イベント・レポート

CTC Forum 2018 講演

金融機関によるRPAによる業務効率化
その取り組みでわかった成功の勘所

更新

事務部門でロボを試作評価した上で、RPA導入に向けたDIプロジェクトを開始。その後デジタル・イノベーション推進室を設置しDI人材の育成などを推進中

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開催日
主催
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
講演
資産管理サービス信託銀行株式会社

合計60のロボで年間約4,300時間の効率化を実現

資産管理サービス信託銀行株式会社 常務取締役 牧野 靖氏

資産管理サービス信託銀行株式会社 常務取締役 牧野 靖氏

資産管理サービス信託銀行(TCSB)は、日本国内に3行ある専業信託銀行の1行です。信託サービス、確定拠出年金の資産管理、国内カストディ、海外カストディといった各種資産管理業務を手がけ、4層から構成されるシステムでこれらの業務を支えています。システム間の連携は、STP(Straight Through Processing)で密結合することで人的ミスを極小化できますが、システムが硬直的になり、機動性が失われ、高コスト体質になる恐れがあります。そこで、主要な業務や量の多い取引はSTPで結合する一方、発生量の少ない取引はExcelやAccessを利用した疎結合で補完し、変更を容易にしています。
しかし最近ではExcelやAccessでのデータ処理でもバックログが増大、ユーザーの声にすぐ応えることが難しくなっていました。

この課題を解決するために活用しているのがRPAです。
2016年度後半に事務部門が検討を開始し、コンサルティング会社の協力でロボットを試作しました。その結果、それまで25分かかっていた事務作業が1分30秒で完了。そのデモを社員を集めて見てもらったところ、社員から「やって欲しい」と提案された案件が300件を突破しました。そこで本格導入に向け、デジタル・イノベーション(DI)プロジェクトを開始したのです。

プロジェクト期間は。私がプロジェクト責任者となり、部長以下6名、専任の若手社員1名で構成される推進事務局を立ち上げました。また8つの導入部署を選定し、それぞれ部長と取りまとめを行うディレクター、ロボ作成を行うクリエイターでチームを編成しました。RPA製品としては「社内レガシーシステムとの連携の容易さ」と「作りやすさ」から、「UiPath」を選定。業務フローの整理や改善業務の選定を行った上で、クリエイター(1期生)によるパイロットロボの作成が始まりました。さらにには、1期生による2期生27名に対するOJTもスタート。仲間との情報交換や相談ができる「DIルーム」という、専用ルームも設置しています。

までに作成されたロボの数は合計60。これによる効率化効果は年間約4,300時間に上ります。このプロジェクトを通じて、いくつかの勘所もわかってきました。まずロボはシステムではなくデジタルレイバー(仮想知的労働者)だと位置づけること。ロボのタイマー自動処理に頼り切るのはリスクがあるため、必ず人間社員がチェックする運用ルールを制定すること。
表示に時間がかかる重いコンテンツでは操作が空振りに終わることがあるので、細かなチューニングが必要なこと。そして社員同様にロボも事務要領に準じて社内システムを使用させ、ロボのミスは所属組織でリカバリする、といったことです。

にはプロジェクトチームを解散し、新たな組織として「デジタル・イノベーション推進室」を設置、DI人材育成やDI態勢の整備、新たな自動化を提供するDIテクノロジー導入に取り組んでいます。またこのプロジェクトを通じて、資産管理業務に携わる人材にとってITスキルが必須であることも分かったため、全社的なITリテラシー強化も推進しています。その一環として、社内でMicrosoft Office Specialist(MOS)の模擬試験を実施。これまで213名が受験し、150名が合格しています。また今後は、MOSエキスパートについても同様の模擬試験を実施する予定です。現在のMOSスペシャリスト相当のスキル保有率は30%ですが、年内には50%にまで上げていきたいと考えています。

講演の様子

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