立てられるのか。また、それぞれのプロセスを特性に応じて適切にPivotal HDとDWHの両基盤に振り分けられるのか。使い勝手も含め、多岐にわたる観点から検証にあたらなければなりませんでした」

もう1つの課題がパフォーマンスである。いくら操作面での要件を満たしたとしても、データ分析処理に長時間を要したのではまったく意味がないからだ。この検証作業で予想以上の効果を示したのが、Pivotal HDのオプションとして提供されているデータベースエンジン「HAWQ」である。

「一般的なオープンソース版の『Apache Hadoop』に『Hive』を組み合わせたデータ分析基盤とベンチマーク比較を行ったところ、Pivotal HD+HAWQ構成は最大で約50倍の高速処理性能を発揮したのです」(車田氏)

この検証結果から確信を掴んだマイクロアドは、Pivotal HD+HAWQの導入を正式に決定。2014年2月より稼働を始めた。

導入効果

1か月よりも3か月、1年と分析するデータの幅を長期化することでユーザーの行動をより詳細に理解する

Pivotal HD+HAWQの本格的な展開に向けて、マイクロアドは精力的に準備を進めている。

「計画しているのは、これまで以上に長期間にわたるアクセス履歴の分析です。1か月よりも3か月、1年と蓄積された大量データを分析することで、ユーザーの行動をより詳細に把握することができます。たとえば、どの商品とどの商品を比べて迷っているのか、季節ごとに嗜好がどう変わっていくのかなど、これまで見えていなかった特性を読み解くことで、より確度の高い広告配信につなげていきたいと考えています」(青井氏)

さらに、その先に広がっていくのが、マイクロアドの新たなビジネス展開だ。

「当社はすでにアジアの10か国以上で広告配信を手がけており、今後はさらにアジア以外の地域への進出も視野に入れています。また、インターネットを飛び越え、デジタルサイネージの分野での広告配信にも本格的に参入していく計画です」(佐藤氏)

そうした中では、これまでとはまったく違ったタイプのデータの収集や分析が必要になると予想され、マイクロアドの絶え間ないチャレンジが続いている。

入札戦略作成のためのデータ分析

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