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AIに代替されない仕事とは?人とAIの役割分担をどう設計するか|カギは「人は何を手放さないか」にあり

高度AI

公開日:2026.07.21

AIに代替されない仕事とは?人とAIの役割分担をどう設計するか|カギは「人は何を手放さないか」にあり

    AIに代替されない仕事とは? 人とAIの役割分担をどう設計するか|カギは「人は何を手放さないか」にあり

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    AI活用に取り組む企業は「AIでどの業務を自動化するか」という議論を先行させがちです。ところがビジネスの現場では、業務へのAIの適用により、かえって人の仕事が増えてしまうケースがあります。このような事態はなぜ起こるのでしょうか。その要因を探りながら、「AIに代替されない仕事」「人にしかできない仕事」とは何かという観点も交え、人とAIとの理想的な協働の在り方を考察します。

    1. 生成AI導入は進展するも……

    AIの活用は企業に着実に定着しつつあります。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の調査レポート「DX動向2025」によれば、企業の生成AI利用率(=「導入している」「現在、試験利用をしている」とする企業の割合)は約4割に達しています(図1)。中でも中堅・大手企業(従業員1,001名以上)は積極的で、2024年度は7割超に上りました。

    図1:日本企業の生成AI利用率(2023~2024年度推移)と従業員1,001名以上の企業の生成AI利用率(2024年度)

    図1:日本企業の生成AI利用率(2023~2024年度推移)と従業員1,001名以上の企業の生成AI利用率(2024年度)
    出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025(2025年6月26日公開)」をもとに作成

    これと同じ傾向は、CTCが年商1,000億円以上の大企業の経営層・管理職層を対象に2025年12月に実施した調査「半年間の変化から読み解く 生成AI・エージェンティックAIの現在地 AI市場レポート2026年4月版」にも表れています。本レポートを見ると、日本企業の生成AIの導入率は8割近くに達しています(図2)。ただし、自律的に判断して業務をこなす「エージェンティックAI」の導入率は55.9%にとどまっています(図3)。

    図2:日本の大手企業における生成AIの導入率と目的・期待値

    図2:日本の大手企業における生成AIの導入率と目的・期待値
    出典:伊藤忠テクノソリューションズ「半年間の変化から読み解く 生成AI・エージェンティックAIの現在地 AI市場レポート2026年4月版」から引用

    図3:日本の大手企業におけるエージェンティックAIの導入率

    図3:日本の大手企業におけるエージェンティックAIの導入率
    出典:伊藤忠テクノソリューションズ「半年間の変化から読み解く 生成AI・エージェンティックAIの現在地 AI市場レポート2026年4月版」から引用

    生成AIについても、個人レベルでの活用は進展しているものの、組織の業務プロセスへの組み込みはあまり進んでいませんでした(図4)。
    この傾向が、エージェンティックAIの導入率の低さにつながっていると考えられます。

    図4:生成AIの具体的な利用状況

    図4:生成AIの具体的な利用状況
    出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025(2025年6月26日公開)」から引用

    1-1. 「AI導入の失敗」はなぜ起こるのか

    業務プロセスにAIを組み込む難しさは、「AIに何を任せるか」を決めることの難しさと言い換えることができます。そして、この見極めを誤った時に生じるのが、いわゆる「AI導入の失敗」です。

    例えば、特定の業務を丸ごとAIに一任できると判断し、その業務の担当人員を削減した結果、予期しない例外的な事象にAIが対処できず業務が立ち行かなくなるリスクがあります。その一方で、「AIには業務のごく一部しか担わせられない」と判断した場合は、得られる効率化効果が非常に小さくなる可能性があります。さらに、AIに完璧なアウトプットを求めるあまり、チューニングコストが膨れ上がり、投資に見合う成果が出ないケースもあります。

    こうした事態を回避するには、業務の現場を巻き込みながら「AIに何が担えそうか」「AIに何をさせるのが最も有効か」を探ることが必要です。
    それを怠ると、AIによる業務の効率化・自動化を図っても人の業務負担がかえって増えてしまう事態に陥りかねません。

    2. 「人に何をさせるか」がAI活用の出発点

    業務の省力化・効率化を目指して、AIを業務プロセスに組み込む際には「何をAIに任せるか」という視点からいったん離れ、「人が何を手放してはならないか」という観点から物事を捉えることも重要です。つまり、AIに任せる対象を探すことから始めるのではなく、人に任せるべき仕事を先に定義した上で、人とAIとの役割分担やコラボレーション(協働)のモデルを設計するアプローチです。

