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CTC

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

再エネの主力電源化を実現するために

必要とされる再エネの発電量予測システム

「温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」という“カーボンニュートラル”を、日本は2050年までに実現することを目標としています。その目標達成に向けて、再生可能エネルギー(以下、再エネ)を主力電源化していくことが、今求められていますが、そのためにはまず、太陽光発電や風力発電といった変動性の高い再エネを電力市場に統合し、需給バランスに応じた電力システムの最適化がなされるようにする仕組みを構築することが必要です。

日本では2012年から、再エネを固定価格で買い取るFIT(Feed-in Tariff)制度が実施されてきました。当時は再エネの設備自体が少なかったため、まずは設備導入を促進することが重要だったためです。その結果、設備導入は一定程度進み、次の段階として2022年から、市場価格と連動して価格が変動するFIP(Feed-in Premium) 制度が導入されることになりました。そうしてようやく、再エネも市場原理に即して売買される段階に入り、主力電源化に向けた発展が始まることになりますが、その発展段階をスムーズに進めるために、本質的に不安定である再エネの発電出力を高精度で予測し、電力システムの転換を支援する仕組みを整備していかなければならない、というのが現在の状況です。

そうした背景の中、CTCは、伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)と共に、太陽光発電や風力発電などの再エネ電力を束ね、発電事業者らが需給管理や電力取引を効率的かつ安定的に行えるように支援するアグリゲーションビジネスの構築を進めています。その中で重要な役割を果たすのが、CTCが開発した発電量予測アルゴリズムを軸としたシステム「ReRAS(Renewable Resource Aggregation System、リーラス)」です。

気象分野への長年の蓄積ゆえの技術と信頼

CTCではこれまで20年以上にわたって、局地気象予測技術や各種気象データなどを用いて、太陽光・風力発電所における発電出力を高い精度で予測する技術を開発してきました。ReRASは、そうして蓄積された気象と発電出力に関するデータを学習することで構築されたモデルによって、日々の発電量を予測します。その仕組みによって、電力取引スケジュールに適した発電出力の予測が可能になり、小売電気事業者や発電事業者は、より適切な需給管理を行うことができるようになります。そして2021年から、CTCの技術と、電力の需給管理に関する伊藤忠商事の知見とを組み合わせることで、再エネアグリゲーションビジネスの実証を行ってきました。このシステムは当実証で利用されており、現在は、九州エリアの複数の太陽光発電所を対象として毎朝、その日の発電出力を予測し、それを基に伊藤忠商事が実際の市場取引を行っています。

ReRAS概要図
ReRAS概要図

再エネの利用がこれからどのように発展していくかは未知であるため、本システムは、今後のビジネス規模や各種制度の変化に柔軟に追従できることが重要です。そうした点を考慮して、ReRASはパブリッククラウドを利用して稼働させることになり、中でもCTCでの導入実績の多いAWSを採用することにしました。まずはスモールスタートで実証を開始して、環境変化に柔軟に対応したサービスの拡張を目指しています。

CTCでは、再エネ分野の黎明期と言える時期からその技術研究を積み重ねてきました。それは当社に、気象分野の取り組みにおいて長い歴史があることと関係しています。気象解析のシミュレーションがまだ一般的ではなかった時代から、CTCはその研究開発に取り組み始め、民間の気象配信サイトを日本で初めて作るなどの実績を上げてきました。そうした蓄積があったからこそ、国内風力発電事業が動き出した2000年頃にいち早く、その支援事業に着手することができ、太陽光発電事業にも参入することができました。

そのような長年の経験は高い信頼につながっており、CTCの太陽光・風力発電事業における技術コンサルティングは、とりわけ大きなシェアを持っています。今後、再エネの主力電源化に向けて、同エネルギーの利用の大幅な拡大が見込まれる中、高精度な発電量予測シミュレーションの技術はますます重要性を増していきます。CTCがこの分野で果たすべき役割は、これからさらに大きくなると考えています。