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CTC Forum 2018 講演

再生可能エネルギーの最大の課題は「出力が不確実に変動する」こと

更新

日本のエネルギー政策の基本は「3E+S」(【安定供給:Energy Security】【経済性:Economy】【環境性:Environment】+【安全性:Safety】)の確保

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主催
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
講演
東京大学生産技術研究所

北海道で発生したブラックアウトは電力安定供給への警鐘

東京大学生産技術研究所 エネルギーシステムインテグレーション社会連携研究部門 特任教授 荻本 和彦氏

東京大学生産技術研究所 エネルギーシステムインテグレーション社会連携研究部門 特任教授 荻本 和彦氏

日本ではの東日本大震災やの猛暑など、さまざまな影響で電力不足が問題になっています。そこで再生可能エネルギーに注目が集まっていますが、、九州で初めて太陽光発電の「出力制御」が実施されました。

この出力制御について「貴重な再生可能エネルギーを制御するなど“もったいない”ことをしていいのか?」という懐疑的な声も上がりました。しかし再生可能エネルギーは、世界的にも単価が下落しており、太陽光発電だけでなく、風力発電も出力制御が行われている状況です。

再生可能エネルギーの最大の問題は「出力が不確実に変動する」ことです。発電量が「変動する」だけでも大問題なのですが、明日どれくらい変動するかが予測できない「不確実性」がさらに問題を深刻化しています。

そこで国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、委託事業として「電力系統出力変動対応技術研究開発事業」を実施しており、風力発電出力予測技術開発プロジェクトを推進しています。現在、5年計画の5年目にあたります。
このプロジェクトは、気象状況により発電状況が不確実に変動し、出力の急変を予測することも困難な風力発電において、なるべく正確にその変動を予測することを目的としています。

このプロジェクトでは、約50カ所の大規模風力発電所および1,000カ所以上の気象観測所にセンサーを取りつけ、風力発電データと気象データを収集するIoTプラットフォームを構築。4万項目以上のIoT時系列データを収集することで、風力発電の出力予測技術の高度化に活用しています。このシステム構築にはCTCの技術やデータセンターが利用され、すでにいくつかの成果を上げています。

日本では東日本大震災後のに、固定価格買取制度(FIT制度)がスタートしました。FIT制度は再生可能エネルギーの普及促進を目的に、電気事業者が法律で定められた価格で一定期間買い取ることを義務づける制度です。当時はドイツの2倍の価格で買い取ることが発表されたため、申し込みが殺到しました。

しかし日本は、再生可能エネルギーの開発に遅れています。国際エネルギー機関(IEA)の調査でも、九州や北海道では世界的に見ても、再生可能エネルギーの電力システム運用が難しいレベルに達していると報告されています。に向け、いかに電力システムを運用していくかを考えなければならない時代になっています。

再生可能エネルギー導入にはバラ色の未来が描かれていますが、その活用にはまだまだ考えるべきことが数多くあります。例えば一般家庭の電気契約は60アンペア程度です。これは6キロワットの電気を使えるということです。しかし電気自動車を充電するには約3キロワットが必要となります。そのため将来的には、一軒あたり60アンペアでは足りなくなる可能性があります。そこで配電網や送電網の増強も必要になります。

日本では発電側の議論が多いのですが、実は送電側も大きな問題です。太陽光発電は春秋には余りますが、冬には不足します。
そこで、いかに使うかが重要なのです。水素発電も注目されていますが、製造、貯蔵、利用にはコストがかかります。

の北海道胆振東部地震で発生したブラックアウトにより、電力の安定供給に警鐘が鳴らされました。不確実に変動する再生可能エネルギーの出力を調整するためには、どの技術をいつ、どれだけ活用するかを計画・実施することが必要です。そのためには、予測や分散システム管理の技術が必要であり、それを実現するインフラ整備、データの蓄積・活用を積極的に進めていく必要があります。

講演の様子

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