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|特集|イノベーションが切り拓く、豊かな未来

イノベーションが切り拓く、豊かな未来 全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」の生みの親とCTC未来技術研究所 所長が語る 【特別対談】阪根 信一 × 澤登 寿

スマートフォンや人工知能といった「イノベーション(技術革新)」は、近年、私たちの生活を急速に変え続けている。
イノベーションはどう社会を豊かにするのか。
衣類を自動で仕分けて折りたたむという世界初の製品を開発したセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズを率いる阪根信一氏と、CTC未来技術研究所 所長の澤登寿氏が、イノベーションの今、そして未来を語ります。

今、まさにイノベーションの時代

──
阪根さん率いるセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(以下:セブンドリーマーズ)は、「世の中にないモノ」にこだわったものづくりを行い、2015年に、世界で初めて全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」を発表し、大きな注目を集めています。一方でCTCは、ITを用いた様々なソリューションやサービスを世に送り出してきました。阪根さんはイノベーションを生み出す側、澤登さんはITというイノベーションのまっただ中でビジネスを推進する側。本日はそれぞれの立場から、イノベーションそのものをどう考えるのかをはじめ、今後、それがどう社会を豊かにしていくことができるのかをテーマに、お話いただければと思っています。まずは、世界や日本の技術面での現状をどのように見ていますか。
阪根
世界規模で見ると、現在はかつてないほど様々な技術によって新しいビジネスが生まれていると感じています。あらゆるものがインターネットにつながる「モノのインターネット(IoT)」※1化の流れが起き始めていますし、自動車の世界ではもはや乗り物というよりも走るスマホとも言えるような機能を搭載した製品も登場しています。その一方、日本では残念ながら高度成長期にあった勢いがバブル崩壊やリーマンショックによって減退したせいか、あまりイノベーションが起きない状況が続いていました。しかし、これは一時的なものだと考えており、ようやく最近、日本でも新たな勢いが出始めているのを感じます。
澤登
様々な最新技術の登場によって、起きつつある産業や社会の変化は「第4次産業革命」※2と言われます。その言葉の通り、今、テクノロジーが世の中を大きく変化させるターニングポイントに立っていると感じています。例えばIoTに加え、人工知能※3も急速に発展している。自動車の自動運転が普及し始めたり、阪根さんたちが手掛けるランドロイドが誕生したりと、まさに今、世の中が大きく変わろうとしていると思います。
阪根
確かにその通りですね。技術開発にはゴールがありません。私たち人間はこれまでとどまることなく新たなイノベーションを起こし、製品やサービスを作り出してきました。今後、新しい技術革命によってますますその流れは加速していくのではないでしょうか。
ランドロイド

洗濯・乾燥した衣類をたたむ・仕分ける「ランドロイド」。
画像提供/セブンドリーマーズ

──
私たちは変化の時代に生きているということですね。
そんな時代の中で、どのように変化へ対応されようとしているのでしょうか。
阪根
「世の中にないモノ」「人間の生活を豊かにするモノ」「技術的なハードルが高いモノ」。私たちの会社は、この3つの条件をクリアするテーマだけを選んで、モノづくりに取り組んでいます。中でも「世の中にないモノ」という点には特にこだわっています。私たちはテーマを選ぶ際、商品になっていない場合でも、論文に書かれていたり、どこかの企業が特許を出していたりすると、「世の中にない」というカテゴリーから除外します。今の時代、そのハードルをクリアするテーマを見つけるのは容易ではありませんが、その点に徹底的にこだわることで、私たちが生み出す製品に独自性が生まれ、それが当社の強みとなっていると考えています。そしてテーマを見つけたら、どんなに難しくとも挑戦し、形にする。その技術力と持続力を私たちは備えています。
澤登
CTCは創立以来、世界の様々な技術を組み合わせて、お客様の要望に沿った最適なシステムを提供することを生業としてきました。手元にある技術で実現できなければワールドワイドで最適な技術を探し、組み合わせて実現する。更に、システムを作るだけではなく、安定運用のためのメンテナンスにも力を入れることを心掛けています。長年営業の前線に立ってお客様の意見を聞き、それを形にするために注力してきましたが、そうした中で培ってきた様々な製品に対する知見をベースに、技術やサービスを"つなぎ、組み合わせる力"が私たちの一番の強みです。その強みをより直接的に活かすべく、当社では最近、「未来技術研究所」を設置しました。当研究所が中心になって行う事業の1つが、オープンイノベーション※4を支援するプラットフォーム「CTC Future Factory」です。これは、国内外のベンチャー企業や研究機関を私たちのお客様とマッチングさせて、新規のビジネスや技術を生み出すお手伝いをしようというものです。例えば、技術力はあるけれど事業化に苦戦しているベンチャー企業と、ビジネスの立ち上げにおいて十分なリソースを持ち、明確な目的を持つ企業を組み合わせる。ITの技術と伊藤忠グループのネットワークを持つ私たちは、その間をつなぐ役割を果たすのに適任だと考えています。
  1. モノのインターネット(IoT)
    家具や家電から産業機械まで、あらゆる「モノ」がインターネットに接続され、そのネットワークを通じて情報交換や制御が可能になる仕組みのこと。エアコンやテレビがインターネットに接続され、スマートフォンで操作できるというのはこの一例であるが、今後、あらゆるモノに広がることで社会が大きく変化すると考えられている。CTCでも、トイレにセンサーを設置してリアルタイムに個室の空き状況を確認できる「IoTトイレ」を開発している。
  2. 第4次産業革命
    IoTや人工知能、クラウドコンピューティングといった新しい情報技術によって現在起きつつある製造業の変革を指す。18~19世紀にかけてのいわゆる産業革命(第1次)、19~20世紀にかけて始まった大量生産(第2次)、そして20世紀後半からのコンピュータによって管理された生産(第3次)に次ぐものとしてこう呼ばれる。2011年にドイツ政府が発表した「インダストリー4.0」という語に端を発するとされる。
  3. 人工知能
    コンピュータによって人間の知能を実現させようという技術全般を指す。AI(Artificial Intelligence)とも呼ばれる。コンピュータが自ら学習して知能を高めていく「機械学習」を根幹として、これから様々な分野で利用されるようになると見られる。今後10~20年の間に、日本における仕事の約半分が人工知能またはロボットによって代替可能になるとも言われている。
  4. オープンイノベーション
    自社のみならず、他の企業や研究機関、大学、行政などと連携し、それぞれが持つ技術やアイデアを組み合わせることによって、新たなイノベーションを起こそうとする方法のこと。日本でも多くの企業がこの方法を技術開発などに取り入れている。

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