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|特集|“ポストトゥルース”時代における情報への向き合い方と発信術

特集 “ポストトゥルース”時代における情報への向き合い方と発信術 【特別インタビュー】浜田 敬子 “Business Insider Japan” 統括編集長

事実であるかどうかは問わず、人の感情に強く訴えかける情報が世の中を動かす“ポストトゥルース(Post Truth)”と呼ばれる時代に、私たちは生きています。
今や情報が果たす役割は、以前とは大きく変わりつつあります。
そんな今、私たちは情報とどう向き合えばいいのか。
長年、朝日新聞社でニュース週刊誌『AERA』の編集に携わり、現在は世界的なオンライン経済メディアの日本版“Business Insider Japan”の統括編集長を務める浜田敬子氏に、情報やメディアの現状と、私たちのあり方、更には企業の情報発信について、語ってもらいました。

取材・文/近藤 雄生

若者が雑誌を買わない時代に

浜田 敬子

浜田 敬子

世界18ヵ国に展開するオンライン経済メディアの日本版“Business Insider Japan”統括編集長。1989年に朝日新聞社に入社後、前橋支局、仙台支局、週刊朝日編集部を経て、1999年からAERA編集部。2004年からはAERA副編集長。その後、編集長代理を経て、AERA初の女性編集長に就任。編集長時代は、オンラインメディアとのコラボや、外部のプロデューサーによる「特別編集長号」など新機軸に次々挑戦した。2016年5月より朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーを経て、2017年3月末で朝日新聞社退社。同年4月より現職。著書に、『働く女子と罪悪感』( 集英社)。「羽鳥慎一モーニングショー」や「サンデーモーニング」などのコメンテーターや、ダイバーシティーや働き方改革についての講演なども行う。

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浜田さんは、17年間にわたって朝日新聞社のニュース週刊誌『AERA』の編集に携わられ、編集長も務めた後、2017年より、世界的なオンライン経済メディアの日本版である“Business Insider Japan”(以下BIJ)を、統括編集長としてゼロから作ってこられました。紙からウェブへと舞台を移して約3年がたった今、感じられていることからお聞かせください。
浜田

長年、『AERA』を作る中で、情報を届けたい人になかなか届けられないというもどかしさがありました。特にミレニアル世代と呼ばれる20代、30代の人たちは、既にお金を出して雑誌を買う世代ではなく、紙を読んでもらうのは容易ではありませんでした。それがウェブメディアであれば、切り口や文体、写真の使い方などを工夫することで、読んでもらえるという手応えを感じています。実際にウェブメディアでは、どの世代の人がどれだけ読んでいるかが数字ではっきり確認でき、BIJは、読者の3分の2が20代、30代で、女性読者は3割を占めることがわかっています。また、いい記事を書けば爆発的に拡散されて世の中に大きなインパクトを与えられる。ウェブメディアの大きな力を実感しています。

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BIJが立ち上がってまだ3年というのは驚きでした。それだけ存在感のあるウェブメディアになっていると感じます。
浜田

アメリカでは既に10年以上の歴史があり、経済メディアとして広い信頼を得ていますが、BIJを立ち上げた頃、「ビジネスインサイダー」という名前は、日本ではほとんど知られていませんでした。そのため当初は、「そんなメディアは聞いたことがない」と取材を断られることもよくありましたが、しっかりと取材して書いた記事を1本1本積み重ねていく中で、徐々に信頼を得ていきました。そして、2018年1月に巨額の仮想通貨が流出したコインチェック事件の際にいくつもの特ダネ記事を出したことが、BIJの名前を広く知ってもらえる一つのきっかけとなり、今では企業から取材して欲しいと言われるメディアになりました。

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