|特集|科学・工学系の解析、シミュレーション技術で社会課題の解決に挑む「科学システム本部」

脱炭素社会、カーボンニュートラルの実現に向けて世界が舵を切り始めた今、従来のモノづくりは変革を求められています。
CTCでは、各分野での変革を後押しすべく、IT技術と解析・シミュレーション技術を活かした新しいソリューションの開発を続けています。
その開発の核となる「科学システム本部」の取り組みをクローズアップします。
取材・文/近藤 雄生
再生可能エネルギー/
資源・エネルギー分野
03
拡大する再生可能エネルギーの利用を、ITとエンジニアリングの両面から後押し
再生可能エネルギーに関する技術研究を始めて約20年。
長年の蓄積が、信頼ある技術コンサルティングや発電量予測計算として結実しています。

早﨑 宣之
エネルギービジネス推進部長代行
エグゼクティブエンジニア
再生エネルギー分野の発電量予測・評価、システム開発、技術研究開発に20年以上携わる。気象予報士。
- ──
- エネルギービジネス推進部の主な事業内容について教えてください。
- 立川
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エネルギー関連のビジネスを幅広く手掛ける中、現在特に注力しているのが、再生可能エネルギー(以下、再エネ)ビジネス事業者の支援と、電力事業者のデジタル化支援の2つです。前者は主に、風力・太陽光発電事業を始めたいという企業に対して、期待できる発電量の評価、そして、事業のリスクを洗い出してその低減を図る技術コンサルティング業務を行っています。後者は、発電所の各センサーのデータを統括し、故障予兆の検知を容易にするプラットフォームを提供するなどしています。
私たちは、ITの技術に加えて、シミュレーションやデータ解析というエンジニアリングの技術を持っています。再エネの技術研究も、まだこの分野が黎明期にあった20年前から行っています。そうした幅広い技術の蓄積を強みとして独自のビジネスを展開しています。
- ──
- CTCが再エネの技術研究に早くから取り組み始めたのには、どのような経緯があったのですか。
- 早﨑
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当社は、気象に関する事業において長い歴史があります。気象の解析シミュレーションがまだ一般的ではない時代から、その研究開発に取り組み始め、民間の気象配信サイトを日本で初めて作るなど、実績を上げてきました。そうした中、2000年頃から風力・太陽光による発電事業が少しずつ広がり始めたのですが、気象分野での蓄積があった当社は、いち早くこの分野の支援事業に着手できました。そして現在に至ります。長年の経験が高い信頼につながっており、風力・太陽光発電事業の技術コンサルティングは、とりわけ大きなシェアを持っています。また今後、FIT制度(固定価格買取制度)が終了すると、再エネ事業者は、電気を市場で売るために、より綿密な発電計画を立てることが必要になります。ますます高精度な発電量予測シミュレーションが求められるため、私たちの役割は大きくなると考えています。

立川 有佳
エネルギービジネス推進部
学生の頃、光合成の研究を行ったことから自然のエネルギーに興味を持ち、入社後は太陽光発電の技術コンサルティング業務に4年間携わる。現在はNEDOプロジェクトに従事。
- ──
- 電力事業者のデジタル化支援についても教えてください。
- 立川
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当社のデジタル化支援で特徴的なのは、プラットフォームやシステムの構築にとどまらず、データの解析まで行えることです。つまり、各種データを収集・可視化して故障予兆の検知などをできるようにするだけでなく、どういった因子が故障に関係しているかまで分析するパッケージを提供できます。また、今後拡大が予想される洋上風力発電所は、陸上よりもメンテナンスが困難ですが、こうしたプラットフォームやIoTの活用によって格段に効率的な運用が可能になります。その運用に関わるソリューションも提供できるのが、私たちの強みだと考えています。
- ──
- カーボンニュートラルを目指す流れなど、エネルギー分野を取り巻く環境は今、大きく変化しています。今後CTCが目指していく方向を教えてください。
- 早﨑
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二酸化炭素排出量全体のうち、エネルギー起源のものが8割に及ぶとされる中、今後、再エネの利用が拡大するのは必至です。カーボンニュートラルという目標が周知されるようになって、当社の再エネ支援事業への需要も加速しています。一方、再エネの利用が増えると、どうしても全体の発電量が変動します。すると、電力需要を発電量に常に一致させないといけないという新しい技術的課題が生じ、その解決のために、発電量をこれまで以上に高い精度で予測し、それに合わせて需要を制御することが必要になります。エンジニアリングとITのますます高い技術が求められることになるでしょう。そうした未来を見据えながら、私たちもさらに技術力を高めていきます。
風力発電出力予測システム
気象条件で刻々変化する発電量を読む
再生可能エネルギーは気象条件によって出力が変動します。安定して運用するためには、高い精度で事前に出力を予測することが必要となります。CTCでは、各種気象データなどを用いた風力発電の出力予測システムを開発しており、左の図は、稼働中の風力発電所における出力と事前予測とを比較した例です。当日予測(赤)と翌日予測(橙)のいずれも、実際の出力(黒)を概ね良好に予測できていることがわかります。今後、再生可能エネルギーの導入が拡大し、電力全体に占める割合が増えるほど、高精度な出力予測は重要になり、このような予測システムの活用が進んでいくと考えられます。

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