|特集|イノベーションが切り拓く、豊かな未来

「正しい」テーマと明確なゴールを持つ
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- セブンドリーマーズは、ランドロイドの他に、カーボン製のゴルフクラブのシャフトや、睡眠時の気道を確保する医療デバイス「ナステント」を開発されています。それぞれ全く異なる分野のイノベーションですが、どのようにしてこれらのテーマにたどり着かれたのでしょうか。
- 阪根
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カーボンシャフトは、前身の会社が宇宙技術を扱っていたことをきっかけに、宇宙分野でよく使われるカーボンをゴルフクラブに活かせないかと考えて開発に臨みました。ナステントは、私自身が重症の睡眠時無呼吸症候群患者であることが発端でした。そしてランドロイドは、「あったら便利だと思う家電は何かある?」と妻に尋ねたら「洗濯物自動折りたたみ機!」と即答されたことから始まりました。いずれもこれまでなかったものだと自負していますが、中でもランドロイドは類似品が全く存在しないため、大きなイノベーションと言えるでしょう。
オーダーメイドで個人購入も可能なカーボンシャフト。宇宙分野で使われる素材が使われている。
画像提供/セブンドリーマーズ睡眠時の呼吸トラブルやいびきの改善をサポートする、ナステント™
画像提供/セブンドリーマーズ

阪根 信一
セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 代表取締役社長
1999年、米国デラウエア大学 化学・生物化学科 博士課程修了。株式会社I.S.Tに入社し、取締役、CEOを経て、2008年スーパーレジン工業株式会社 社長に就任。2010年に株式会社I.S.TのCEOを退任し、2011年、seven dreamers laboratories,Inc. President & CEOに就任。2014年より現職。
- 澤登
- ランドロイドは12年という期間をかけ、紆余曲折を経た末に現在の形になったと伺っています。長期で難しいイノベーションに挑み続けられた原動力は何でしょうか。
- 阪根
反対意見が多いほど、アイデアが独自のものと確信
何よりも大切なのは、明確なゴールを持つことです。自分たちがどういう製品を作ろうとしているのか、その機能はもちろん、具体的な形状や大きさまである程度イメージを持てるようにする。加えて、いつまでにという目標も持っておく。それが開発メンバーのモチベーション維持には重要だと考えています。ただ現実世界では想定通りには行きません。ランドロイドの開発でもいくつもの壁がありましたが、「絶対やり遂げよう」と言い続ける。その繰り返しでここまで来ました。また私の持論では「反対意見が多ければ多いほどいい」という考えを持っています。それは、反対が多いほど、そのアイデアが独自のものだと確信できるからです。それゆえ、信じてもらいにくい状況は自分を奮い立たせる力にもなっていました。
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- イノベーションを起こすための一番大切な要素は何ですか。
- 阪根
- 「正しい」テーマを見つけることです。それさえできれば必ずゴールに到達できると考えています。しかし実際には、特に大きな企業で、ここで間違えてしまっているケースが多いと感じます。絶対にぶれない軸を持ち、それに沿ってテーマをよく吟味して選択する。そして決めたら揺らがずにやり遂げる。そのような徹底した意識がイノベーションにつながると信じています。
- 澤登
新しいアイデアをいかに早く実現できるかが重要
変化がますます速くなる中、私も大企業ではなかなかイノベーションが起こりにくい現状を感じています。例えば、以前は、ものを作る側と買う側が完全に分かれていて、関係性が非対称だったのに対して、現在はインターネットの登場と技術の向上によりそのような垣根がなくなりつつあります。映画でも、かつては大勢のプロが集まらないと作れなかったのに、今は少人数のアマチュアでも、身近な機材で制作してYouTubeで公開するといったことが可能です。色々な技術が簡単に手に入るようになった今、何よりも重要なのは、新しいアイデアとそれをいかに早く実現できるかなのです。ただそうした点について、お客様である大企業側も危機感を持っていると感じます。環境が変化していることに彼らは問題意識を持っていて、かつそれは経営に直結する問題のため、なんとかしなければと思っている。その結果、特に製造業の大手メーカーを中心に、新たなアプローチを試みる企業が増えています。これまでやったことない分野に挑戦し、新たなものを生み出すための組織を社内に立ち上げて、成果を出し始めている企業も多くなってきています。

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