超音波による非破壊検査をより精緻なものにするために
モノを壊さずに品質や状態を評価する「非破壊検査」は、様々な分野を支える技術として今や社会に欠かせません。環境負荷の低減やコスト削減にもつながるため、サステナビリティの観点からも重要性が高まっています。
非破壊検査には、放射線や赤外線、電流など手段の異なる複数の方法がありますが、中でも、自動車や航空機、橋などの巨大構造物といった高い安全性や信頼性が求められる分野で広く活用されているのが超音波による検査です。超音波は、様々な規模・材質の物を、あらゆる角度から緻密に検査することを可能にします。その検査の方法自体を、効率的に開発するために各種分野で使われているのが、CTCが開発した超音波解析ソフトウェア「ComWAVE」です。
自動車の検査について例を挙げると、形状や材料が複雑な場合などは、超音波を当てて返ってきた信号を見ただけでは内部にどのような損傷が発生しているかが正確にはわからないことがあります。そのような場合に、「ComWAVE」を用いて、様々な損傷を精緻にモデル化してそれぞれのケースについて超音波検査のシミュレーションを行うことで、現実の検査における信号が、どのような損傷に対応しているのかを予測することができます。「ComWAVE」は、「ボクセル有限要素法」という高精度な解析手法と独自のアルゴリズムを用いることで、100億要素規模の精緻な超音波伝搬解析を、クラスタPC上で高速に実行可能にしています。
GXやAIの時代、役割はさらに大きくなる
もともと「ComWAVE」は、原子力プラントの高放射線下などの重要設備の検査に活用することを目的に開発が進められました。そして2006年に、汎用性のある製品としての販売が始まると、電力や建設といった業界のみならず、半導体分野のバッテリーの検査、医療における体内各部位の検査、重要文化財の改修工事など、広範な領域で使われるようになりました。
特に現在、GXを意識した取り組みが世界的に重要になっている中で、「ComWAVE」が果たすべき役割はますます大きくなっています。一例としては、水素関連技術への活用があります。水素は、化石燃料に代わるエネルギー源として、また、様々な産業利用の可能性がある物質として注目されていますが、発火しやすいなどの特性があり、扱いが簡単ではありません。そのため、輸送や貯蔵に使われる設備・施設には十分なメンテナンスが求められ、超音波による非破壊検査が必須です。その際、精密かつ効率的な検査方法を開発するにあたって「ComWAVE」が活用されています。そのように、超音波検査の新たなニーズが高まるであろうこれからの時代に、このソフトウェアの重要性は増していくと考えられています。

また昨今、AIの活用が、非破壊検査においても進みつつあります。AIの力を十分に引き出すためには、相応な量のデータが必要になります。つまり、「このような損傷に対して超音波検査を行えば結果はこうなる」といったデータを様々なケースについて集め、それをAIに学習させなければなりません。ただ、実際の実験で様々な損傷や亀裂のパターンを再現してデータを取ることは極めて困難です。そのため、高精度なモデルによるシミュレーションで多様な損傷パターンについて検査結果のデータを作り、それをAIに学習させるという方法が有用です。そのようなシミュレーションを実現できる稀有な超音波解析ソフトウェアとしても今後、「ComWAVE」が果たすべき役割はさらに大きくなるでしょう。
環境、社会、人、コストへの意識が世界全体で高まる中、あらゆるモノやインフラを長く安心して使い続けていくために、非破壊検査は欠かせません。そうした時代を支えるために、CTCは、「ComWAVE」のバージョンアップを続けると共に、お客様のニーズに合ったソリューションの提供をさらに拡大していきます。