イベント・レポート

CTC Forum 2018

人やモノの関係を確立するマルチクラウド
エンタープライズITのあるべき姿とは

更新

各種サービスを疎結合で組み合わせて活用する「マルチクラウド」こそが、今後のエンタープライズITに求められる姿となる

  • クラウド
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  • 開発
開催日
主催
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
講演
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

多様なサービスの疎結合がイノベーションにつながる

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 取締役 兼 専務執行役員 CTO/CIO 大久保 忠崇

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 取締役 兼 専務執行役員 CTO/CIO 大久保 忠崇

昨年に続き、CTOの立場からエンタープライズITの未来について考えたいと思います。

近年、日本でも急速にクラウドの普及が進んでいますが、その裏側で起きているテクノロジーの変化については、あまり認識が深まっていない点もあるのではないでしょうか。

例えば、マイクロサービスアーキテクチャによるアプリケーション環境の進化もその一つ。これまでは単一のアプリケーションサーバでフレームワークや開発・実行環境が提供され、その中でアプリケーションを実装する「モノリシック型のシステム」が主流でした。しかし最近では、特定のインフラやOS、データベースなどに依存することなく、機能単位で独立したサービスを疎結合させてアプリケーションを作る「マイクロサービスアーキテクチャ」が広く利用されるようになっています。

これに伴い、クラウドの利用形態も変化することが予想されます。サイロ化したクライアント・サーバ型のシステムを仮想統合し、それをIaaSやPaaSに載せるという流れは、従来のモノリシックシステムの延長線上の取り組みでした。しかし、今後、マイクロサービス化が進むと、基盤となるべきクラウドすら別々で構わなくなります。別々のサービスを組み合わせながら一つのアプリケーションを展開する時代がやってくるのです。

そうするとシステム管理のあり方も大きく変わります。従来は、インフラの監視・管理が重視されてきましたが、これからは、それぞれのプロセス間のモニタリングやデータフローの監視といった新たな要件を満たさなければなりません。

ちなみに日本のメディアなどでは、このような環境を「ハイブリッドクラウド」と表現するケースが多いのですが、米国では言葉の概念が違います。ハイブリッドクラウドは、せいぜい1対1か1対2くらいのクラウド連携で、機能ごとに最適なクラウドをつないでアプリケーションを稼働させるような環境は「マルチクラウド」と呼ばれています。

そしてこのマルチクラウドこそ、今後のエンタープライズITのあるべき姿だといえるでしょう。IoT、AI、RPAやハイパースケールクラウド、さらにはSNSやコミュニケーション基盤など、あらゆるシステムが疎結合でつながる。こうした環境が実現すれば、企業のビジネスにも大きなメリットが期待できます。

私自身は、マルチクラウドは「人と人」「人とモノ」の関係性を確立するシステムだと考えています。例えば、営業担当者が顧客を訪問するシーンを考えてみましょう。おそらく社内システムで商談履歴を調べ、相手のキーパーソンを探したりするはずです。また、訪問から帰った後には、報告書作成や交通費精算なども行うことでしょう。

マルチクラウドなら、こうした個別システムの使い分けは不要です。どこへ、どのような経路で訪問したかは、端末の位置情報で全て把握すればよい。サービス同士の連携で、自動処理できる範囲は格段に広がります。人が伝えるべきなのは、肝心の商談内容だけでよいのです。

そうすれば、新しいニーズの発掘などビジネスも活性化します。従来のような個別業務の最適化ではなく、社内の人やモノの関係性に着目したシステム作りを進めることが、新たなイノベーションにつながっていくのです。

私はしばしば海外に出かけますが、最近訪問した米国、ドイツや中国などでは非常に先進的な取り組みが進んでいます。日本企業も「おいてけぼり」にされないよう、私たちと共にアクションを起こしましょう。

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