|特集・対談|CTC approaches Generative AI ビジネスの未来を拓く生成AIの可能性

ChatGPTの出現で、誰にでも身近なものとなった生成AI。AIの活用に早期から取り組んできたCTCの社員が、技術的知見を活かしたAIビジネスの可能性と、生成AIの誕生から今後の発展について語ります。
取材・文/近藤 雄生
特集・対談 01
生成AIによる新時代の到来は大きなチャンス
生成AIの登場で、AIビジネスは大きく変わろうとしています。
その中で、CTCは何を目指し、どう動いているのか。
当社のAIビジネスを牽引する寺澤 豊氏と、先端技術の市場調査・研究を推進する田中 久智氏に聞きました。
近年のAI進化の2つの節目

寺澤 豊
新事業創出・DX推進グループ
DXビジネス推進事業部 AIビジネス部長
ビッグデータエンジニア・AIエンジニアとして、AIに関連するビジネス企画や、顧客企業への技術アドバイザーとして従事。「NeuCraft」による朝日焼の画像生成プロジェクトを企画。現在は生成AIや最適化を中心に、各種サービスビジネスを推進。
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- まずはお2人の現在の業務内容を教えてください。
- 寺澤
- 私が所属するAIビジネス部は、名前の通り、AIのビジネス化がメインミッションになります。特に今は、「リカーリングビジネス」、すなわち、継続的なサービスで収益を上げるビジネスに注力しています。
- 田中
- 私たち先端技術開発部の業務は、主に3つあります。
1つは、先端技術の調査や研究を含めたビジネス開発への取り組み。もう1つは、組織の垣根を超えて最新技術の動向を発信し情報を交換することで、新規事業の創出にもつなげる社内コミュニティーの運営。そして、新たなサービスを生み出し、持続的な成長が可能な事業開発に挑戦するためのインキュベーションの取り組みです。これら全てがコトを起こす重要な点として、各種施策を推進しています。 - ―――
- この10年ほどの間にAIは大きく変化しました。それぞれが感じられた特に大きな変化は何でしょうか。
- 田中
- 私はアメリカのシリコンバレーにいた2015年頃から、AIとは近いところにいました。当時はマシンラーニング(機械学習)を使った様々な動きが出始めた時期ですが、その頃から現在までを思い返しても、昨年のChatGPTの登場は大きな変化でした。これまでのマシンラーニングやディープラーニングを巡る動きは、ある意味連続性の中で起きてきた印象でしたが、ChatGPTのリリースからの一連のうねりは、それとは異なる衝撃でした。
- 寺澤
- 近年のAIの発展において、最初の大きな節目と言えるのは、2012年の「Googleの猫」だと思います。猫が写っている画像を見分けられるAIが登場し、ディープラーニングという手法のすごさが知られるようになりました。さらに同時期に、GPUの進化というハード面の革新が起きたことでAIブームが加速。そして、その後に訪れた大きな変化は、やはりChatGPTに代表される生成AIの登場ですね。この2つのポイント、つまり、ディープラーニングと生成AIの登場で、AIのビジネスは大きく変化した印象です。
誰もが使える「これぞAI」の登場

田中 久智
技術戦略室
先端技術開発部長
情報通信キャリア担当のエンジニアを経て、ITOCHU Techno-Solutions America, Inc.へ赴任。商材開拓と共に、Open Compute Project、Cloud Native分野を中心とした事業開発を担当。2023年に帰国後、現職。
- ―――
- ChatGPTの衝撃というのは、専門家から見るとどのような点にあるのか、教えてください。
- 寺澤
- 従来のテキスト解析は、言語を処理する際、形態素解析、すなわち、形容詞、名詞、助詞といった品詞で言葉を分類することにより、文の意味を捉えようとしていました。
ところがChatGPTは、それらを気にせず、ただ確率論だけに基づいて文章を作ります。
例えば、この言葉が来れば次はこれが来るだろうといった予測だけで言語を処理する。そうすると日本語のような、頻繁に主語が省略される言語であってもスムーズに生成できることが示された。
さらに、それをあの精度に仕上げてきたことは、私の予測を大きく超えた驚きでした。 - 田中
- ChatGPTがこれだけのインパクトを生んだもう一つの要因は、使いやすいアプリケーションとして登場したことにあると思います。
背後の仕組みである大規模言語モデル(以下、LLM)については、ある程度はわかったとしても、それを対話可能な、一般の人が思い描いていたAIという存在に近しい形にした点が画期的でした。
少し前までは、AIと言っても、結局大したことはできないのではないか、というある種の現実的な認識が広がっていました。そんな折に、これぞAIという形で目の前に登場した。自分を助けてくれる存在としてAIを感じたのは、多くの人にとって初めてだったのではないでしょうか。
- ―――
- 生成AIのメリットやデメリットについて色々と議論されています。どういった点に着目されていますか。
- 寺澤
- 企画などにおいて、皆がChatGPTを頼るようになると、同じようなものばかりが生み出されることになります。
生成AIは今のところ、過去の情報からそれらしいものを作り出しているだけで、創造性や新規性はないからです。
一時期、色々な企業が画像系の生成AIで商品パッケージのデザインを試みていましたが、ほとんどがうまくいかなかったのはそのためでしょう。あくまでも補助的に利用するべきであり、頼り切って人間が考えなくなるとすれば、それはデメリットになると思います。一方、今も生成AIはどんどんバージョンアップしています。例えば、イラストのラフスケッチを描いて読み込ませると、それを具現化してくれるものも出てきました。そのような生成AIであれば、企画の最初のところは人間が考えて、具現化する段階を補助してもらえる。
人間と補完関係にある存在として考えると、ビジネスにも大きなメリットがあり、本当に使える状態に近づいて来るのではないかと思っています。 - 田中
- 汎用性を持たせるコンテンツを作りたい時には、生成AIはメリットが大きい。
例えば、自分の書いた文章をより多くの人に受け入れてもらいやすい形に変えたいような時、生成AIに推敲を頼むと、大きな力を発揮します。生成AIは、ある意味この時代に生きている人間の最大総和のような表現をするからです。
プログラムについても同様です。自分が書いたソースコードを、よりメンテナンスしやすい汎用的なものにするには、生成AIはとても有用でしょう。
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