    このアプローチで業務を整理する時に役立つのが「定型度」と「判断の複雑さ」という2つのものさしです(図5)。

    まず、定型度が高く、判断がシンプルな業務は、AIが主導しやすい領域です。一方、定型度が低く判断が複雑な業務ほど、人間が主導すべき領域になります。さらに、その中間では、AIが1次処理を担い、人間が確認・調整する協働の領域が広がります。

    ここで重要なのは、全てを白か黒かで分けるのではなく、「どこからどこまでをAIに委ね、どこから先を人が担うか」という境界線を、業務ごとに引いていくことです。

    図5:AIと人間の役割分担マトリクス

    図5:AIと人間の役割分担マトリクス

    3. 人が担うべき仕事の3つの「軸」

    では、「人が手放してはならない仕事(AIに代替されない仕事)」、あるいは「人が担うべき仕事(AIにできない仕事)」には、どのような共通点があるのでしょうか。企業のAI活用の現場で繰り返し見えてくるのは、以下に示す3つの軸です(図6)。

    前述のマトリクス(図5)は、業務を「その性質」で仕分けるためのものでした。ただし、「定型度」と「判断の複雑さ」という2軸だけでは取りこぼす業務があります。例えば、定型的で判断もシンプルな承認業務は、マトリクス上は「AIが主導できる」領域に入りますが、法的・コンプライアンス上の説明責任を伴う承認は、たとえ作業が定型的でも人が手放せません。

    マトリクスが捉えているのは、いわば「判断の複雑さ」という1つの軸です。実際の現場では、これに「説明責任」と「人と人との関係」を加えた3つの軸で考える必要があります(図6)。

    1. 判断軸:この軸は、状況によって正解が変わり、例外への目配りが必要な判断を指します。例えば、投資や稟議の最終判断のように、状況を読み、責任を引き受けた上で下す決断は人の手に残ります。

    2. 責任軸:これは、コンプライアンスや監査、法的な責任を伴う承認のように、「なぜそう判断したのか」を組織として説明しなければならない業務を指します。説明責任が伴う仕事は、AIに丸ごと委ねることはできません。

    3. 関係軸:この軸は、顧客との接点や信頼の構築、組織文化の醸成など、人と人との関係の中で価値が生まれる領域の業務を指します。

    これら3つの軸は、AIが進化しても、その重要性が簡単に低下することはありません。むしろAIの活用が進むほど「最後に人が判断し、責任を持ち、関係を結ぶ」ことの価値は高まっていくといえます。
    これらはまさに、人にしかできない仕事だといえるでしょう。

    図6:人が手放してはならない(AIに代替されない)仕事の3つの軸

    図6:人が手放してはならない(AIに代替されない)仕事の3つの軸

    4. 「つまずく企業」と「定着する企業」の分かれ目とは?

    人とAIの役割分担の設計図が描けたとして、次の問題は「それを組織に根づかせられるかどうか」です。同じようにAIを導入しても、定着して成果につなげる企業と、つまずいて停滞する企業とに分かれます。
    以下、AI活用を定着させている企業に共通するポイントを「定着の条件」として紹介します。

    4-1. 定着の条件①AI活用を前提に「業務を再設計」する

    第1の条件は、AIを単に導入するのではなく、業務の再設計を含めて活用を検討することです。「既存プロセスの特定の作業をAIに置き換える」ではなく、「AIがあることを前提に、業務プロセス全体をどう組み直すか」を考える視点が重要です。この視点を持つかどうかで、定着のスピードと効果に大きな差が生まれます。

    4-2. 定着の条件②現場の納得を丁寧に積み上げる

    第2の条件は、AI活用に対する現場の理解を丁寧に得ていくことです。
    業務プロセスへのAIの組み込みは、現場の働き方を変えます。だからこそ、現場の納得を一つひとつ積み上げることが大切であり、それに力を注ぐ企業ほど定着がスムーズに進みます。

    4-3. 定着の条件③経営層がコミットして理解を共有する

    第3の条件は、経営層がコミットし、かつAIへの理解を持っていることです。現場任せや号令だけでなく、経営層自身がAI活用に関与しながら推進していくことが重要です。トップダウンのコミットと現場の納得感が噛み合った時、AIが効果的に活用されるようになります。

    こうした進め方を支えるのは、必ずしも精緻なフレームワークではありません。そのため、AI活用の取り組みを決まった型に当てはめるのではなく、まず自社の業務プロセスを整理し、現場の担当者と協議を重ねながら「AIに任せる範囲」を定義していくアプローチが有効です。役割分担の正解は机上で導き出せるものではなく、担当者との対話を重ねる中で見えてくるものです。

