|特集|“ポストトゥルース”時代における情報への向き合い方と発信術

考えることがますます重要になる
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- メディアの将来についてもお聞かせください。今後、人工知能(AI)の役割が記事を作る上で大きくなってくるとも言われています。そのような流れについてどうお考えですか。
- 浜田
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既に今、一部のメディアでは決算短信やスポーツの結果など、ある程度型の決まった記事の執筆にAIが使われるようになっています。では、いずれその範囲が広がって、人間の記者のやる仕事がなくなるかといえば、決してそうはならないと思っています。自動化できるところを自動化することで、むしろ人間の記者は、例えばAIが作った決算の記事から、その背景を考え、取材して分析するというように、人間にしかできないことにより専念できるようになっていくはずです。労働人口が減っていく日本では、それは必要であり、今後ますます進むであろうこの変化を、私はポジティブに捉えています。AIやその他の新しい技術が使われることによって生じ得る情報のねつ造など、新しいリスクへの対応は必要になりますが、メディア側も制作過程をよりオープンにして、読者も含め、多くの人でしっかりとチェックしていくことで、いい方向へと進んでいくことを期待したいです。
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- 最後に、改めて、浜田さんがメディアを作られる上で、これからも大切にしたいと思われていることを教えてください。
- 浜田
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読者、特に若い人に、様々な物事を自分で考えるための材料を提供し続けていきたいです。皆それぞれに、「何で自分たちはこんな理不尽な扱いを受けるんだ」とか「なぜ賃金がこんなに低いんだ」とか、感じていることがあると思います。
そうした疑問について考え、理解する上で、ニュースというものが大きな力を持っていると私は確信しています。前述のように、AIの発展によって今後ますます、私たちの誰もが、人間だからできることを見つけてやっていかなければならない時代になります。そして結局、人間に何ができるのかといえば、考えることなのです。私自身も、メディア側の人間として、徹底的に考えながら、取材し、様々な記事を世に送り続けていきたいです。

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