イベント・レポート

CTC Forum 2018 講演

研究開発のスピードアップを目指し幅広い分野で積極的にAIを活用

更新

開発期間短縮やコスト抑制という有形効果のみならず、AI活用にはブランド力向上、技術継承といった無形効果にも期待

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開催日
主催
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
講演
昭和電工株式会社

機械学習や深層学習を使った独自のシステム開発に注力

昭和電工株式会社 計算科学・情報センター センター長 奥野 好成氏

昭和電工株式会社 計算科学・情報センター センター長 奥野 好成氏

昭和電工は約80年の歴史がある、無機から有機まで幅広く手がける化学系素材メーカーです。なぜ当社がAI活用を推進しているのか。目指すところは「研究開発加速」「現事業の後押し」「新事業創出の牽引」であり、そのためにはAIを恒常的に活用する企業風土や部署を超えた強力な連携体制の確立、AIの共通基盤構築とインフラ整備が必要と考えています。特に、研究開発の加速は重要で、データマイニングなどの情報科学を通じた新材料や代替材料を効率的に探索し、実用材料開発までの時間短縮やコストの大幅削減に繋げたい思いがあります。個人の勘と経験に依存した研究開発慣習からの脱却もゴールの1つです。

AI活用によって、上記のような有形効果を得るばかりでなく、ブランド力向上、顧客信頼の獲得、暗黙知の可視化、人にしかできない仕事へのシフト、技術継承などといった無形効果も期待しています。

現在、当社でAIを活用している分野は3つあります。

1つは、NEDOの超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクトに参画して推進した「マテリアルズインフォマティクス」です。
これまで材料開発というのは、実験と理論の相互作用で進めてきましたが、もはやこの方法では探しつくされた感があります。
そこで過去データをAIに与えて、未知の材料・現象を予測によって導き出してもらうことを試しました。

ここでのポイントは、なぜそうなるか理解できなくても予測さえできればいいということです。実際、機械学習・深層学習の活用により、ポリマー物性の一部が予測可能になりました。私たちの最終的なターゲットは熱硬化性樹脂で、まだ課題はいろいろありますが、機械学習によって自動的に原料の特徴を分類し、分類ごとに生成した説明変数を用いて樹脂物性予測を行うということを進めています。

2つ目は「知財情報処理」においてのAI活用です。今日、世界的に特許文献が急増しており、先行技術調査や特許登録業務に多くの工数がかかっています。そこでAIを使って、特許文書から課題・効果文を抽出して類似文の検索や、特許技術が社内外でどのような用途で利用されているか探索し、新たな価値創出の助けとしています。本手法を実装した新規用途探索システムもすでに実用化し、研究者が活用しています。

今後の展望としては、ビッグデータとしての知財情報から規則性・関連性を探索し、未知のルール、知識を抽出し、新たな分析モデルの確立により新規事業につながるイノベーション創出を支援していきたいと考えています。それと同時に、AI活用をマネジメントできる人材育成とデータ構築も進めていきます。

もう1つのAI活用分野は、「手書き文書検索」です。当社は歴史が長いことから、手書きや活字で作成した技術文書が豊富で、今でも有用な資産ですが、手書きのために文書検索をすることができず、有効活用できていませんでした。手書きで非定型という技術文書は、OCRによるデジタル化が非常に困難です。
しかし当社はこれに挑んでいます。AI文書読み取りエンジンを開発しているシナモン様と協力し、不完全なデジタル化文書からでも検索することができ、元の文書にたどりつける仕組みをNEDOの助成を受け構築中です。

課題解決策は大きく2つあり、1つはAIで識字率を向上すること。もう1つは事前に登録した技術専門用語と不完全な変換語をAIにより比較して類似度の高い語を抽出することです。アルゴリズムはすでに確立することができ、システム化には一定の目途が立っています。今後、さらなる識字率向上と汎用システム化に向けて完成度を高めていきます。

講演の様子

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