    5. 現場リーダーの役割が「作業者」から「価値の設計者」へ

    AIと人間の役割分担が進むにつれて、人の仕事の在り方自体も変わっていきます。とりわけ大きく変わるのが、現場におけるリーダーの役割です。

    AIが業務の一部を担うようになると、リーダーの仕事は「作業をリードすること」から「AIのアウトプットを精査して適切な判断を下すこと」へとシフトしていきます。AIが出した答えの妥当性を見極め、例外的なケースを拾い上げ、チームをまとめながら最終的な意思決定へとつなげる役割が一層重要になります。

    また、AIの普及が進むにつれて、多くの現場では「作業者」から「付加価値の生産者」への転換が語られるようにもなっています。

    ただし、そのための具体的なビジョンを描けている企業はまだ多くありません。AIに業務を任せたあと、「人はより付加価値の高い仕事へとどのように移っていけば良いのか」「そもそも付加価値の高い仕事とは何なのか」といった点を定義できずにいる企業や現場は少なくないということです。

    したがって、これからの現場リーダーには、AIがあることを前提に、自身がリードする業務の在り方や価値を再定義し、適切に設計していくことが求められます。

    5-1. AIを人が監督する「ヒューマン・イン・ザ・ループ(HITL)」

    AIが業務の一部を担う環境では、AIが出力した内容を人が確認し、最終的な判断に関与する仕組みが欠かせません。こうした仕組みは「ヒューマン・イン・ザ・ループ(Human-in-the-loop:HITL)」と呼ばれます。
    AIに判断を委ねきるのではなく、要所で人が関与してアウトプットの妥当性を担保することが、AI活用の信頼性を支えるのです。

    なお、AIを業務プロセスに組み込む際には、AIによる判断の根拠が見えにくいという「ブラックボックス問題」を乗り越える必要もあります。

    判断の根拠が正しいかどうかを確認し、その妥当性を証明するためのコストは、AI導入で得られる効果とトレードオフの関係にあります。特に金融や製造などの分野では、AIの判断根拠が適切かどうかの見極めが非常に重要です。さらに、異常検知のような希少なケースへの対応や、誤検知(偽陽性)への判断も、人による確認が欠かせない領域です。

    AIの活用が進むほど、「最後に人が判断を担い続ける」ことの重要性はむしろ高まっていきます。現場リーダーの役割は縮小するのではなく、質的に変わっていくのです。

    6. 生まれた「余白」を価値に変える組織設計

    業務プロセスへのAIの組み込みは、人の生産性を大幅に高め、時間的な「余白」をもたらします。その時間的な余白を新たな価値の創造に充てることができれば、AI活用を単なる効率化・自動化にとどまらず、価値の創造へとつなげることができます。

    6-1. 価値創造のKPIへの段階的な移行

    AI活用を価値の創造へとつなげるためには、AI活用のKPIとして、業務の効率化や時短の度合いだけでなく、「どれだけ新しい価値を生み出せたか」という観点も設定しなければなりません(図7)。

    ただし、価値創造をKPIとして設定するのは、一足飛びに実現できることではありません。多くの企業は今、AIを導入し使いこなすこと自体が目標となる段階にあります。そのため、まずはAIを活用すること自体をKPI化し、段階的に価値創造のKPIへと重心を移していくことが重要です(図7)。

    図7:余白時間を価値創造へ循環させるサイクル

    図7:余白時間を価値創造へ循環させるサイクル

    7. まとめ 効率化の先にある人間中心の業務設計

    「AIに何を任せるか」という議論は、ともすれば「人のこの仕事を減らす」といった業務縮小の話になりがちです。しかし、本稿で見てきたように、議論の出発点を「人が担うべきことは何か」へと転換した時、結論は業務の縮小から価値創造へと広がっていきます。

    人が担うべき仕事を見定めることは、現在の仕事をそのまま守ることではありません。AIに任せたほうが良い作業を特定して省力化を図り、それによって生まれた時間的な余白を新たな価値創造に充てることです。
    またこのように、AIによる効率化・自動化の先にある作業として、新たな価値の創造という人の能力を最大限に活かすプロセスを置くこと、すなわち「人間中心」でAIを組み込んだ業務設計を行うことが、企業の市場競争力強化につながります。

    AI活用による効率化・自動化はゴールではなく、次の価値創造への出発点にすぎません。だからこそ、AIをどう使うかを考える前に、「人にしかできないこととは何か」「人の能力をどう最大限に活かすか」を考えることが重要です。それこそが、AI時代に自社の市場競争力を高める有効な手段といえます。

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    執筆者情報

    Key Technology(Keys)編集部

    Key Technology (Keys)編集部は、CTCが注力する「高度AI」「データ&アナリティクス」「クラウドネイティブ」「セキュリティ」を中心とした最先端テクノロジーの情報発信を担う編集チームです。技術動向や活用事例、サービス情報をわかりやすく届け、ビジネス変革に挑む企業の意思決定や実行をサポートします。

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