国内トップシェアを誇るマーケティングプラットフォーム「アドエビス」を提供する株式会社ロックオンが、複数のマーケティング施策への接触履歴を“ヒト軸”で計測・評価できる新サービス「オーディエンスエビス」を開始した。同社がパートナーに選んだ伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)の支援のもと、カラム型データベース「HPE Vertica Analytics Platform」のパフォーマンス検証・機能検証を実施。システム導入を短期間で実施し、年間100億件に達する大規模計測データのリアルタイム分析を実現した。
課題と効果
- 課題
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- 広告効果を”ヒト軸”で測定・評価する「オーディエンス分析」の実現
- 顧客プロファイル機能およびカスタマージャーニー分析機能の実装
- 年間100億件の計測データを対象に分析要求リアルタイムに処理
- 処理性能、拡張性、投資対効果に優れた分析基盤の実現
- 効果
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- カラム型データベースを採用しリアルタイムビッグデータ分析を実現
- 年間100億件の計測データを対象に自由な切り口での分析を即時で可能に
- 従来のRDBでは不可能だった「オーディエンスエビス」のサービス化を実現
- 顧客育成型の「潜在層マーケティング」への進化を加速
導入事例インタビューデータ
- 会社名
- 株式会社ロックオン
- 所在地
- 大阪府大阪市北区梅田2-4-9 ブリーゼタワー13F
- 設立
- 2001年
- URL
- http://www.lockon.co.jp
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株式会社ロックオン
マーケティングプラットフォーム開発本部 開発部
内田 肇氏
導入背景・システム概要
新サービス「オーディエンスエビス」で顧客を育成する潜在層マーケティングへ
関西アドテクノロジーの雄がマーケティングプラットフォーム事業で攻勢に出ている。国内トップシェアを誇るマーケティングプラットフォーム「アドエビス」を中心に、デジタルマーケティング/プロモーションの成果を高める計測・分析サービスを拡充。バナー広告やコンテンツなど複数の施策への接触履歴を、“ヒト軸”で可視化・評価できる新サービス「オーディエンスエビス」をスタートさせた。その狙いを、株式会社ロックオン マーケティングプラットフォーム開発本部 開発部の内田 肇氏は次のように話す。
「いま、顕在層マーケティングから潜在層マーケティングへの移行が加速しています。その商品を買った人がどの広告をクリックしたか、という従来の評価方法に限界が来ていることは明らかです。その商品に興味のなかった人が、どんな情報に接触して興味を持ち、検討を進め、購入に至ったかという流れをトータルに評価しながら、マーケティング/プロモーション施策の精度を高めていくことが重要になっています」
オーディエンスエビスでは、顧客単位でその行動を詳細に分析する「顧客プロファイル機能」、施策を顧客行動の軸で評価して成果を明らかにする「カスタマージャーニー分析機能」を提供する。これらの機能により、潜在層向けのマーケティング施策をフローで捉えて評価し、投資対効果を最大化することが可能になる。
同社が「オーディエンスエビス」でこの革新的な機能を提供できた理由は2つある。
「ひとつは、当社がアドエビスをはじめとするツール群の提供を通じて、膨大なコンタクトポイントから日々計測データを収集・蓄積していることがあります。もうひとつは、『年間100億件に達する計測データに対して、リアルタイムで分析可能なシステム』を手に入れたことです」
ビッグデータ分析システムの経験豊富なCTCをパートナーに選定
「オーディエンスエビス」の分析基盤は、年間100億件に及ぶ計測データを対象に、顧客の要求ごとにリアルタイムで分析結果を可視化する。この驚異的なパフォーマンスを発揮する分析システムを提供したのが、CTCである。内田氏は、パートナーにCTCを選んだ理由を次のように語る。
「CTCの提案は、オーディエンスエビスに求められるパフォーマンス、将来のサービス拡大に応えるスケーラビリティ、エンジニアの教育コストを含む投資対効果、すべての要件を満たしていました。分析システムの中核に、カラム型データベースHPE Vertica Analytics Platformを採用するものでした」
