コラム

これでナットク

~宇宙にも天気予報があるのは本当?~

更新

CTCがご提供する様々なIT技術に関する素朴な疑問を、CTCの社員が易しく解説します

衛星・通信の安全確保へ観測

太陽風と地球の磁気圏のイメージ図

 宇宙にも天気予報はあります。日本では、独立行政法人の情報通信研究機構(NiCT)が、宇宙天気予報をインターネットなどで発信しています。宇宙空間には、地球のような気象条件はありません。しかし、太陽が活動をしています。太陽からは、光や熱だけではなく、太陽風と呼ばれる磁場をもったプラズマ(陽子と電子の集合)の流れも噴き出しています。

 太陽風は、秒速数百キロメートルを超す速さで地球に吹き付けていますが、地球の持つ磁場によって形成されている磁気圏によって防がれています。その磁気圏は衛星軌道に及ぶので、通常であればプラズマが、地表の通信や衛星機器に影響を及ぼすことはありません。しかし、太陽は活発になると、太陽面に黒点が増え、複雑な構造になったり、爆発(フレア)が起きたり、コロナ(Corona=太陽外縁大気)ホールやCME(Corona Mass Ejection=コロナ質量放出)という現象が表れたりします。その時、太陽からの高エネルギー粒子、高エネルギー電子、X線が増えます。

 太陽はガス球でありながら約27日の周期を持って自転しています。放出したものはすべて地球に向いているわけではありません。現象が起きた位置や太陽風の進行速度によって決まります。太陽風が強くなると、磁気圏が乱れ、磁気嵐が起きます。衛星の電子機器などに被害を与えたり、電離層に影響を及ぼしたりすることもあります。例えば、2003年10月には太陽風が強くなり、日本の衛星(こだま)がセーフモードと呼ばれる緊急回避状態に入り、地表の電波に影響を与えたことがあります。

 私たちの生活は、衛星放送や通信にGPS、気象観測衛星など、数多くの電波通信や衛星によって支えられています。いまや、全世界で利用している(運用中)衛星の数は3000とも言われています。そうした衛星や通信の安全を守るためには、太陽の活動を定期的に観測して、危険が予測できれば警報を流すなどの予報が必要なのです。

 NiCTは太陽風の影響をリアルタイムで解析して、磁気圏、電離圏、熱圏などの状態を表示する宇宙天気統合シミュレータを開発し、CTCはそのリアルタイムシステムの構築にも協力しました。また、NiCTは毎日午後に予報会議を開いて、各国から提供している観測データを分析して経験にもとづいて宇宙天気予報を行っており、その資料の分析と予報発表にもCTCは協力しています。将来は新しい観測や新しい研究成果は宇宙天気予報に取り込まれるようになるでしょう。

(科学システム事業部 劉発華)

  • このコンテンツは2008年8月19日にフジサンケイビジネスアイ紙に掲載しました。
  • このページについてツイッターでツイート(新しいウィンドウで開く)
  • このページをフェイスブックでシェア(新しいウィンドウで開く)

このコラムに関するお問い合わせはこちら

※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。