HPE Vertica Analytics Platform(以下、HPE Vertica)は、分析処理に特化したカラム型(列指向の)データベースとして世界3,500ユーザーの導入実績を持つ。最大の特長は、カラム型製品ならではの圧倒的な分析パフォーマンスだ。汎用的な(行指向の)リレーショナルデータベースが、検索時に対象となる全データを読み込む必要があるのに対し、HPE Verticaではピンポイントで必要なカラム(列)だけを読み込む。ムダな処理を排してディスクI/Oを最小限に抑え、高効率かつ高速な分析パフォーマンスを実現する。
「ソフトウェア製品として提供されるHPE Verticaは、x86サーバとの組み合わせで初期コストを抑えながら導入できます。スケールアウトが容易で、サービスを停止することなくシステム性能を拡張できるメリットもあります。また、一般的なSQL文でクエリを実行できるため、エンジニアを再教育するコストも発生しません」と内田氏は評価する。
パフォーマンスおよびスケールアウトに関しては、CTCの総合検証センター「テクニカルソリューションセンター(TSC)」内に開設しているビッグデータ検証施設「Big Data Processing LAB(BPL)」に80億件の計測データを持ち込んで入念な検証が行われた。CTCは、HPE Verticaの開発元であるヒューレット・パッカード エンタープライズ社と緊密に連携し検証とチューニングを進めていった。
「まず、3ノード構成のシステムにおよそ80億件の計測データを格納し、オーディエンスエビスで使うSQLを実行してレスポンスを測定しました。結果は十分に満足できるものでした。さらに、5ノード、10ノードとスケールさせたとき、どれだけ処理性能を拡大できるか慎重に評価しました。結果は、期待を大きく上回るものでした。HPE Verticaは、5ノード構成において約2倍、10ノード構成において約3.5倍のパフォーマンスを発揮したのです」
検証では、サービスに影響を与えないノード追加の手順や、フェイルオーバー時の動作も慎重に確認された。要した日程は、性能・機能・スケールアウト検証に2週間程度である。CTCのBPLには、サーバやストレージなど充実したハードウェア/ソフトウェア環境が用意されており、検証要求に迅速に対応できた。内田氏は「確実に検証を実施したからこそ、短期間でのシステム構築が可能になった」と評価する。
導入効果・今後の展望
HPE Verticaで機械学習にチャレンジ オーディエンスエビスはコンシェルジュに
オーディエンスエビスは2016年2月に「顧客プロファイル機能」を、6月に「カスタマージャーニー分析機能」をリリースし、順調にユーザー数を伸ばしている。分析システムは、物理サーバ5台/データ量11TBのシステムからスタートした。内田氏は次のように話す。
「オーディエンスエビスのカスタマージャーニー分析では、100億件の計測データに対して、お客様が自由な切り口で分析要求を行います。たとえば、マーケティング施策に動画広告を組み込んだときに、コンバージョン率(CVR)や購買単価がどう変わったか、動画広告を行わなかった場合と比較してどうかを明示することができます」
分析システムでは、より高い分析性能を発揮させるために『プロジェクション』と呼ばれる機能を使い、HPE Verticaにデータをロードした直後に分散ノードごとのデータ配置や並び替えを自動的に最適化させている。
「カスタマージャーニー分析においては『パターンマッチング』が威力を発揮しました。どのサイトのどんな情報への接触を経て、どのバナーをクリックして購入に至ったか。ある行動履歴をひとつのパターンとして、これに合致した計測データだけを即座に抽出することができます」
施策軸からヒト軸へ――オーディエンスエビスは広告効果測定に新しい指針を示したが、次のステージへのチャレンジはもう始まっている。内田氏は、自らの思いを次のように話して締めくくった。
「HPE Verticaが備える予測関数を使って、『機械学習』に取り組みたいと思っています。オーディエンスエビスの顧客プロファイルでは、年齢層・性別・居住地・関心などの情報を扱うことができます。機械学習を使えば、こうした情報を収集しなくても、その行動から予測することができるようになります。近い将来、オーディエンスエビスはコンシェルジュやアドバイザーとしての役割を担うようになるでしょう。CTCには、継続的な技術支援を期待しています」
導入製品
- HPE Vertica Analytics Platform